じじぃの「トランプ・どうしてこんな人物が大統領になったのか?ディープフェイク」

President Trump Suggests ‘Injecting’ Disinfectant as Coronavirus Cure | NBC New York

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=zicGxU5MfwE

トランプ大統領 「消毒液を注射すれば」

消毒剤の大手メーカー、飲むな危険と警告 トランプ氏は発言は「皮肉だった」と

2020年4月25日 BBC NEWS
ドナルド・トランプ米大統領新型コロナウイルス治療として消毒剤を注射するのはどうだと記者会見で言及したことに対し、消毒製品の大手メーカーは危険なので「絶対に」体内に入れないよう呼びかけた。
https://www.bbc.com/japanese/52422234

『ディープフェイク ニセ情報の拡散者たち』

ニーナ・シック/著、片山美佳子/訳 ナショナル ジオグラフィック 2021年発行

第3章 米国が占う西側諸国の未来 より

ドナルド・トランプ大統領が記者会見に臨んでいる。米国は、世界各国と同じように、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)により、第二次世界大戦以来の深刻な危機にあえいでいる。何十億もの人々が都市封鎖の状況下におかれ、ウイルスの拡散を防ぐためにソーシャルディスタンスを取るように求められている。そして世界経済が危機に瀕する中、ワクチン開発を進める科学者たちが時間との戦いを強いられている。
そんな中、「自由主義世界のリーダー」である大統領が、新型コロナウイルスに有効な治療法について問われている場面だ。公衆衛生の専門家で、新型コロナウイルス感染症特別対策本部のアドバイザーのデボラ・L・バークス博士が同席している。トランプはバークスをちらりと見て話し始めた。「紫外線か非常に強い光を体に大量に当ててみるのはどうだろう」。そしてバークスに向かって、「まだ試してはいないがやってみると言いましたよね」と話しかけると、くるりと記者の方に向き直った。「それから、この目で見たが、消毒液もあっという間にウイルスをやっつける。たった1分だ。ならば消毒液を注射するとか、一掃するようなやり方があるんじゃないだろうか」。彼は素早くバークスに目をやった。そして自分の顔を指さし、「医者でなくても、私は良いことを思いつくんだ」と続けた。
これはフィクションではない。2020年の米国で実際にあったことだ。大統領が記者会見で、「消毒液を注射すれば」、今世紀の世界を未曽有の危機に追い込んでいる感染症を治せると述べたのだ。だがトランプのこういった言動にはもう驚かない。むしろよくあることだ。トランプ政権の場合、こんなことは日常茶飯事なのだ。自由主義世界のリーダーが堂々と世界に向けて、明らかな嘘やデマなど有害な情報を発信しているのだ。嘘をついたり、誤解を招く発言したりする政治家は多いが、トランプの場合は党派に関係なく誰がどう見ても度を越えている。自由民主主義の根幹にある、客観性、理性、真実を重んじる西洋の啓蒙思想を根絶する彼の姿勢は、インフォカリプス(情報の終焉)においてとりわけ危険だ。

いったいどうして、こんな人物が大統領になってしまったのだろうか。

アジェンダの設定

「転換点」が見る見る迫っていることを示す第2の指標は、大統領が非常に多くの有害な情報を積極的に拡散しているという事実だ。トランプは「アジェンダ設定機能」によって情報空間が支配している。国家は通常、公の場でよく議論されることほど重要だと考えるため、事実上、情報のルートであるマスメディアが「アジェンダ(議題)を設定する力」を持つとされる。ところが2015年に大統領候補になったトランプは、アジェンダ設定機能の在り方を一変させた。マスメディアにアジェンダを設定させず、伝統的なマスメディアを操って、自分自身がアジェンダを設定するのだ。それを実現する1つの手段として、マスメディアがトランプのことを報道せざるを得ないようなシナリオを作った。写真映えするトランプファミリーを伴い、トランプタワーのエスカレーターを降りて選挙運動を開始した瞬間した瞬間から、メキシコ人を「レイピスト」と呼び、「中国をやっつける」と約束した。私たちは皆、完全に彼に踊らされていたのだ。
ニュースを思い通りに操り始めたトランプ大統領は、誤情報とニセ情報を流し放題だった。
    ・
トランプのツイッターアカウントは毎日あわただしく稼働していた。米国のケンタッキー州からスーダンの首都ハルツームまで、世界のどこにいてもほぼ毎時間更新されるトランプのツイートやリツイートを読むことができる。その内容は、煽動的で乱暴で厚かましい。真っ赤な嘘であることも多い。もちろん一言一言が、ショーマンシップにあふれている。例えば自分自身を「真の天才!」と称賛したツイートや、イランのハサン・ロウハニ大統領を攻撃したツイートにそれが見て取れる。
  断じて、2度と米国を脅かすな。さもないと、おまえは歴史上まれに見る悲惨な出来事を経験することになる。我々はもはや、おまえの常軌を逸した暴力と死の言葉を黙って聞いているような国ではない。気をつけろ!
こんな風に芝居がかった雰囲気によって、内容の危険な本質が覆い隠されるとともに、正常な発言をしているように思わせてしまうのだ。トランプのツイートはすべて拡散される。彼はこれまでのリーダーが誰もしたことのない方法で、世界中の何千万人もの人々に自分の言葉を届けているのだ。情報の空間をトランプが完全に支配していることには、一種の検閲のような効果があるとする考え方もある。学者の世界で「雑音による検閲」と呼ばれる。古典的なニセ情報戦術だ。誰も把握しきれないほど空間を情報であふれさせ、混乱を生じさせて、注意をそらす。ロシアと同じく、トランプはこの戦術に長けている。