じじぃの「科学・地球_97_学者の暴走・新型コロナウイルス・データベースからデータの削除」

中国 コロナ遺伝子データを削除 米 国立衛生研究所 (2021年6月25日)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=lhdQYqVLWWQ

中国のコロナ遺伝子データ、米で削除 中国研究者の要請

中国のコロナ遺伝子データ、米で削除 中国研究者の要請

コロナ起源の解明に影響も
2021年6月24日  WSJ
中国の研究者が、新型コロナウイルス流行初期の遺伝子配列に関するデータを米国立衛生研究所(NIH)が管理する主要な科学データベースから削除するよう要請していたことが分かった。
コロナの起源について調査している科学者からは、重要データへのアクセスが限られる恐れがあるとして懸念の声が上がっている。
NIHは、中国の研究者から3ヵ月前に提出したデータを削除してほしいとの要請を受けて、遺伝子データを削除したことを確認した。「データを提出した研究者がデータの権利を所有しており、データの撤回を要請できる」としている。
https://jp.wsj.com/articles/chinese-covid-19-gene-data-that-could-have-aided-pandemic-research-removed-from-nih-database-11624496023

学者の暴走 (扶桑社新書

掛谷英紀
学者は本当に信用できるのか?
イデオロギー」「金銭(利権)」「同調圧力」によってウソをつく学者たち。そして新型コロナウイルスでは学者の罪が疑われている。倫理感なく突き進む学者の実態に警鐘を鳴らし、学術界の悪の正体を暴く!

第1章 新型コロナウイルスと悪魔の科学

第2章 科学とは何か
第3章 日本の科学の弱点
第4章 世界の学問の危機
第5章 学問の再建に向けて

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『学者の暴走』

掛谷英紀/著 扶桑社新書 2021年発行

第1章 新型コロナウイルスと悪魔の科学 より

4 あまりに危険な科学者たち

世界中で行われている危険な研究

2012年、生物学の世界を震撼させた1つの研究が行なわれた。鳥インフルエンザウイルス(H1N1とH5N1)を人工的に強毒化する機能獲得研究が行なわれたのである。この研究は、それを実施することの是非もさることながら、その研究成果を論文に公表してよいのかという論争にもなった。その知識がテロリストに利用されうるからである。
鳥インフルエンザウイルスの機能獲得研究は、2つの研究グループが相次いで発表したが、そのうちの最初の研究を実施したのは日本人である。ウィスコンシン大学マディソン校および東京大学医科研究所に属する河岡義裕の研究チームは、赤血球凝集素の型の1つであるH5と、鳥インフルエンザウイルスH1N1由来の遺伝子群とを組み合わせたウイルスを作成し、フェレット(哺乳類)の間で飛沫感染させることに成功した。続いて、オランダ・エラスムス医療センターのロン・フーシェ(Ron Fouchier)の研究チームも、鳥インフルエンザウイルスH5N1を哺乳類に感染できるようにする適応実験の結果を報告した。これらに対し。米国のバイオセキュリティーに関する国家科学諮問委員会(NSABB)が、安全上の懸念から、手順などの詳細情報を差し控えて公表すべきだとする勧告を出したのである。
この種の危険な研究に対しては、生物学者の中からも批判があった。フランス。パスツール研究所のウイルス学者サイモン・ウェイン・ホブソン(Simon Wain-Hobson)や、米国・ラトガース大学の分子生物学リチャード・エブライト(Richard Ebright)などは、危険な機能獲得研究に対して厳しい批判をした学者として知られる。2013年には欧州の研究者が50人以上が、欧州委員会に対し、危険な研究について話し合いの機会を設けるように呼びかけた。ところが、日本ではそうした目立った動きはなかった。
日本人研究者が危険な機能獲得研究を先駆けて行ったのに、それが日本ではほとんど問題視されてこなかったことは、日本の一研究者として私自身も大いに反省すべきだと思っている)。

癒着する学者たち

WHOの調査団として米国から参加したのはピーター・ダシャック(Perter Daszak)という人物である。彼は、ウイルス学者として武漢ウイルス研究所の石正麗らと共同研究を行ってきたことで知られる。その意味で、彼には武漢ウイルス研究所を査察する上で明らかな利益相反がある。彼の立場からすれば、ウイルスが研究所から漏れたということになれば、これまでのように中国の研究所を利用して機能獲得研究を続けることができなくなる。研究予算もとれなくなり、論文も書けなくなる。研究者として厳しい立場に追い込まれる。その状況で、公平な査察を行うことは全く期待できない、

なぜ研究者たちは沈黙するのか

昨今、相次ぐ研究不正により、研究活動に関する管理は厳しくなっている。インフォームド・コンセントの徹底、利益相反の明示、データの保管・開示義務など、細かなルールが日に日に増えており、研究者の事務的負担も大きくなっている。その一方で、新型コロナウイルス問題で中国のやっていることを、これらの決まりごとに明確に反していることが多数ある。にもかかわらず、それを表立って批判する学者は少ない。
前述の通り、ダシャックがWHOの調査団の一員として参加することは明らかに利益相反がある。また、武漢のウイルス研究所が管理するウイルスのデータベースを非公開にし、続けている。これはデータの開示義務に明らかに反する。では、なぜ研究者たちはこうした問題に直面しても黙り続けるのか。
1つ大きな理由として、相手が大きすぎるときには怯(ひる)むという学歴エリートにしばしばみられる習性が挙げられる。エリートは、中国政府のような声が大きい人の恫喝に慣れていない。逆にそういう習性を中国政府に見透かされている部分はあるだろう。
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また、研究倫理に関する著書もあり、倫理問題に関してしばしば発言するツイッターで私と相互フォローの学者が、日本政府が新型コロナ対策で議事録を残していない隠蔽体質を批判したとき、それを批判するなら中国が武漢での研究活動のデータを一切公開しない隠蔽体質も批判すべきではないかとの問いを投げかけたが、反応は全くなかった。このように、日本の学者は相手が日本政府のように何の圧力も加えてこないとわかっている相手ならば批判できるが、相手が中国となると全く批判する勇気がないのである。
ここで誤解がないように言っておくが、中国が恐怖政治を行っていることと、新型コロナウイルスが中国の研究所から漏れたかどうかという事実に関する判断は全く独立した問題である。この点は重要なので、強調してもしすぎることはない。中国がいかに野蛮な国であっても、新型コロナウイルスの起源が天然であるということはありうる。しかし、それを正しく客観的に判断するためには、中国がデータを公開して、公正な査察を受け入れる必要がある。客観的判断をすることこそが科学者の役割のはずだが、それをさせない中国を批判できない科学者は、科学者としての自覚に欠けると批判されてもしかたないだろう。