じじぃの「科学・地球_278_それはあくまで偶然です・ラッキーな地球」

Carl’s Message is Clear

Carl Sagan on How Humanity Would Transform if Advanced Extraterrestrials Contacted Earth

HighExistence
●Carl’s Message is Clear
Carl Sagan’s life was dedicated to the advancement and betterment of our species. Though he is perhaps thought of first as one who spent his life gazing outward, his writings reveal a strong commitment to humanitarian concerns.
https://highexistence.com/carl-sagan-on-what-would-happen-if-advanced-aliens-contacted-earth/

『それはあくまで偶然です 運と迷信の統計学

ジェフリー・S・ローゼンタール/著、石田基広、柴田裕之/訳 早川書房 2021年発行

第22章 運の支配者 より

宇宙の信じ難い豊かさには感動せずにはいられない。まばゆい星、美しい湖、風光明媚な山、青々と茂った木、可憐(かれん)な花、おいしい食べ物、エキゾチックな動物、すがすがしい空気、日光、など、など。そして何より、人間の驚異的な複雑さ。あまりに強烈な畏敬の念を覚えるので、たちまち疑問が湧いてくる。これらいっさいは、いったい何を意味するのか? いったいどこから現れたのか? すべては運だけによって生まれたのか? もし運ではなかったとしたら、何だというのか?
多くの人にとって、その答えは神だ。世界の8割以上の人が信仰を持っていると推定されている。

ラッキーな地球?

神が存在しているとか、何かの外部の要因が地球上の生命を誕生させたとかいったことの明らかな証拠がたとえなかったとしても、私たちの素晴らしい惑星と種がたんに運とさまざまな科学的プロセスだけによって生じたと信じるのは、多くの人にとって依然として難しい。運の罠を理解していれば、少しは助けになるだろうか?
さて、「特大の的」はここにはない。私たちの惑星の山や湖、植物や動物、そしてとりわけ人間のきめ細かい美しさや複雑さ、精巧さを生み出すのが簡単だなどとは誰も言えない。ほかのどんな惑星も同じぐらいうまくやってのけたことだろうとは、誰も言えない。
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また、「偽りの報告」も「プラシーボ効果」も絡んでいない。私たち人間がここに存在して、この惑星で暮らし、食べたり、息をしたり、動いたり、考えたり、繁栄したりしていることは紛れもない。そこに疑問の余地も、議論の余地もありはしない。
とはいえ、一種の「隠れた助け」はある。すなわち、進化論が提供する巧妙で強力なメカニズムのおかげで、新しい種類の生命が生み出された。まず、世代が変わるあいだにいくつかの遺伝子がランダムに変異する。そして、変異した子孫は、もしその変異が有用でなければ死に絶え、有用であれば繁栄する。何百万年ものあいだに、一部の種が分かれ、環境にもっと適した、新しい異なる種が生まれる。今では進化を裏づける圧倒的な科学的証拠があり、私たちの惑星を知的生命体が暮らす現在の状態にするうえで、進化が絶対不可欠だったことは明らかだ。
それよりもなお重要な運の罠がある。それは「散弾銃効果」だ。この場合のさまざまな散弾とは何か? それはもちろん、生命が進化しえたさまざまな惑星のいっさいだ。

カール・セーガンは、私たちの宇宙を形成している何十億もの銀河や、そのそれぞれに含まれる何十億もの恒星について、有名な講義をした。

それ以後、恒星の推定数は増える一方で、実際、無限でさえあるかもしれない。私たちは、これらの恒星全部の周りをいったいいくつの惑星が回っているか知らないけれど、すでに何千もの惑星が発見されているので、何十億の何十億倍もの――あるいは、ひょっとすると無数の――惑星も存在することはまず間違いない。だから、私たちの惑星で知的生命体が進化したという事実について考えるときには、いくつかのうちの1つの惑星で、と問う必要がある。それほど厖大な数の惑星があるのだから、そのうちの1つが生命を進化させたところで、少なくともそれほど意外ではなくなる。
こうして科学的な説明をし、運の罠を考慮に入れれば、私たちの素晴らしい惑星と驚くべき種が、進化とランダム性と正真正銘の運の組み合わせからほんとうに生じてきたのだと、私の脳を説得するのには十分だ。私たちは、人間には価値があるという世俗的ヒューマニズムの直接的な信念から、、そして、思いやりや、愛、敬意、大志といった正真正銘の人間の情動を通して、宗教をまったく必要とすることなく道徳的に行動したり、人生に意味と喜びを見つけたりできると、私は信じている。だからこそ、私自身は神を信じていない。ただし、神を信じる人を、間違いなく尊重するけれど。
とはいえ、心の奥底ではどうなのか? それがまあ、心の奥底では、私たちがここに存在していることを、相変わらずほんとうに信じることができずにいる。

用語集

本書で使った語句の一部の意味を簡単にまとめておく。

特大の的

ある効果が、じつは当初思われていたよりもはるかに達成しやすいとき。

隠れた助け

何かしら明白でない要因があり、それがないときよりも、ある効果が表れる可能性を非常に高めるとき。

プラシーボ効果

観察結果が心理的要因の影響を受けているとき。

散弾銃効果

似た効果を達成しうる、異なる方法が多くあったとき。