じじぃの「カオス・地球_28_進化を超える進化・洞窟壁画・文字の発明」

THE ALPHABET EXPLAINED: The origin of every letter

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=CYqqFqoLnnk

アルファベットの起源


Turismo de Cantabria - Portal Oficial de Turismo de Cantabria

Espana
●Cueva de El Castillo
https://www.turismodecantabria.com/disfrutala/que-visitar/18-cueva-de-el-castillo/buscador-aWRab25hPTkmaWRNdW5pY2lwaW89NDAm

アルファベットの起源

2015年5月1日  ケペル先生のブログ
アルファベットという語は、ギリシア文字の最初の2文字α、βの読み方であるアルファ、ベータに由来する。
Aはエジプト文字では雄牛の頭をあらわす。これがフェニキアの「アレフ」になり、ギリシア文字の「アルファ」になり、ラテン文字の「A」になった。
http://shisly.cocolog-nifty.com/blog/2015/05/post-4728.html

文藝春秋 進化を超える進化

【目次】
序章
創世記
第1部 火

第2部 言葉

第3部 美
第4部 時間

                    • -

『進化を超える進化――サピエンスに人類を超越させた4つの秘密』

ガイア・ヴィンス/著、野中香方子/訳 文藝春秋 2022年発行

第2部 言葉 より

第6章 物語――その発明が集団のメモリーバンクとして文化を伝達する

ソングラインがアボリジニを救った

今からおよそ6万5000年前、オーストラリア大陸に上陸したのは、比較的少数の開拓者たちだった。彼らは急速に拡散し、一族やコミュニケーションとして繁栄し、環境をどのとうに利用すれば生き残ることができるかを学んでいった。野焼きをして農業を行い、銛(もり)や槍といった複雑な道具をさまざまな素材から作った。この集団は頻繁に移動した。乾季と雨季の変化に合わせて、水場や他の資源を求めて渡しある気、行く先々の土地を口伝の地図に記録していった。物語は、学び、思い出し、教えるのに役立つ技術だ。あるアボリジニの長老が語る通り「我々は本を持たない。我々の歴史はこの大地にある。祖父母から神聖な場所を教わり、物語を聞かせてもらい、ジュクルパ(天地創造の物語)を一緒に歌ったり踊ったりして学んだ。この物語を踊るとき、心と体と足でそのすべてを思い出す。常にジュクルパを再現しているのだ」。何世代にもわたってソングラインで受け継がれてきたこの文化的技術は、オーストラリア全土で人間を繁栄させた。

洞窟のなかの映画

スペイン北部バスク地方の奥地、カンタブリア州の、2つの川と3つの渓谷が出会う場所に洞窟群がある。中でもエル・カスティージョ洞窟は、動物の群れの移動ルートにあったせいか、何千年にもわたってネアンデルタール人とわたしたちの祖先の住みかとなり、過酷な氷河時代には避難所になった。迷路のように入り組んだ洞窟の小部屋の壁には、6万4000年前にこの2種類の人類が描いた素晴らしい絵が残されている。しかし、つい最近になって科学者たちは洞窟の奥深くで、あり得ないほど素晴らしいものを発見した。わたしはそこを訪れたとき、ガイドに電灯を消してくれるよう頼んだ。描いた人が意図したとおりに鑑賞したかったからだ。

数秒の間、暗闇の中で目を凝らす。やがて、ガイドが掲げる松明(たいまつ)の灯りの中に、立体的な半獣男(バイソン・マン)の怪物が現れた。恐ろしげな表情で、天上からわたしを見下ろしている。松明の灯りが高さ3メートルの堂々たる石筍(せきじゅん)の周りを動くと、この半獣男は大きくなり、歪み、天井を歩いていく。畏敬の念と驚きと恐怖が混じりあった原始的な感情が湧きあがる。
この驚くべき像は、一種の映画だ。遅くとも1万5000年前には、1人のアニメーターが、獣脂を燃やすランプを動かして観客を魅了した。石筍の膨らみを利用して、一連の絵に光をあてたり影を落としたりして、動きと意味を生じさせたのだ。こうして語られた物語は、創作者が頭の中で生み出した考えを他の人々に伝えただろう。ストーリーテリングは、社会的な絆を深める絶好の機会になる。また、わたしたちが物語の中で語る嘘は、合意に基づいている。つまり、物語を聞くときのわたしたちは、境界を越えて新たな現実や想像上の風景に観客として入ることに合意しているのだ。

物語と文化

人間は何千年にもわたって、時代と聴衆に合わせて登場人物や細部を変えながら、同じ物語を語ってきたらしい。1872年、考古学者のジョージ・スミスは、バビロニアの粘土板に記された楔形文字を解読し、世界最古の物語をよみがえらせた。4000年前に語られた壮大な叙事詩ギルガメシュ叙事詩である。しかし、ロマンチックなドラマと冒険に満ち、永遠を探し求めるその叙事詩は、不思議と馴染み深いものだった。ギルガメシュの「大洪水伝説」では、ウトナビシュティムという人物がシュメールの神エンキから、大洪水で人類を滅ぼすという神の計画を教えられ、エンキの指示にしたがって、現世の財産を捨てて箱舟を作り、妻と家族、村の職人、動物の赤ちゃんと食糧を積み込んだ。ユダヤ教キリスト教イスラム教で語られる「ノアの方舟」とほぼ同じであり、それらにインスピレーションを与えたのは間違いない。

実のところ、ギルガメシュの物語が粘土板に葦のペンで刻まれていた頃、アンクという名のエジプトの書記官は、この世に語られなかったことは何も残っていない、と嘆いた。「未知の言葉を知りたい……祖先が語り、使い古され、何度も繰り返されてきたものではない言葉を!」。おそらく基本的なプロットは一握りしかないのだろうが、それらの限られたルールから、人間は無数の可能性を紡ぎ出してきた。そして常に、聞き手に合わせて語り方を変えるので、物語自体が聞き手の環境に適応して進化していく。したがって、新たな物語を生む必要はないのだ。

文字の発明は何を変えたのか

およそ5000年前、人類は「文字」という、柔軟性のある、極めて優れた情報保存ツールを発明した。文字は、大量の情報を正確に管理・保存・伝達するおkとのできる、エネルギーと時間の両面で圧倒的に効率の良い方法だった。言うまでもなく、それは文化の累積的進化の要(かなめ)になった。

しかし、文字の読み書きを学ぶには相応の時間(と子どもの努力)が必要とされるため、文字を採用したのは、それに見合う利益が得られる社会だけだった。狩猟採集民の場合、小規模の言語集団が広大な地域に散らばって暮らしていたため、文字を使うことへの選択圧はかからなかった。土地、小麦の量、ヤギの数、子どもの数といった「財産」を記録する必要が出てきたのは、定住するようになってからだ。農耕社会では、作物の種類がその社会の運命を決めることがある。小麦や米のように定期的に収穫される穀物は課税しやすいため、国は豊かになり、インフラが発展する、そうなると、文字を使えることはいっそう有益になり、また、必要とされる。もっともそのような社会でも、読み書きができるのは、政府の役人や宗教のリーダーといった一部の男性に限られた。

文字を発達させて使用したのは、十分な食料を生産し、さまざまな商売をする膨大な人口を養い、多数の異なる氏族を統治する権力を持ち、安全で安定した、戦争が起きない定住社会だった。紀元前3000年頃には、メソポタミア穀物農家に支えられて、最初の都市と国家が誕生した。社会は、氏族を中心とする集団から、無名の個人からなるはるかに大規模な国家へと、劇的な変貌を遂げた。それを可能にしたツールの1つが文字だった。

人間が誕生してから長い間、人々が何を言って何をしたかを記録した文書は存在しなかった。歴史が始まったのは、課税や商売のための所有権、都市の港で輸出入される商品の量、統治者の財産、変更可能な法規、戦争の勝利の記録といった世俗的なことがらを粘土に書きつけるようになってからだ。

初期のシュメール人の書きつけから、現代のフェイスブックのアカウントに至るまで、わたしたちは、生活について記録を残したいという衝動に駆られ続けている。

このような情報の保存法と伝達法が進化したおかげで、社会は規模と複雑さを増し、文化的知識が集中するネットワークの拠点になった。