じじぃの「科学・地球_103_学者の暴走・世界の学問の危機・米国左傾化の背景」

特別編「バーニー・サンダース支持の若者たち」未来世紀ジパング 番外編(2016.2.15)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=IBrDRAGeKzU

「平服のバーニー」が人気 大統領就任式での写真話題に―米

2021年2月1日 時事ドットコム
米急進リベラル派の重鎮バーニー・サンダース上院議員(79)が20日のバイデン大統領就任式で着用した防寒着が、その素朴さからインターネット上で大きな反響を呼んでいる。
関連商品が飛ぶように売れ、米メディアによれば、売り上げの一部に当たる180万ドル(約1億9000万円)が、サンダース氏の地元バーモント州の慈善団体に寄付された。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021013000373&g=int

学者の暴走 (扶桑社新書

掛谷英紀
学者は本当に信用できるのか?
イデオロギー」「金銭(利権)」「同調圧力」によってウソをつく学者たち。そして新型コロナウイルスでは学者の罪が疑われている。倫理感なく突き進む学者の実態に警鐘を鳴らし、学術界の悪の正体を暴く!
第1章 新型コロナウイルスと悪魔の科学
第2章 科学とは何か
第3章 日本の科学の弱点

第4章 世界の学問の危機

第5章 学問の再建に向けて

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『学者の暴走』

掛谷英紀/著 扶桑社新書 2021年発行

第4章 世界の学問の危機

4 ポスト・モダン思想の影響

米国左傾化の背景

おそらく、多くの日本人にとって、米国は反共産主義の国との印象が強いはずだ。第二次世界大戦後は、マッカーシーによる赤狩りがあり、その後冷戦が終結するまで、米国はソ連をはじめとする共産主義陣営と対峙した。しかし、米国が常に共産主義から自由だったわけではない。ヴェノナ文書が明らかにしているように、第二次世界大戦の前から、米国中枢部には多くの共産主義スパイが入り込んでいた。
現在の米国の左傾化は、冷戦終結がきっかけになっている。ソ連の崩壊により、米国人は油断した。フランシス・フクヤマの著書『歴史の終わり』に書かれた認識がそれを物語る。しかし、歴史は終わっていなかった。左翼は、この油断の隙を利用して、学校、メディアなどに深く浸透していった。
今、米国で20歳前後から30代半ばまでの若者は、2000年頃に生まれたか少年期を過ごしていることから、ミレニアル世代と呼ばれている。彼らは、冷戦後の学校やメディアの左傾化による影響を影響を強く受けて育っている。そのため、ミレニアル世代には、バーニー・サンダースアレクサンドリア・オカシオ・コルテスのような、民主党の中でも社会主義者と呼ばれる極端に左寄りの政治家を熱狂的に支持する人が多い。アレクサンドリア・オカシオ・コルテス自身もミレニアル世代である。
ある意味で、日本は今アメリカで起きていることを半世紀先取りしていたといえる。GHQの内部に共産主義工作員が大量に入り込んでいたことは知られているが、彼らが左翼イデオロギー性で染めた学校やメディアが、団塊の世代左傾化を実現した。米国におけるミレニアル世代の左傾化と構造は同じである。
左翼は学校やメディアだけでなく、法曹界や研究機構にも入り込む。これも、日本だけでなく世界に共通して見られる現象である。前述の通り、左翼活動家は過大な要求と自己評価を持つがゆえに、それを受け入れない社会を憎むという構図がある。そういう人には、協調性を要求される一般の仕事は務まらない。結果として、協調性があまり必要とされず、社会的地位も高く自己承認欲求が満たされるマスコミ、大学、法曹界などに集まる。これらの職業は社会的影響力も強いので、左翼イデオロギーを広めるにも好都合である。
今の米国の左翼は、米国および西洋のあらゆる伝統文化の否定を意図している。南北戦争の南軍の将軍の銅像を撤去しようとした話は日本でも知られているだろう。しかし。彼らの主張はそれに留まらない。米国初代大統領のワシントンや第3代大統領のジェファーソンは奴隷を所有していたから、その名前のつくものは改名すべきだという主張から、シェイクスピアは白人作家だからその作品を教えるべきではないといったものまで、数々の極論が繰り広げられている。中には、数学は差別的な科目なので、ジェンダー論とあわせて教えなければならないといった珍理論まである。
こういう極端な左翼運動に真っ向から意義を唱えている米国の保守論客が前述のベン・シャピーロである。彼のモットーは”Facts Don't Care About Your Feelings”(感情で事実は変えられない)である。左翼運動は、自分の感情が全てで、気に入らない事実は捻じ曲げたり、意図的に無視したちする。彼はそういう左翼の姿勢を厳しく批判する論客の一人である。では、「感情で事実は変えられる」という今の左翼思想の源泉は何か。その背景にあるのがサルトル流の実存主義と、その流れを汲むポスト・モダン(「近代(モダン 20世紀中ばから後半)以後」を意味する言葉)思想である。

フェミニズムとポスト・モダン

前述の通り、共産主義マルクス主義)とポスト・モダンは、科学技術を基礎とする近代化された産業社会が資本主義という経済システムのもと動いているという点で、共闘できる関係にある。では、フェミニズム共産主義、およびポスト・モダンとの関係はどうなっているだろうか。
まず、フェミニズム共産主義の関係を考えてみる。共産主義は、「労働者」対「労働者から搾取する資本家」という図式を基本としている。これと同様に、男女関係を「女性」対「女性から搾取する男性」という図式で見るのがマルクス主義フェミニズムで、本書で何度か紹介した上野千鶴子はこの視点に立っている。
共産主義が労働者と資本家という図式で考えるのと同様に、ポスト・モダン思想は、脱近代を議論する上で、1つの雛形を持っている。それが脱構築という考え方である。つまり、近代の中で固定化され今では当然と思われている概念を、近代の構築物(創造物)にすぎないとして脱構築(簡単に言うと破壊)し、理想のシステムを再構築するというわけである。このポスト・モダン思想がフェミニズムと結びつくと、男性・女性といった概念自体を脱構築するというジェンダー・フリー思想につながる。世界のジェンダー学の中心人物の一人であるジュディス・バトラーはこの種の議論を展開している。
しかし、ポスト・モダンの脱構築の考え方は、脱構築する対象の選択について、非常に強い恣意性がある。バトラーの男女の概念の脱構築にしても、議論の中で搾取や権力といった概念は固定化されていて脱構築の対象にならない。しかし、人間関係を考えるとき、全てを権力や搾取といった見方で論じることができるかどうかは極めて疑わしい。カナダの心理学者ジョーダン・ピーターソンも、フェミニストは能力を尺度とした評価を全て権力の問題にすり替え、それを全て家父長制のせいにして自分の要求を通すように迫ると批判している。