じじぃの「マルチモ-ダル生体認証・NEC・誤認率100億分の1を達成!顔認証の教科書」

NECの顔認証、記者が試してみた 21年前の写真に…

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=_B56LhFmXMM

マルチモーダル生体認証端末の特長

NEC、世界最高水準の精度を有する非接触によるマルチモーダル生体認証端末を開発

2020年5月14日 NEC
NECは、生体認証「Bio-IDiom」の中核技術であり、世界的権威のある米国国立標準技術研究所が実施した認証技術のベンチマークテストで世界No.1となった顔認証技術と虹彩認証技術を組み込んだマルチモーダル生体認証端末を開発しました。
これにより、さまざまな利用環境や利用者に対して、常に安定した高い認証精度と誰もが使いやすい利便性を提供します。
●マルチモーダル生体認証端末の特長
他人受入率100億分の1以下を実現する高精度な認証。
顔認証と虹彩認証それぞれの照合結果を統合して判断するNEC独自開発のアルゴリズムにより、他人受入率100億分の1以下を実現する認証が可能になります。顔情報と左右の目で異なる虹彩情報の3つの特徴を用いて認証を行うことで、高い精度での認証を実現しました。
https://jpn.nec.com/press/202005/20200514_01.html

『顔認証の教科書 明日のビジネスを創る最先端AIの世界』

今岡仁/著 プレジデント社 2021年発行

第4章 顔認証技術で変わる世界 より

第3章で説明したように、私たちはNIST(米国国立標準技術研究所)のコンテストで世界ナンバー1を連続で獲得するなど、圧倒的に優れた顔認証技術の開発を進めてきました。ナンバー1であること自体はうれしいですが、先にも書いたとおり、開発者として「その技術を社会にどう還元するのか」「世の中にどのように進歩・変革をもたらすのか」についてのビジョンを描くことができないのであれば、意味はあまりありません。
顔認証のベースとなる技術は、顔認識です。まずは顔を認識して、そこから見つけ出した特徴をもとに、本人かどうかを確認することに応用すれば、それは顔認証です。本書のテーマでもある顔認証は顔認識の最も大きな応用例です。もちろん顔を認識したうえで、他の用途にも応用できるため、この技術はまだまだ広がっていくと考えられます。
ここでは、私たちの顔認証技術が実際に社会のどのような場面で使われているのかについて紹介します。それがヒントになって、また社会における新たな用途や可能性が見えてくるかもしれません。

――オリンピック史上初、全会場で選手らの入場に顔認証活用

2021年夏、コロナ禍による1年の延期の末に東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)が開催されました。
オリンピック・パラリンピックでは、選手・関係者はアクレディテーションカード(資格認定証)というIDカードをいつも携行しています。過去の大会では、入場ゲートで警備員にIDカードを見せ、警備員がIDカードの写真を頼りに、目視で1人ずつの本人確認をしていました。
しかし、東京2020大会は、さまざまな競技会場を1ヵ所に集めたオリンピックパーク方式ではなく、各地に競技会場を分散させる方式を採用したため、会場ごとに選手・関係者の入場時にセキュリティチェックが必要となります。猛暑の中、選手らを入口で長時間待たせることなく、スムーズに、しかも厳格に入場させることが大きな課題でした。
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実はオリンピックへの顔認証活用は、最初からうまくいったわけではありません。どの世界でもそうですが、これまでうまくいっていた仕組みを変えて、新しい仕組みを活用してもらうのは容易ではありません。NECが活用を働きかけはじめた2015年当時、顔認証技術に対する世の中の認知度はまだ低く、活用を提案するだけでも相当苦労しました。
そこでNECは、「顔認証が使われて当たり前と思われるくらいの世論・風潮を生み出すのが先」と考えました。それから機会を見つけては、ラグビーワールドカップ、オリンピック・パラリンピックリオデジャネイロ大会のジャパンハウスなどのイベントに顔認証を納入するなど、地道に実績を重ねてきました。その甲斐あって、2016年オリンピック・パラリンピックのブラジル・リオデジャネイロ大会では、日本選手の記者会見に使われる施設で、報道関係者の顔認証システムとしても使われました。
こうした大会での入場で顔認証技術を活用する場合、重要なのは認証の精度だけではありません。ゲートを通るのは、身長2メートルを超える大柄な選手もいれば、車椅子の選手もいます。選手ごとにいちいちカメラの向きや高さを調整している時間はありません。ゲートで滞留することなく、まるで駅の自動改札のようにすいすいと通り、それでいて資格外の人は確実に阻止しなければなりません。
この一連の流れの中で、選手1人の顔認証に割ける時間はわずかなものです。
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実際の現場では、単に認証精度だけでなく、そのような総合的な処理量を上げることが極めて重要です。もちろん処理人数だけを増やしたいのなら、精度を甘くすればいいのですが、その結果、誰でも通してしまってはゲートにならず、本末転倒です。そこで精度と速度のせめぎ合いになります。厳密さと迅速さが同時に求められるシステムなのです。

――誤認率100億分の1を達成した究極の組み合わせ「顔認証x虹彩認証」

私たちはNISTでの戦いを通じて圧倒的な精度の顔認証技術を開発してきました。しかし、さらに上を目指すための一環として、顔だけでなく複数の生体認証を組み合わせるマルチモ-ダル生体認証の可能性を追求しています。特に力を入れているのが、顔と虹彩のマルチモ-ダル生体認証です。
なぜ顔認証と虹彩認証を組み合わせるかといえば、虹彩は顔の一部であるため、顔をカメラに向けるだけで、顔と虹彩が同時に撮影できるからです。顔を向けるという一瞬の動作のみでマルチモ-ダル生体認証(ここでは顔と虹彩)ができるという点では、他の生体認証では実現できない非常に相性の良い組み合わせと言えます。
顔認証と虹彩認証を組み合わせると、認証精度は実に100億分の1の誤認率(他人受入率)になります。つまり100億人に1人誤る程度の圧倒的な高精度です。言い換えれば、全世界の人口は2021年現在で78億人ほどですから、世界の全人口をカバーし、確実に見分ける究極の生体認証と言えます。
厳格な本人確認が可能ですから、金融決済や医療現場にも対応できます。しかし、そのような認証に使われる装置は、前ページの写真のように非常にコンパクトなものです。利用者はこの装置のカメラを見るだけで済みます。装置が顔を検出し、まず顔画像はこれまでも顔認証の技術で解説してきたように、特徴点を抽出して照合します。
その一方で、虹彩の処理も実行されます。カメラの向きを自動制御して目を検出し、焦点や明るさを自動調整して虹彩画像を取得し、顔と同様に、虹彩の特徴点を抽出して照合します。そして、顔の認証結果と虹彩の認証結果を総合し、本人かどうかを判定します。この一連の処理にかかる時間は、わずか2秒です。この顔・虹彩マルチモ-ダル生体認証は、マスクや帽子などを着用していても高い精度で認証が可能なうえ、利用者が装置に触れる必要がないので、衛生面の不安もありません。
「誤認率100億分の1」という圧倒的な高精度、顔を向けるだけの非接触という特徴は、データセンターなど極めて高いセキュリティ管理が求められる施設のほか、衛生面の配慮が必要な食品・医薬品の製造施設、クリーンルーム、医療現場の入退室をはじめ、多用な用途に適しています。