じじぃの「映画・モノクロからカラーの時代へ!ケミストリー世界史」

『映画はアリスから始まった』予告編

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=w61YWIoyMgQ&t=25s

映画はアリスから始まった


『映画はアリスから始まった』

リュミエール兄弟がシネマトグラフを発明した<映画誕生の年>、1895年
その時、アリス・ギイは映画の“物語る力”に可能性を見出していた―!

「記録するだけの映像は退屈。映画で物語をつくったらどうかしら―」
http://www.pan-dora.co.jp/aliceguy/

『ケミストリー世界史 その時、化学が時代を変えた!』

大宮理/著 PHP文庫 2022年発行

第12章 資本主義から帝国主義へ より

1895年 映画の時代――リュミエール兄弟によって映画の幕が開いた

●映画を観るのも命がけだった
ニトロセルロースを成分としたセルロイドで長いフィルムがつくられるようになると、1コマ1コマを撮影して連続で再生する映画が発明されました。
1891年、トーマス・エジソンはキネトスコープという映写機を発明して、15メートルくらいのフィルムで20秒ほどの動画を再生し、これを覗き見るシステムをつくります。
その後、フランスのリュミエール兄弟が1895年に、いまに続く映写機と映画のシステムを発明し、世界初の実写映画を制作しました。映写機のレンズはなんと、水を入れたフラスコでした。
しかし、ニトロセルロースは火薬と似たような分子構造をもち、引火性が高く、映画館の映写機が止まってたった数秒間、映写機の強い光をフィルムに一点集中で当てただけで発火します。
事実、世界中のあちこちの映画館が火災に見舞われました。1897年には、パリで上映中に大火災が発生して、180人が亡くなりました。映画を観るのも命がけだったのです。
映画「ニュー・シネマ・パラダイス」という、イタリア・シチリア島の田舎町の映画館を舞台にしたヒューマンドラマの名作がありますが、その映画化館が火事で焼けてしまうのも、このニトロセルロースでつくられた映画フィルムの引火性が高かったからなのです。

第15章 2つの世界大戦のあいだ より

1935年 カラーフイルムの登場――カラーの映画やアニメの時代へ

●モノクロからカラーの時代へ
20世紀に入り、写真技術は発展して、誰でも小さなカメラで写真が撮れるようになりました。カメラの普及をもたらしたのは、ドイツのライツ社の技術者オスカー・バルナックです。
1925年、ライツ+カメラから「ライカ」というブランドを立ち上げ、ポケットに入るくらいのコンパクトなカメラを販売して、世界的なメーカーになりました。
白黒の写真が主流の時代、1935年に、コダック社が「コダクローム」という映画用カラーフイルムを発売します。「クローム」はギリシャ語で「色」という意味です(元素名のクロムも同じ語源)。
テレビもない20世紀の初めから、映画が大きなメディアとして成長していました。ロシア革命の混乱や戦争でたくさんのユダヤ人が移民としてアメリカに押し寄せましたが、彼らは新しい産業である映画に参入し、アメリカの西海岸で映画を巨大な産業にしていきました。
この映画つくりのなかのメイクアップを狙ったのがロシアから移民してきたマックス・ファクターで、化粧やマスカラなどの美容産業も、消費社会のブームのなかで巨大化していきます。映画の中心地、ハリウッドと、化粧はつながっていたのです。
1936年には、ドイツの化学メーカー、アグファ社がフルカラーの写真フィルムを発売しました。ざっくりとした原理は、フィルムが多層構造になっていて、臭化銀が光の緑、赤、青の3原色をそれぞれ発色する色素の層で感光すると、化学反応が起こって色素の分子が発色し、カラーの像をつくるのです。
第2次世界大戦の直前から、アメリカやドイツではカラー写真、カラーフィルムの時代が始まりました。このカラーフィルムの発明がなかったなら、今日、私たちはジブリの鮮やかなカラーのアニメも、「007」シリーズの映画も、フルカラーで観ることはできなかったでしょう。