じじぃの「科学・地球_342_世界を変えた100のポスター・飲酒運転撲滅ポスター」

Drink-driving Poster

50 years of truly shocking drink-driving adverts

7 November 2014 BBC NEWS
In 1964, it was a crime to be in charge of a car while "unfit to drive through drink or drugs".
But there was no legal drink-driving limit and no simple test to determine whether or not someone was unfit to drive. The launch of the drink-driving campaign coincided with the publication of an influential study in the US - the Grand Rapids Effects Revisted: Accidents, Alcohol and Risk.
https://www.bbc.com/news/magazine-29894885

『世界を変えた100のポスター 下 1939-2019年』

コリン・ソルター/著、角敦子/訳 原書房 2021年発行

088 飲酒運転撲滅ポスター より

Drink-driving Poster[1983-1996年]

政府はこれまで、交通安全を目標にさまざまな取り組みをしてきた。シートベルトの着用率、車両の安全運転性能、交通ルールの知識といったものが、すべて向上したのは、広告キャンペーンのおかげだ。だが一般市民は時として、飲酒運転の危険性を認めようとしていないように思われることがある。

自動車が発明されたばかりの頃は、スリルを求めて猛スピードで走ったとしても最高時速は15キロ強だったので、アルコールが入って運転しても面白い挑戦程度ですんだ。だが20世紀をとおして車はスピードを増し、ワインとビールのアルコール度数は高くなった。20世紀の前半には、車の搭乗者と歩行者の死者数がいずれも増加傾向をたどっている。車の新機能で重視されたのは、運転者と同乗者の安全で、事故に遭う危険性のある歩行者ではなかった。
飲酒運転撲滅キャンペーンでは、年月とともにさまざまな取り組みがなされた。歩行者の犠牲者に焦点を当てたものも、運転者または同乗者の事故後に注目したものもあった。1983年のアメリカのポスターは第三者のグループ、つまり飲酒ドライバーの友人に呼びかけた。「友達なら友達に飲酒運転をさせない」は大成功を収め、今ではアメリカ人の68パーセントが誰かの運転を止めたことがあると述べている。1998年にはアメリカの飲酒運転による死者数が、統計をとりはじめて以来最低の数字を記録した。
イギリスではじめて飲酒運転のテレビCMが流れたのは1964年だった。当時この国にはまだ、運転者のアルコール摂取を抑制する法律がなかった。1977年の最初のキャンペーンでは、クリスマスシーズンに狙いが定められた。毎年この時期にアルコール関連の交通事故が激増してからだ。スローガンは「飲む前、運転する前に考えよう Think before you drink before you drive」。飲酒運転による死者数にはじめて真剣に切りこんだキャンペーンだった。このキャンペーンが始まってから10年後には飲酒運転による死者数は46パーセント減少した。
このスローガンは縮められて最後には「シンク!」になった。交差点の路面標識の「ストップ」と同じ形のロゴだ。「シンク!」ポスターは、飲酒の引き起こす結果をますます露骨に見せるようになった。1990年代のシリーズはとくに痛烈だ。人が目をそらすのを承知で分割表示方式をとり、そらした視線の先に第2の容赦ないメッセージが見えるようにしている。
1990年の「キャシーは眠れない」のポスター(動画参照)は、事故直接に苦しんでいるのは犠牲者だけではないことを思い起こさせる。1992年にはキャンペーンに貢献したのは、挿管された若い女性を大写ししたビデオだ(画像参照.左側)。救急隊員の努力も空しく女性が息をふき返すことはない。
広告の言葉遊びの世界では、「ドリンク」と「シンク」の取り合わせは語呂がよい。
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2000年、「シンク!」はイギリス政府の新設部門の名称となった。この部門は交通安全のあらゆる面に責任を負っている。違法薬物の影響下での危険運転の増加もそうだ。また展開しているキャンペーンを功を奏して、交通事故死は日々減りつづけている。