じじぃの「歴史・思想_574_日本は第2のウクライナとなるのか?台湾有事」

Taiwan: China's next target? | DW Analysis

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=VkuNWDG3yNM

焦点:台湾がウクライナ戦争注視、有事の対中国戦術を研究

2022年3月10日 ロイター
中国軍による異常な動きは報告されていないが、台湾当局は警戒レベルを上げている。
ロシアの精密ミサイル使用や、劣勢ながらも考え抜かれたウクライナの戦術は、台湾の安全保障の専門家の間で大きな関心を集めている。
また、「ウクライナ軍の実績からわれわれはさらに自信を持つことができる」と強調した。
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-taiwan-defence-idJPKBN2L60DL

日本は第2のウクライナとなるのか!? コロナとウクライナが世界とあなたの生活を一変させる

著者 浅井 隆 (著),織田 邦男 (著),川上 明 (著),関 和馬 (著)
ロシアがウクライナに侵攻した。
この先、極東有事はありうるのか? 元自衛隊空将の現場の経験、アナリストのチャートが示す真実などを元にウクライナ危機に迫り、国防に対する意識を高めるための情報や考え方を伝える。

                  • -

『日本は第2のウクライナとなるのか!?』

浅井隆/著 第二海援隊 2022年発行

プロローグ より

対岸の火事ではすまされないウクライナ情勢

2022年2月、信じられないことが起きた。あのプーチン率いるロシア軍が、ウクライナに侵攻したのだ。市街地への攻撃で多くの国民が犠牲となり、また人々が着の身着のままで逃げ惑う様子は、テレビやインターネットで放送され、世界中を震撼させた。
ウクライナ軍、およびウクライナ国民からなる義勇軍は必死の抵抗を行なっているが、圧倒的な力を持つロシア軍はウクライナ全土で戦闘を展開し、人々を蹂躙(じゅうりん)し続けている。
プーチンがこの侵攻の最終目標を何に定め、そしてこの本が出る頃にどこまでの事態に発展しているのか、まったく想像も付かない。しかし私は、この遠く8000キロも離れた異国の有事を「まったくの他人事」どころか、「明日は我が身」という重大な危機感をもって捉えている。
まず私の頭によぎったのは、ウクライナ危機は「10年後の日本」の姿になり得るということだ。ある安全保障の専門家は、日本はウクライナよりも危険であると指摘する。ウクライナの場合、脅威となる隣接国はロシア一国であるが、日本の場合は中国、北朝鮮、ロシアの三国が隣接しているためだ。いずれも超独裁国家で核保有国だ。隣国にこれほどのリスクを抱える先進国は、実は日本だけなのだ。

第1章 ウクライナとなるのか。日本周辺は大丈夫なのか。 より

浅井 さて、いよいよ(ウクライナから)極東に話を移したいと思います。織田さんが先ほどから指摘している通り、中国の習近平北朝鮮金正恩は現在の情勢を目を皿のようにして注目していると思います。そして、それを教訓としてどう生かすかを、必死に思案していることでしょう。
 中国は、「台湾は絶対取る」ということを言っています。一方で、台湾も蔡英文総統が「米軍が来ないことも想定して、自分たちで戦う」と言っています。台湾は日本とはまったく違ってすさまじい危機意識を持って臨んでいるわけですが、実際のところ台湾の軍隊は、人民解放軍に対抗しきれるほど強いのでしょうか。あるいはどの程度、戦い得るものなのでしょうか。
織田 彼らがどの程度本気なのかは、昔と今ではかなり違うと思います。私が台湾のシンポジウムに呼ばれて行った12年前、国防相の幹部と会った時には、彼らは非常に弱腰でした。当時は国民党の馬英九政権で、ちょうど徴兵制をやめるという議論をしていた時期だったということも背景にあったのでしょう。
 私が、「君たち、大丈夫か。(中国は)攻めて来ようとしているぞ」と水向けすると、彼らはあっさりこう言ってのけたのです。「いやいや、彼らが攻めて来たら、我々は到底勝てません。だったら、早々に白旗を上げた方がいい。その方が、被害も少なくてすみます」――彼らの認識というのは、その程度だったんですね。率直に言って私は、「こいつら、本当に大丈夫なのか?」と非常に不安を覚えたものです。
 しかし、3年前に同じく台湾で国防幹部と会談した後輩の元幕長に話を聞いたのですが、「いやいや、彼らの意識は今、すごく高いですよ」と言っていました。おそらく、総統が蔡英文になってから大きく変わったのでしょうね。なにしろ、この10年ちょっとで中国を取り巻く状況は激変しました。ウイグル族の弾圧、チベット人への人権侵害、香港での言論統制や締め付けなど、中国の支配強化とそれによる周辺地域での惨状が明らかになったわけです。当然、台湾の人々もあれと同じようになったら大変だと思ったのでしょう。そこから変革を進めて来たわけですが、特に蔡英文の果たした役割は大きいと思います。
 蔡英文がなによりすごいと思ったのは、中国との利権が絡む関係者を排除したという点です。私が台湾に行った時は、まだ台湾軍のトップや将官は、退官したらみんな中国本土に別荘をあてがわれていました。年金は台湾政府からたらふくもらい、中国の別荘で優雅に余生を暮らす、それが普通だったのです。こうしたズブズブの関係は、かの李登輝さえ断ち切ることはできませんでした。しかし、蔡英文はそれをバッサリ切り捨ててのけたのです。
浅井 それは、女性ゆえの強さかもしれませんね。元英首相のサッチャーもそうでした。
織田 周辺環境にも恵まれていたように思います。香港でああいうことが起こり、誰もが次は台湾だと危機を感じていました。だから、中国とのそうした関係をバッサリ切ってもあまり軍からも文句がでなかったわけです。
 ある意味、あれが1つの契機になったのかもしれません。台湾は、この数年で生まれ変わったと思います。
浅井 そうした危機意識の高まりはあるとしても、実際の戦闘という点ではどうなのでしょう。たとえば、装備などはなんとか戦い得る状態なのでしょうか?
織田 いいえ、遠く及びません。なにしろ、アメリカは台湾に一線級の兵器を提供しませんから。それは、台湾を根本的に信用していないからでしょう。戦闘機も「F35」なんて最新鋭のものは買わせず、一世代前の「F16」のVというアップグレード機を提供するに留めています。なぜかと言えば、台湾に一線級の装備を納品すれば、その技術や情報は中国に流れて行くおそれがあると考えられているからです。台湾の中にも、そういうことをする輩はたくさんいます。もちろん、武器だけでなく米軍に関する情報なども含めての話です。
 これは韓国も同じで、韓国に情報を渡したら、その上方は北朝鮮に流れて行くものとアメリカは考えています。実際、私が現役の時はアメリカの軍人はみんなそれを公言していました。
    ・
 さて、実際に台湾との戦力が雲泥の差と言っても、中国はそこを見ているわけではありません。中国も金正恩も。アメリカの動きを見ています。アメリカが本当に台湾と一緒になって立つのか、この点こそが重要だということです。もしアメリカが立たないということがわかったら、中国は揚々として台湾を呑み込むでしょうね。なにしろ、中国と台湾の兵力差は10:1ほどもあります。
 孫氏の兵法に、戦いについてどう書いてあるかご存知でしょうか。兵力が敵の2倍あったら攻撃してはならない。分裂させろとあります。もし、5倍あったら攻撃を仕掛けろ、10倍あったら戦わずして陥ちる、と。
 そして現在、中国と台湾の戦力差は10倍あります。以前、台湾軍の幹部が言っていた「もう戦っても無理だから、白旗上げた方がよっぽどいい」というのは、兵法の発想から言えばまったく不思議ではないわけです。そして、戦わずに台湾を穫れるのですから、中国にとっては最上の策ということです。
 しかし、日本(ひいてはアメリカ)にとってはそれでは困るわけでしす。安倍さんなんかが言っている「台湾有事は日本有事」というのは、まったくその通りです。安倍さんは、台湾が有事になったら先島諸島とか尖閣からみんな戦闘区域になる、だから大変だと言うわけですが、それはその通りなのです。
 台湾が中国に支配されれば、そこから200海里の海域はNFZ(No Fly Zone:飛行禁止区域)となります。NFZは、友軍や民間機の航行を禁止区域で、ここに何らかの飛翔体があれば、それはすべて敵のものと認識して、ミサイル迎撃を行うわけです。この200海里というのがミソで、台湾から200海里だと沖縄は入りませんが、宮古列島尖閣諸島八重山列島などの先島諸島がすべて入ります。日本の領土、領空が戦闘を想定した有事状態に置かれるわけですから、戦争に準じた状況というわけです。
 しかし、「台湾有事は日本有事」はそれだけの話ではありません。台湾が本当に攻略された場合、人民解放軍の空軍と海軍が台湾に常駐することになります。これは非常にまずいことです。なぜかと言えば、日本のシーレーンを自由に操られてしまうためです。実際にこれをやられたら、日本は本当に中国の属国にならざるを得ないでしょう。なにしろ、経済的に立ち行かなくなるわけですから。