ドイツ東部の森で深刻なキクイムシ被害、軍も乗り出す事態に(29日)
キクイムシの被害
木食い虫が教えてくれること
2019.01.15 エコナビ
●木食い虫の被害のメカニズム
木食い虫の種は世界で4000種以上あるが、中央ヨーロッパで森林被害を起こしているのは主にドイツ語でBuchdrucker(プリンター)という種である。
大きさは4?5mm、生きているトウヒの樹皮に穴を掘り、その中に卵を産み、卵から孵った幼虫は、樹皮の内側の師部を流れる養分を糧に生長する。そのため、一気に大量の木食い虫「プリンター」に襲われた木は、養分の内部分配機能が衰え、枯れて死んでしまう。
https://econavi.eic.or.jp/ecorepo/learn/525
『匂いが命を決める ヒト・昆虫・動植物を誘う嗅覚』
ビル・S・ハンソン/著、大沢章子/訳 亜紀書房 2023年発行
・なぜわたしたちの鼻は顔の中央、先端についているのか?
・なぜ動植物は、ここぞというとき「匂い」に頼るのか?
・「Eノーズ」は将来、匂いの正確な転写・伝達を可能にするか?
ヒト、昆虫、動物、魚、草木、花など多様な生物の「生命維持」と「種族繁栄」に大きな役割を果たしている嗅覚。
そこに秘められた謎と、解き明かされた驚異の事実とは──。
第10章 巨木キラー・キクイムシ より
集団的コミュニケーション
トウヒキクイムシは、どんなふうに共同して巨木に攻撃を仕掛けるのか? さらには、その木が満員になったことをどんな手段で知るのか? これらの疑問を解き明かすには、まず攻撃がどのように進行するか、そしてそれに化学信号であるフェロモンがどう関わっているかを知る必要がある。攻撃は、先導する1匹のキクイムシ──オスだ──からはじまる。オスは樹皮に小さな穴を開け、メスへの呼びかけを開始する。彼が発する主な化学信号は2種類の匂い物質で構成されており、基本的に「おいで、おいで。交配しよう。この木を乗っ取るのを手伝っておくれ」と伝えている。
このオスが運よく樹液に押し流されて死なずにすめば、1匹のメスを魅了できるかもしれない。2匹は交配し、仲間を呼び寄せるためにより多くの集合フェロモンを揃って放出しはじめる。さらに多くのキクイムシがやってきて樹皮に穴を開け、木の内部に滑り込んで交配する。そして同じことが何度も繰り返される。やがてキクイムシは膨大な数に膨れ上がり、木はついに彼らの大規模攻撃から身を守りようがなくなる。もはやこれまで、である。
交配を終えると、メスはエネルギー豊富な師部に坑道を掘りはじめる。樹皮のすぐ下にあるこの繊維質の層は、もともと樹木全体に栄養分を行き渡らせるための複雑なシステムで、つまり樹木の成長と生存の責任を背負っている。この坑道の両脇に、1匹のメスが最高80個の卵を産みつける。メスが産卵しているあいだに、オスはフェロモンを変化させ、それまでとは異なる2種類の匂い物質を放出する。この2つの匂いは、低濃度の間は誘引効果をもつが、ある一定の閾値に達すると停止信号に変化する。樹木への棲みつきが最終段階に入ると、キクイムシは直接的な停止信号を発信しはじめる。「もう来るな──満員だ。隣りの木に行ってくれ!」と。
卵が孵化し、這い出してきた小さな幼虫は、師部を食べながら母の作った坑道に対して垂直に進んでいく。幼虫たちが出ていった跡は、非常に鮮やかな、しかし樹木にとっては致命傷となる模様を描き出す。これは、トウヒキクイムシが「活版印刷機」を意味するラテン語のIps typographus' あるいはドイツ語のBuchdruckerという名で呼ばれているゆえんである。
キクイムシと生態系
キクイムシは生態系において重要な役割を果たしているが、この害虫が世界中の森に壊滅的被害をあたえているのも確かだ。もっとも大きな被害を受けている地域では、毎年何百万立方メートルもの原生林が失われている。現在進行中の気候変動が、キクイムシに非常に有利な環境を作り出しているおかげで、この害虫はは個体数を爆発的に増加させ、以前より頻繁に大発生が起きている。その一方で、加速度的に拡大していく気候変動の影響が、森林の自然防御能をますます低下させているのは、第1章で説明したとおりだ。
心配なのは、干ばつと山火事、そしてある種のキクイムシ(学名 Phloeosinus punctatu)という致命的な組み合わせが、カリフォルニア州の、樹齢3000年を超えるセコイアの巨木群を枯死させかねないことだ。このセコイアは、おそらく現在地球上に生息する最大の生物体だと思われる。キクイムシの群れが、現代の恐竜を本当に倒そうとしているのだ。
こうした困難に立ち向かうために、森林所有者の多くが、匂いを利用した森林管理の方法を模索している。
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じじぃの日記。
ビル・S・ハンソン著『匂いが命を決める ヒト・昆虫・動植物を誘う嗅覚』という本に「巨木キラー・キクイムシ」というのがあった。
害虫といえば、シロアリやキクイムシを思い浮かべる。
トウヒキクイムシは、どんなふうに共同して巨木に攻撃を仕掛けるのか?
「卵が孵化し、這い出してきた小さな幼虫は、師部を食べながら母の作った坑道に対して垂直に進んでいく」
師部は植物の栄養分を運ぶ通路である師管と、師管の生命活動を助ける伴細胞からなる層で、樹木全体に栄養分を行き渡らせる役割を持っている。
キクイムシに襲われた木は、養分の内部分配機能が衰え枯れて死んでしまう。