ロシア軍、チェルノブイリ原発を占拠 ウクライナは「生態系災害」の再来を警告
2022年2月25日 BBC News
チェルノブイリ原発は1986年4月、ウクライナがソヴィエト連邦の一部だった当時、爆発事故を起こした。
ウクライナの首都キーウから北に約130キロ、ベラルーシからは約10キロの位置にある。大量の放射性物質が大気中に放出され、現在のウクライナだけでなく、ロシアやベラルーシ、さらには欧州北部の広範囲に拡散した。半径32キロの範囲が立ち入り禁止区域となった。2016年には、炉心や建屋を丸ごと覆うシェルターが完成した。施設内には複数の放射性廃棄物処理施設がある。
1986年の原発事故が、5年後のソ連崩壊に至る出来事のひとつだったという見方もある。
英シンクタンク「ヘンリー・ジャクソン協会の研究員、タラス・クジオ博士は、それだけにチョルノービリ占拠はプーチン大統領にとって象徴的な勝利と位置づけるべきだと話す。
https://www.bbc.com/japanese/60518322
プーチンは何をしたかったのか?
【目次】
はじめに
第1章 プーチンは、何をしたかったのか?――なぜクリミア併合、ウクライナ侵攻へ至ったか
第2章 プーチンとは、いったい何者なのか?――スパイを夢見た少年時代、若き日の挫折、そして一大転機で権力者へ
第3章 どうやってロシア大統領になったのか?――最高権力者まで上り詰めた疾風怒涛の4年間
第4章 権力者となったプーチンをとりまく人々――政治を動かすオリガルヒ、愛すべき家族や親族
第5章 プーチンが築きあげた“盗人支配”と“監視”のシステムとは?――クレプトクラットが盗み、シロヴィキが見張る
第6章 プーチンの支配はいつまで続き、どう倒れるのか?――プーチンの哀れな末路と、ロシア再生への道
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ウクライナが核を放棄した理由は?
――正規軍が覆面の武装集団にクリミアから追い出されるなんて、ウクライナがまともな国だったとは、到底いえないのではありませんか?
以下、強調印字は筆者による。
ロシア軍がクリミアに入ってきた14年2月時点で、公式には兵力12万5000人とされていたウクライナ軍のうち、使い物になったのは5000人程度にすぎなかった、と軍部高官が認めています。ウクライナは、国内政争に明け暮れ、非核保有国として最低限の基本的な軍事力を備える努力を怠っていたのです。
ソ連崩壊でウクライナは”自動的に”米ロに次ぐ世界第3位の核兵器保有国となりました。ソ連が独占的に管理・運用していましたが、国内に多数あったのです(核弾頭1240発、運転手段のミサイルSS-19が130基・SS-24が46基、戦略爆撃機46機)。
しかし、チェルノブイリ原発事故の悲惨な経験から”核アレルギー”が強烈だったウクライナは、これを放棄しました。「ロシアの脅威に対抗する経済力も軍事力もないから、当面は核兵器を保持すべき」という声はあったものの、ロシアはもちろん、アメリカをはじめとする国際社会も核拡散を許しません。また、核兵器が置いてあっても管理・運用技術はないし、核兵器を守るために必要な高度な軍事力もありません。
ウクライナが核を放棄しなければ、クリミアにせよウクライナ本土にせよ、ロシアがこうも簡単に侵攻できなかったことは確実です。でも、それにはウクライナが北朝鮮のように孤立するしかない。しょせん核保有は”絵に描いたもち”にすぎなかったわけです。
米英ロの核保有3ヵ国は94年12月、「ブタペスト覚書」に署名し、核不拡散条約に加盟したウクライナ・ベラルーシ・カザフスタンの領土保全や他国の武力行使に対する安全保障を約束しました。その直後、ウクライナのクチマ大統領と会見したミッテラン仏大統領は「あなたたちはだまされるだろう」とつぶやいたといいます。この言葉どおり、14年のロシアによるクリミア併合で、覚書の約束は反故(ほご)にされてしまいました。