じじぃの「科学・地球_501_移民の世界ハンドブック・ディアスポラ・華僑と印僑」

China and the World Forum | Chinese Diaspora in the Modern World

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=TAX1osc7ZLw

India and its Diaspora


Chinese diaspora interactive map

Sunday, July 25, 2010
http://karakullake.blogspot.com/2010/07/chinese-diaspora-interactive-map.html

『地図とデータで見る移民の世界ハンドブック』

カトリーヌ・ヴィトール・ド・ヴァンダン/著、太田佐絵子/訳 原書房 2022年発行

さまざまな移住、要因と展望 より

ディアスポラトランスナショナルなネットワーク

「散らばる」という意味のギリシャ語、スピロ(spiro)に由来するディアスポラという言葉は、ある地域から散らばって、いくつもの国に分かれて暮らしながら、関係を保っているコミュニティ組織を意味している。アメリカの社会学者マーク・グラノヴィェツターは「弱い紐帯の強さ」について語っている。集団的アイデンティティは、追放されたという記憶や文化的遺産を中心として保たれているが、それだけではなく、祖国ではないところで離れて暮らしているという思いがアイデンティティをいっそう強く認識させる。冷戦後、新たなタイプのディアスポラが生まれた。このような新タイプのディアスポラは、同じ国籍や同じグループどうしで移民として諸国に移り住み、そうした国々のあいだで強いきずなを維持している。

インドや中国の移民

ディアスポラのなかでももっとも多いのが、中国人とインド人である。中国系ディアスポラ(華僑)は5000万人、インド系ディアスポラ印僑)は3700万人にのぼる。とはいえ歴史の古い中国系ディアスポラには、移住国の国籍をもっている2、3世がふくまれているので、移民数では第2位となる。
世界に移住するようになったのは、奴隷制度が廃止された19世紀にまでさかのぼる。砂糖を生産する西インド諸島や、アメリカ・ロシアの大規模土木工事、ヨーロッパの工場で、労働力が必要とされたのである。中国商人やインド商人のディアスポラは、それよりはるかに時代がさかのぼるが、彼らが住みついたのは、世界のなかでも、出発地から比較的近い地域であることが多かった。経済のグローバル化によって、アメリカ、カナダ、北アフリカやサハラ以南のアフリカへの経済的ディアスポラが新たな広がりを示している。おもに中国南東部出身の中国系移民は、この地域と強いきずなで結ばれているが、香港や台湾との関係も深い。いっぽう、インド系移民は、さまざまな階層、言語、宗教、文化に属しているので、インド国外でひとつの大きな少数民族集団を形成するということはない。中国とインドを合わせると、女性が男性より2億人少ないことから、アジア諸国での国際結婚のための移住がおこなわれ、新たなディアスポラのきずなを生むことにつながっている。

トルコ、マグレブ地域、ロマのディアスポラ

ヨーロッパでは、経済的移住によって、ふたつの新タイプのディアスポラ、すなわちトルコ人(約450万人)とモロッコ人(350万人、ただしモロッコの資料によれば500万人)のディアスポラがあらわれている。この2グループは、移住先のヨーロッパ諸国の国境をまたいで、経済・団体。宗教・文化・婚姻のダイナミックな関係を築いている。本国のモロッコやトルコは、出身国への送金をしてくれるだけでなき、移民先で影響力をもつ存在になっているディアスポラを奨励している。
そのいっぽうで、ロマのディアスポラはヨーロッパで議論の的になっている。出身国(ルーマニアブルガリアハンガリー)がシュンゲン協定にくわわることによって、自由にヨーロッパを行き来できるからだ。現在約1200万人と推定され、そのうち900万人がヨーロッパ出身であるロマのディアスポラは、1000年以上前にインドからのがれてきた人々が起源とされる。ロマの国外追放をめぐる近年の論争によって、出身国でも受け入れ国でも、ロマを対象とする差別が生じている。ブルガリアルーマニア(こうした国々では、社会統合に必要とされるプログラムが実施されていない)で、人口の10パーセントを占めるロマたちは、シュンゲン圏内で3ヵ月以上滞在する権利を、EUによってたびたび保留されてきた。