じじぃの「カオス・地球_61_習近平独裁新時代・中国経済ゾンビ化」

【Front Japan 桜】日米首脳会談の行方と今後の日中関係 / 魏加寧が訴える中国経済リスク[R5/1/10]

キャスター:渡邉哲也福島香織
動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=aZGdeYrW8Xg


中国の経済改革 歴史と外国に学ぶ方法論

魏加寧 (著), 王瑩瑩 (著), 関志雄 (翻訳), 岡嵜久実子 (翻訳)
【内容紹介】
・中国政府内部のシンクタンク研究者が、習近平政権も含めて、鄧小平の後継者たちによる従来の改革の進め方を批判し、改革成功に向けた包括的な提案を行っている点で大変注目すべき研究です。
読者は、鄧小平の推進した「改革開放」政策以降の経済改革の実態が理解でき、また、推進組織の縦割りの弊害など、習近平政権による改革がなぜ遅れているのかも知ることができます。
・著者たちは古今東西の改革の経験から、改革方法論の重要性、指導者のリーダーシップ、国民の合意、指導者の魅力・力量、政府と市場、国有企業と民間企業、政府と国民、国と地方との関係の調整、理論・世論・組織・人材・方策の準備の必要性を指摘。
それをもとに現代中国の改革を総括し、これらの要素が今後の改革成功には不可欠だとします。著者たちの改革への熱意と視点の高さがうかがえる注目の書です。

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習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン

【目次】
序に代えて――歴史の分岐点となった第20回党大会
第1章 江沢民の死と白紙革命
第2章 習近平「平和外交」の正体

第3章 コロナ政策転換でも光が見えない「新時代」経済政策

第4章 全人代から始まる新たな粛清
最終章 習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウンのボタン

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習近平「独裁新時代」崩壊のカウントダウン』

福島香織/著 かや書房 2023年発行

第3章 コロナ政策転換でも光が見えない「新時代」経済政策 より

体制内エコノミストが指摘する中国経済ゾンビ化

習近平のゼロコロナ政策、習近平政権1期、2期に継続していた計画経済回帰の経済政策のツケは2022年12月、ゼロコロナ政策の突然転換にともない顕在化した。

習近平がゼロコロナ政策を放棄したのは「白紙革命」の勢いに恐れをなした、というのが理由の1つとされるが、もう1つの要因は中国31省・自治区直轄市がすべて財政赤字に陥り、中国全体の財政赤字が過去最高の10兆元を超えたと推計され、このままでは中国経済が崩壊するという危機感の前にそうせざるを得なかったからだといわれている。

象徴的な事件が、中国産業発展促進会技術顧問で主席エコノミストの魏加寧が2022年12月24日の中国金融安全フォーラムで、中国経済の回復は、「中国が法治上の現代化国家になること」と主張したことだった。しかも、「政府のゾンビ化(機能不全)」を激しく批判し、「決策の重心が高すぎる」という表現で、習近平独裁をはっきりと批判していた。

魏加寧の発言は中国内のメディアやサイトでは紹介されていない。米国の華字ニュースサイト・美中時報で紹介され、話題になった。

魏加寧は、経済成長の長期にわたる失速はすでに国家経済安全を脅かす主要な原因となっているとし、かつて(2022年1月)「もし経済が下降し続け、一旦臨界点を超えると、断崖絶壁から墜落するかのように失速する」と発言したことを振り返り、「不幸なことに(2022年)4月以降、断崖絶壁から墜落するかのような失速が始まっている」と中国経済の悪化がすでに臨界点を超えている現状を指摘した。また、2022年5月25日に李克強首相が招集した経済官僚10万人による緊急テレビ会議で、6つの方面について33の対策を打ち出し、12兆元を投じる経済安定計画を打ち出したことについて、「2009年のリーマンショックの手当てのために中国国務院として4兆元の財政出動したときと違って、なんら市場にポジティブな影響を与えなかった」と語った。つまり、今の中国の経済安全リスクは、国務院の小手先の政策で回避するには手遅れであることを示唆したのだ。

魏加寧は、目下の中国経済の直面する問題について「6つのゾンビ化(機能不全)リスク」と表現した。

1.市場のゾンビ化

米国が主導する中露”デカップリング”に加え、国内市場がコロナ貿易政策の影響を受けて計画経済回帰に進み、国内消費が委縮したことが問題の深刻さに拍車をかけた。(略)

2.企業のゾンビ化

中国がこの数年、国有企業の利潤化を進めるために民営企業を犠牲にしたことが原因。(略)

3.銀行のゾンビ化

国有大型銀行については、融資意欲が下降し、貸し渋り現象、債務の前倒し返済現象が起きている。(略)

4.中央銀行のゾンビ化

企業の「貸し惜しみ」、銀行の「貸し渋り」現像の増加は、貨幣政策の柔軟性を失わせた。(略)

5.財政のゾンビ化

中国の国家財政はもともと、東南部沿海省、特に長江デルタを構成する省市が上納する財政余剰金を中西部の貧困省に移転することで運営されてきた。だが今年、長江デルタ一体の省市の貿易収支に巨額赤字が出現。(略)

6.政府のゾンビ化

目下、決策(政策の決定)の重心が高く偏りすぎており、必然的に下の現場に降りてくる政策の左右の揺れ幅が大きくなり、極端から極端に変わる。(略)

魏加寧は、こうした6つのゾンビ化を防がねば中国経済の回復はありえない、と見ている。だが、どうすればそれが可能なのか。
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そこで魏加寧は言う。

「まず民衆の信用を取り戻すこと。……私の近年の政策の過ちを批判してきた論文はすべてネットで削除されている。……当局は私の提言文書の削除を解除すべきではないか?」

「次に、民主的法治建設を中心とすること。ゼロコロナ政策解除後、『経済建設を政府任務の重心に回帰させよ』と言う人がいるが、私の見方では、経済建設中心ではなく、法治建設中心に回帰すべきだ。国内外の投資者が最も重視するビジネス環境は法治である。……中国政府は今から、真面目に法治建設を行えば、必ず中国経済は新しい経済成長の軌道にのる」

「最後に、真面目に全面的に反省することだ。……心から各地、各レベルの政府と広大な人民は今からすぐに全面的な反省を行い、できるだけ早く法治上の現代化国家になってほしい。そうすれば中国経済は再び飛躍する」

習近平を名指しで批判しているわけではないが、文脈から見れば、今の中国経済はこのままでは崩壊を免れ得ず、崩壊を回避するためには、もはや経済政策を講じるのではなく、法治の現代化に舵を切るしかない、ということだ。

そして、「政府各レベルは真面目に反省せよ」というが、おそらくもっとも真面目に反省すべき、この中国の経済崩壊危機を引き起こした最高責任者として、習近平を思い浮かべているであろう。