じじぃの「科学・地球_79_水の世界ハンドブック・地下の水資源・サウジアラビア」

Saudi Arabia's Water Problem

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=yhrIUOxp_8M

Saudi Arabia's Great Thirst

National Geographic
●Farming the Desert
There are no rivers or lakes or areas of abundant natural vegetation because rainfall is scant to non-existent.
Over the centuries, through oases and then desalination plants, the Saudi people have found enough water to support their daily lives. But a relatively recent national effort has brought changes to the desert and created much greater demands for water resources. Zooming in on certain areas shows that there are indeed regions of intense greenery that nature did not create.
https://www.nationalgeographic.com/environment/article/saudi-arabia-water-use

『地図とデータで見る水の世界ハンドブック』

ダヴィド・ブランション/著、吉田春美/訳 原書房 2021年発行

6 はじめに より

水問題はいたってシンプルである。世界で6億人以上の人々が飲料水にアクセスできず、世界の農業生産の40パーセントが灌漑農業に依存している。
水辺の生態系は自然のプロセスに欠くことのできない役割を果たしているにもかかわらず、きわめて脆弱である、ということである。

75 脅かされる資源 より

84 地下水の乱開発

地下の水資源についてはまだほとんどわかっておらず、無尽蔵と思われていたため、過剰な開発が行われてきた。地下水のくみ上げが年間に再生される分を上回らなければ、持続可能な開発といえる。
だが、それはしばしば持続可能でない利用となり、とりわけ乾燥地帯の新しい灌漑区域では、資源が枯渇しようとしている。サウジアラビアのように、水資源が「鉱山」のように開発されている地域もある。また、地下水は清浄だという神話もある。水質の悪化はあまり人目につかないが、多くの地下水がこんにち汚染されている。ゆっくりと進行するこの現象については、まだよくわからない点も多いが、のちの世代にとって時間とコストのかかる、解決の困難な問題となるだろう。

乱開発される資源

地下水は河川のように干し上がってしまうことはないが、地下水が過剰に開発されている形跡を世界中いたるところで見ることができる。地下水の「天井」が下がり、しだいに深いところからくみ上げなければならないのである。それはときに惨憺たる結果をもたらす。メキシコでは、この50年間に地下水位が数メートル下がり、地盤沈下によって多くの建物が傾いた。アメリカのオガララ帯水層では、水位の低下が場所によって30メートルに達している。
地下水が涸れると、そこから水の供給を受けていた泉が涸れ、海岸付近では「塩水くさび[海水が遡上して河川や帯水層の基底部に塩分濃度の高い層をつくる現象]」により、井戸を掘削しても飲用に適さなくなる。地下水に大きく依存している北アフリカ西アジアの国々が、まさにそのような状況にある。中国北部の平野のように、地下水が急激に涸れたため、あらゆる水の使用、とりわけ伝統農業の水の使用が見なおしをせまられているところもある。

サハラ砂漠の水――持続可能な解決策?

アルジェリアからサウジアラビアにかけて広がる砂漠地帯では、大量の化石水[太古の地層堆積時に封じこめられた水循環から切り離された水]が発見されて以来、農業がめざましく発展した。
円盤形をしていることでそれとわかる現代的な灌漑区域が、あちこちにつくられている。サハラ砂漠がいまより湿潤だったときに形成されたこの水資源は、事実上、再生されることはない。南サハラ帯水層の場合、その水系は100万平方キロメートル以上に広がり、30兆立方メートル以上の水がたくわえられている。
サウジアラビアのように地下の水資源がそれほど豊かでないところでは、農業用の化石水の開発が限界に達しているようである。水資源が物理的に枯渇し、コストが上昇しているからである。深いところからくみ上げれば、それだけコストもかかる。
この「鉱山開発型」農業は、オアシスの伝統農業が行なわれているところで深刻な社会問題をひき起こしている。大規模開発で地下水をくみ上げすぎ、従来の泉ヤ井戸が涸れてしまうのである。そのため、もっと深い井戸を掘るための資力をもたない農民たちは、農業をやめ、しばしば都市や外国に移住せざるをえなくなる。