じじぃの「カオス・地球_83_デンジャー・ゾーン・終章・その後の状況」

China: On the Brink of War with America? US vs China War & Military Documentary

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=JaBmtDHA6p8

USA-China long term war


China’s long term ‘advantages’ over the US

AUGUST 8, 2023 Asia Times
What will work better between USA and China, short-term economic cycles or long-term systemic assets or baggage?
The picture may look not so clear if seen from Beijing.
https://asiatimes.com/2023/08/chinas-long-term-advantages-over-the-us/

デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突

【目次】
序章
第1章 中国の夢
第2章 ピークを迎えた中国
第3章 閉じつつある包囲網
第4章 衰退する国の危険性
第5章 迫る嵐
第6章 前の冷戦が教えること
第7章 デンジャー・ゾーンへ

第8章 その後の状況

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『デンジャー・ゾーン――迫る中国との衝突』

ハル・ブランズ、マイケル・ベックリー/著、奥山真司 /訳 飛鳥新社 2023年発行

第8章 その後の状況 より

長期戦に備える

1つだけはっきりしているのは、アメリカの最大の危機の時期を脱したとしても、平穏な時期を迎えるわけではおそらくないことだ。むしろ依然としてアメリカの浮き沈みは激しく、衝撃や驚きに事欠かない戦いを続けていくことになるだろう。2030年代には「デンジャー・ゾーン戦略」から、競争を続けていく持続可能なアプローチへとシフトする必要性がある。この移行を行う際に、以下の10の原則が役に立つはずだ。

第1の原則は「勝利とはどのようなものかを決定する」ことだ。
逆に、今から10年後の敗北が一体どのようなものになるかを想像してみるとわかりやすい。中国に支配された台湾は地域拡大への足がかりとなり、地域全体が技術面で北京に手錠をかけられた状態となり、脆弱な民主国家群が独裁国家に圧倒されている世界だ。「デンジャー・ゾーン戦略」の最大の目標は、最悪の事態を防ぐこと、つまりこのようなディストピア的な未来が急速に実現するのを防ぐことにある。
 (略)

第2の原則は「ペースを合わせるのを学ぶ」ことだ。
どんな競争でも、持久力よりもスピードが重要になる時期、つまりその国が全力で走るしかないときがある。1950年から51年にかけての厳しい冬、アチソンは「やりすぎ」ということはないと述べたが、その理由は「これ以上ないほど危険が迫っている」からだった。だが、どの国も永遠に走り続けることはできない。
 (略)

第3の原則は「システムを作り上げることで、ライバル関係を形づくること」だ。
冷戦時代にアメリカが行った最も重要なことは、敵の破壊ではなく、友とともに達成した創造である。当時、モスクワの力が増大していたが、アメリカは粉々になった世界の残骸から活力ある民主主義社会を構築することで、非共産主義国ソ連の強制に抵抗するのを助けたのだ。
    ・
今後数十年の間に、中国のパワーを最も強力に抑制するのは、北京から脅威を受けている国同士の結びつきである。つまりワシントンは、今日から始めなければならない臨時のグループづくりを、今後長年にわたって続く多国間構築プロセスの始まりとみなすべきなのだ。

これは「ワシントンは中国に手加減すべきだ」ということではない。
第4の原則はアメリカは非対称的に戦い、相手に容赦なくコストを押し付けなければならない」のだ。
競争関係が長引くほど、自国の強みを発揮し、敵の弱みを突くことが重要になる。
同様に、ライバルを破滅させる鍵は、自国の利益を守るために支払わなければならない代償を高くすることだ。長年にわたりペンタゴンの戦略家だったアンドリュー・マーシャルは、長引く闘争で成功する道は、敵にゲームに参加し続けるための法外な支出をさせる一方で、その闘いを相対的に有利な領域へと誘導することだと述べている。
したがってアメリカは、長期的な技術戦争に不可欠な「ドルの世界支配」や、アメリカが北京に対する世界的な反感や反発を組織化できる「同盟ネットワーク」など、比類なき優位性をもたらす資産を促進すべきである。
 (略)

第5の原則は「自分の主な強みの源泉に対して継続的に投資すること」だ。
2020年代アメリカは、中国の勢いを止めるため、あらゆる手段を講じることになる。長年かけて発展させてきた従来の能力は、そこであまり役に立たないかもしれない。「最初に家を整えよ」というアドバイスは、実際、単なる気休めでしかない。だがこのアドバイスは、戦いが長引けばそれだけ意味を持ってくる。
    ・
アメリカはトランプ大統領が思い描いていたような単独行動をとることもできるし、中国を打ち負かすこともできるだろう。だがその両方を同時に行うことはできない。ではアメリカ屋内の機能不全への対処はどうすればいいのだろうか?

そこで第6の原則は「新時代の世界的な緊張を利用して自己改善を促す」となる。
アメリカの国内問題はリアルに実在する。そもそも自国の力の基盤である国内が崩壊してしまえば、中国の衰退から利益を得ることはできない。その修復のリストには、高技能労働者の増加を確かなものとする移民政策の見直しや、教育と基礎研究への再投資、国の物理的インフラ、デジタルインフラ双方の活性化、汚職の撲滅、そして政治的閉塞から政治暴力に至る効果を持つ、政治の分極化の緩和などを含むだろう。
アメリカの民主制度の最大の強みは強靭性である。しかもこの国は、過去にも悪い時代を乗り越えてきた。資本主義と民主主義の将来が疑問視された1930年代や、国内の動乱と暴力が横行した1960年代後半などだ。国内の再活性化は、米中間の競争を戦い抜くために不可欠である。
 (略)

第7の原則は「交渉の競争の一環にすること」である。
これまで述べてきた原則は、衰退しつつも強大である国に対し、アメリカが優位性を保つためだ。そのためにアメリカは懸命に働き、タフにプレーする必要がある。同時に、相手側と対話することも必要になる。
もちろんアメリカの政府関係者は、今後数年のうちに外交上のブレークスルーが得られる確率がどれほどか、健全な懐疑心を持たねばならない。さらにいえば、秘密主義の敵対国との交渉は常に危ういものだ。中国を含む権威主義的な政権が、厳粛な国際協定に署名した後に、とんでもない裏切りを働いた記憶は枚挙にいとまがない。あまり熱心に彼らと交渉しようとした国は、たいていの場合、代償を払うことになる。だがそれでも、アメリカがいかなる戦略的目標を選択しようと、慎重な交渉は重要な目的を果たすことができる。
気候変動の抑制から新技術の軍事利用の規制まで、いくつかの問題では米中協力が実を結ぶかもしれない。それがなければ、悲惨な結果になるかもしれないからだ。アメリカが今後10年間で、台湾海峡やその他のホットスポットで中国の思い通りにならないことを示し、無制限の威圧が中国共産党にとって逆効果になると示せれば、選択的に緊張を緩和させるチャンスが生まれるかもしれない。
 (略)

第8の原則は、ロシアと中国という不倶戴天(ふぐたいてん)の関係に対する、反直感的になアプローチだ。「ライバル同士を引き合わせることは、引き離す前触れになるかもしれない」である。
ロシアと中国の友好関係が現状のまま進み、現在の指導者たちが居座りつづける限り、アメリカには中露関係の断絶を誘発するためできることはほとんどないだろう。1970年代のアメリカの対中国交回復劇のように、巧みな外交でプーチン習近平から引き離す、いわゆる「キッシンジャーの逆」をやってもうまくいかない。
    ・
アメリカとその同盟国が、モスクワの戦略の変更を促したいのであれば、まずロシアの地政学的修正主義と北京との連携政策が報われないこと、そして欧米との容認可能な関係の代わるに、不快な剣呑(けんのん)さと野心に際限がない中国への依存度がますます高まることを証明しなければならないだろう。同様に、北京をモスクワから引き離すには、ロシアの侵略行為が独裁主義への恐怖を高めて世界中の民主国家を結集させ、習近平が覆そうとしている秩序をかえって強化してしまい。結果的に中国の生存を困難にすることを、繰り返し必要があるかもしれない。

確かにこれは長期的な戦略である。長期化した対立関係は、長い間報われない賭けを必要とすることもある。
これは第9の原則「オリーブの枝を伸ばす準備をしておく」と関連する。
アメリカが大きな圧力をかけなければ、短期的であれ長期的であれ、競争に勝つことはできない。アメリカは北京の拡大への試みを繰り返し挫折させ、現状変更をしようとする中国に大きな代償を払わせなければならない。だが競争の目的は、緊張状態をいつまでも維持することではなく、より良い現状維持を実現することだ。核武装した大国とのライバル関係という文脈でこれを実行するには、ソフトなタッチで強硬路線を維持することが最終的に必要になるかもしれない。
 (略)

最後の原則は「我慢すること」だ。
「デンジャー・ゾーン」を乗り切るには、緊急性と行動の精神が必要だ。1940年にフランクリン・ルーズヴェルトは「サインやシグナルは、スピードを求めている……フルスピードだ」と述べた。これはまさにバランスが不安定だった時代の話だ。だがそれ以降の機関は、すぐに終わるとは限らない戦争で、優位性を少しずつ積み重ねていくことが成果につながった。
長い道のりは本当に長くなるかもしれない。ケナンは1940年代後半に、これから冷戦が10年から15年ほど続くかもしれないと考えて「忍耐」を説いた。だが実際は40年以上かかった。この期間中に危険度は上がったり下がったりしたが、不快な重荷を負い、戦争と平和の間の曖昧な領域を乗り越えていく必要は変らなかった。「封じ込め」は目覚ましい成果を上げたが、勝利の実現には何十年もかかったのだ。

今後10年間のアメリカの課題は、ピークに達した中国がその意思を世界に押しつけることを阻止することにある。

しかし戦略面での緊急性の後には、戦略的忍耐が必要になる。「デンジャー・ゾーン」を乗り切ったアメリカが得られる報酬は、アメリカの優位性が1世代以上にわたって決定的になる。より長い闘争へのチケットになるかもしれない。

それは迅速で決定的な解決策を好む国にとっては、ほんのわずかな褒賞(ほうしょう)にしか見えないかもしれない。しかし今日のアメリカと世界が直面している危機を考えれば、きっと勝ち取るに値するものだ。