じじぃの「カオス・地球_12_壊れゆく世界の標・陰謀論との向き合い方」

トランプのウソを信じた信者たちが議会議事堂を襲撃した


潜入取材で「トランプ信者」に会いまくり見た素顔

陰謀論Qアノン信者は「ごく普通の中流女性」
2022/10/13 東洋経済オンライン
ミシガン州に移り住み、共和党のボランティアとして1000件を超える戸別訪問をした筆者が見たトランプ信者の実像。
https://toyokeizai.net/articles/-/625339

Qアノン

ウィキペディアWikipedia) より
Qアノン(英: QAnon)、あるいは単にQとは、アメリカの極右が提唱している陰謀論とそれに基づく政治運動である。

2ちゃんねるの関係者が管理運営する、英語圏の匿名画像掲示板・4chanと8chan(現・8kun)に現れた「Q」という名前の人物の投稿に端を発する。
「世界規模の児童売春組織を運営している悪魔崇拝者・小児性愛者・人肉嗜食者による秘密結社が世界を裏で支配しており、ドナルド・トランプはこれと密かに戦っている」という主張が中心的であり、神に遣わされた救世主としてトランプが個人崇拝の対象となっている。

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NHK出版新書 壊れゆく世界の標(しるべ)

【目次】
第1章  命を守らない国家

第2章  アメリカを覆う「被害妄想」

第3章  スローガンを叫ぶだけでは何も変わらない
第4章 変革は足元で始まっている
第5章  可能なる平和を求めて
第6章 持続可能な社会への道標
第7章 知性の悲観主義、意志の楽観主義

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『壊れゆく世界の標』

ノーム・チョムスキー/著、デイヴィッド・バーサミアン/聞き手、富永晶子/訳 NHK出版新書 2022年発行

第2章  アメリカを覆う「被害妄想」 より

アメリカを覆う「被害妄想」

――大統領選の結果がどうあれ、何千万という人々がトランプに投票することはまず間違いないでしょう。これ自体、憂慮すべきことだと思います。

そのとおり、しかし、何千万もの人々がトランプに投票するのはなぜかを考えてみるべきだ。トランプに投票する人々の情報源は、基本的にひとつだけだ。もっとも、FOXニュース、ラッシュ・リンボーやブライトバードのラジオ放送など、形態は様々だが、内容はみな同じだ。つまり、トランプの支持層は同じメッセージを絶え間なく浴びていることになる。ラッシュ・リンボーの巧みな表現を借りると、「欺瞞には4つの側面がある――政府、学会、メディア、科学だ。この4つはすべて、欺瞞を糧(かて)にしている」というメッセージだ。彼らの言葉に耳を傾けてはいけない。カーテンの背後にいる手品師に目を向ける必要がある。背後で糸を引いているのは、われらが神、自らを「選ばれし者」と呼ぶトランプだ。ゴマすり国務長官マイク・ポンぺオによれば、トランプはイスラエルをイランから救うために遣わされたそうだ。キリスト教福音派メガチャーチの説教者たちも、同じようなメッセージをトランプ支持者の頭に吹きこんでいる。

こうした洗脳による結果は、見てのとおりだ。国民のほぼ半分が地球の温暖化など起きていないと考えている。残りの共和党支持者のうち、地球温暖化が火急の問題だと捉えている者はごく少数にすぎない。途方もない数の人々が、このパンデミックアメリカを滅ぼすために中国から吹き込まれたリベラル派によるデマだとみなしている。昼夜を問わず、こういう主張を頭に叩きこまれ、ほかの意見がまったくミニに入らない状況のなか、やり手のペテン師が「私はきみたちを愛している。きみたちを守ってみせる」と書かれたプラカードをを掲げて目の前に立っているのだ。絶えずそうした状態にさらされれば、つい、そのペテン師に投票したくなるだろう。たとえ、その男がプラカードを持っていないほうの手で繰り返し君たちの背中を刺している、つまり、国民を裏切っているとしても。
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トランプは自分を支持する有権者に何をしているのか? 何かを与えるどころか、彼らを踏みにじっている。トランプの政策で生活が悪化の一途をたどっているのに、彼らは私が子どものころニュルンベルク党大会で聞いたのと同じ熱狂ぶりで「救世主」を称えているのだよ。これは、現在のアメリカの文化と社会を如実に表した、驚きべき状況だと言わざるをえないね。

陰謀論との向き合い方

――呪術的思考(注:ある事象について、理性と観察においては因果関係が正当化できない物事に原因を求める思考)は、はるか昔から存在します。ですが、この風潮が現在のように普及した理由に、ソーシャルメディアの普及が関連していると思われますか?

最初にことわっておくが、私自身はソーシャルメディアを使ったことがない。
私の意見はあくまで部外者のものだ。しかし、目にした範囲で判断すると、ソーシャルメディアは諸刃の剣だと思う。

活動家団体は、ほぼすべてソーシャルメディア上で組織されている。たとえばブラック・ライヴズ・マターもそうだ。彼らの活動の大部分がソーシャルメディア上で行われているようだね。その一方で、ソーシャルメディアはQアノンやプラウド・ボーイズといったおぞましい極右組織の隠れ蓑にもなっている。

きみや私だって、インターネットを使っているときは自分の信念を強化する情報源に向かいがちだと思うが、それはよくない。もっと幅広い情報に触れる必要がある。とはいえ、自分が信じるものに意識が向かうのは自然なことであり、ソーシャルメディアがこの傾向を助長するのはたしかだ。

この傾向にはもっともな理由があるのと同時に、悪影響もある。自分の信条のみしか聞こえない世界に閉じこもり、その信念がますます強化されること――これが悪影響だ。
フェイスブックにはニュースフィードが表示されるが、これは主要な情報源が行なう多少とも幅広い選別にかけられた報道の、さらに上澄みだけをすくったニュースだ。この種のフィルター処理は、情報の受け手からするとたいへんな有害なのだよ。
きみも知っていると思うが、歩道沿いに「顔を上げろ!」という看板を立てる大学が実際にいくつのある。要するに、手に持った携帯電話ばかり見てはいけない、誰かと話しなさい、周りを見なさい、ということだ。