じじぃの「科学・地球_31_世界史と化学・吹きガラスの発明・光ファイバー」

アウクスブルク 大聖堂のステンドグラス

ガラスの起源は古代メソポタミア

ガラスの歴史は紀元前4000年の古代メソポタミア文明まで遡ります。
天然ガラスも存在したことや、石灰と砂など身近な材料で作れることもあって、古くから武器や陶器として活用されてきました。
出土品を見てみると、紀元前700年代にサルゴン2世の銘入りの壷が古い工芸品として知られています。
ガラスの歴史を見ながら工芸品・美術品の進化を見ていきましょう。
https://www.showashinzan-garasukan.jp/history.php

ダイヤモンド社 絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている 左巻健男(著)

【目次】
1  すべての物質は何からできているのか?
2  デモクリトスアインシュタインも原子を見つめた
3  万物をつくる元素と周期表
4  火の発見とエネルギー革命
5  世界でもっともおそろしい化学物質
6  カレーライスから見る食物の歴史
7  歴史を変えたビール、ワイン、蒸留酒
8  土器から「セラミックス」へ

9  都市の風景はガラスで一変する

10 金属が生み出した鉄器文明
11 金・銀への欲望が世界をグローバル化した
12 美しく染めよ
13 医学の革命と合成染料
14 麻薬・覚醒剤・タバコ
15 石油に浮かぶ文明
16 夢の物質の暗転
17 人類は火の薬を求める
18 化学兵器核兵器
https://www.diamond.co.jp/book/9784478112724.html

『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』

左巻健男/著 ダイヤモンド社 2021年発行

9 都市の風景はガラスで一変する より

吹きガラスの発明

紀元前1世紀頃に、吹きガラスが発明された。赤熱してどろっと融けたガラスに空気を吹き込んで冷やすと肉薄の球体になった。これで飲み物の器などをつくることができた。こうしてつくられたガラス製品が日常品として普及し始め、ローマ帝国内の透明なガラス器は、ローマングラスと呼ばれた。
また、中国の戦国時代(紀元前5世紀~紀元前3世紀)の墓からは、多量のガラスの器や丸いガラス玉が出土している。その後、漢代(紀元前206~220)には鋳造ガラス、唐代(618~907)には吹きガラスがつくられた。日本には、漢代に中国から伝わり、弥生時代の遺跡から発見されたガラス玉が最古のものと推定される。
さて、5世紀頃にはカット技法が始まった。ローマングラスの技法を受け継いだのはサングラスだ。シルクロードを通ってササン朝ペルシャで製造されたこのグラスは、円形模様のカットに特色があり、正倉院にある白瑠璃碗はその1つである。
5~14世紀頃、ササングラスの技法を引き継いだのがイスラムグラスだ。新たな加工技法が進歩し、そのなかでも代表的なものがエナメル彩色を施した、エナメル技法である。

ガラス窓を実用化した中世ドイツ人

ローマ人は紀元前400年頃、はじめてガラスを窓用に加工した。しかし、温暖な地中海性気候の場所にあっては、ガラス窓は珍しいものに過ぎなかった。
ちなみに、窓は英語でウインドウという。これは「ウインド=風」と「オウ=のぞく、目」がもととなっている。北ヨーロッパでは、古代の家には、煙と汚れた空気の換気用として屋根の穴、すなわち「目」があった。風が吹き込むため、その穴は「風の目」と呼ばれた。やがて、イギリス人は、空気を入れるための開口部「風の目」にウインドウという言語をあてたのである。後に、窓(ウインドウ)にはガラスがはめられるようになった。
さて、紀元前1世紀頃、吹きガラスが発明され、質のよいガラス窓をつくることができるようになった。窓ガラスの製造を躍進させたのは、中世初期の寒いヨーロッパ北部の国ドイツだった。透明で防水性のあるガラス窓は、光を採り入れつつ雨風をしのげる優れものだった。
ガラス職人がガラス窓をつくる方法の1つが円筒法である。融かしたガラスを吹いて球体にして、それを前後に振って楕円の筒型にしてから縦に切り圧して平たい板にした。ガラス板は小さいものしかつくれなくても、鉛を使ってガラス板をつなぐと、大きなガラス窓になる。

さらに、釉薬で色づけをした色ガラスやステンドグラスの窓は、富と洗練さを表現する手段になり、教会建築に使われた。そして次第に教会から裕福な家へと広がり、もっと後になると一般にも使われるようになったのである。

インターネットを支える光ファイバー

現在のインターネットは上流が必ず光ファイバーにつながっている。情報通信を支える光ファイバーは、直径125マイクロメートルの細いガラスの糸が本体である。ガラスは二酸化ケイ素が主成分で、二酸化ゲルマニウムを添加して屈折率を高くしたコアが中心にある。コアは直径9マイクロメートル。情報を伝える光(近赤外線)はおもにコアを通る。
ガラスとコアは屈折率が異なるので、コアを通る光は境界面で全反射をくり返しながら進むようになっている。このため光を弱めることなく遠くまで伝えることができるのだ。
また、光ファイバーは、光を減衰させることなく遠くまで伝送できるように、非常に透明度の高い高純度の材料でできており、数本から数百本の光ファイバーを束ねて光ファイバーケーブルになっている。各家庭まで届いているケーブルには1本か2本の光ファイバーが入っており、基地局間は1000本もの光ファイバーを使った1000芯ケーブルが使われている。