じじぃの「科学・地球_13_繰り返す天変地異・シヴァ仮説」

The Oort Cloud | The Solar System's Shell

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=q4mc-alL92U

繰り返す天変地異 - 株式会社 化学同人

【内容説明】
1980年に発表された,巨大隕石による恐竜などの大量絶滅の仮説は,メキシコ・ユカタン半島で発見された6600万年前の巨大クレーターにより証明された。
本書は,この「新天変地異説」をさらに発展させ,地球の地質学的進化を宇宙・天体研究から論じる。地球は,彗星や隕石などの上からの衝撃と,火山の噴火などの下からの衝撃に晒されている。著者は,世界各地のクレーターや地質記録を訪れ,太陽系や銀河における地球の位置づけが,この惑星の地質学と生命史の理解に必要と説く。自身が提唱するシヴァ仮説を紹介し,ダークマターによる影響の可能性にも触れる。
https://www.kagakudojin.co.jp/book/b453865.html

45億年前、ごく初期の太陽は双子だったとする研究が発表。ネメシスが実在した可能性、しかし成長過程で崩壊か

2017年06月15日 Engadget 日本版
太古の地球を支配していた恐竜が絶滅したのは小惑星が地球に衝突したからだとする説があります。
この説を説明するために立てられたのがネメシスの仮説。この仮設では未発見の太陽の伴星ネメシスによるオールトの雲への影響が、小惑星を地球に向かわせるきっかけになったとされます。
https://japanese.engadget.com/jp-2017-06-15-45.html

『繰り返す天変地異 天体衝突と火山噴火に揺さぶられる地球の歴史』

マイケル・R・ランピーノ/著、小坂恵理/訳 化学同人 2019年発行

シヴァ仮説 彗星シャワーと銀河の回転木馬 より

もしもデイヴィッド・ラウプやジャック・セプコスキーが主張するように、大量絶滅は周期的に発生しているとしたら、その周期性を何が引き起こしているのかが大きな疑問として浮上する。1983年9月、大量絶滅に関してすでに複数のニュース雑誌で報道されている記事を、天体物理学者のリチャード・ストーサーズと私は興味深く読んだ。大量絶滅の周期性に関する公表前の論文のコピーをラウプから送られたあと、ストーサーズと私は大量絶滅を周期的に引き起こす原因の候補を探し始めていた。
ストーサーズは博学である。天体物理学者でありながら、古代の文献をオリジナルのラテン語ギリシャ語で読んで、古典古代の天気の変化、太陽黒点の観察、火山の噴火など自然事象に関する記録を見つけた。私たちはすでに共同で、古代の火山の噴火が大気や気候におよぼした影響に関する説明を編集していた。たとえばストーサーズは、気温が低かった紀元536年には「乾霧」が大量に発生して太陽光が遮断されたが、それは史上最大級の火山の噴火の結果であることを発見した。一部のライターは、その年に大気がきわめて不安定だったのは天体の衝突が原因だった可能性さえ指摘している。
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クレーターの年代に関するストーサーズの統計的分析から、データセットに含まれる天体衝突には周期性があるという確信を私たちは強めた。では、天体はどこからやって来るのだろう。それにはふたつの可能性が考えられる。ひとつは、火星と木星の軌道のあいだに位置する小惑星帯から飛来してきて、地球の軌道を横切る小惑星。もうひつとはそれより遠く、太陽系を取り巻いているオールト雲から飛来してきた氷の塊、すなわち彗星が衝突した可能性だ。ただし、小惑星帯は力学的に安定しているので、そこからたくさんの小惑星が周期的に地球に向かってくるとは考えにくい。そうなると残りの葉はオールト雲の彗星で、実際に何兆個もの彗星がそこには存在している。私はストーサーズから、ロスアラモス国立研究所天文学者ジャック・ヒルズが行った計算について聞かされた。それによると、近くを通過する星によって重力摂動が引き起こされると、結合の緩いオールト雲の彗星は揺さぶられる可能性がある。その結果、大量の彗星が内部太陽系に放り出されて彗星シャワーが発生し、その一部が地球に衝突するのだ。ヒルズは、彗星シャワーが恐竜の絶滅の原因だったのではないかとも推測している。
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私たちは念のため、ほかの天文周期、すなわち太陽の伴星[訳注:オールト雲に存在に存在すると仮定される。メネシスと呼ばれる恒星]や周回中の惑星がオールト雲に近づく周期などに関しても、天体衝突の原因である可能性を考えた。しかしいずれも可能性はきわめて低く、その場しのごの感も否めず、結局は却下した。銀河との関連性についての確信は強まるばかりで、銀河面をはさんだ太陽系の上下運動と彗星シャワーの間には、何らかの関係があるとしか思えなかった。これほど素晴らしいアイデアが間違っているはずがない。しかし、これまでもサイクルを捜し求めて惑わされた人たちがいるのだから、まだ、大事な疑問に答えなければならない。すなわち、こうした動きのサイクルは、オールト雲の彗星の摂動にどのようにつながるのだろうか。
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もっとも最近になって2014年には、ハーバード大学の天体物理学者リサ・ランドールとマシュー・リースが、オールト雲で最大の重力摂動は、ダークマターという風変わりな物質で構成される目に見えない薄い円盤が発信源だという結論に達した。天文学者によれば、ダークマターとは、宇宙の全物質のおよそ85パーセントを占める物質である。意外にも、恒星や星雲や銀河のなかで目に見える物質は、全体のわずか15%にすぎない。
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私たちの論文が掲載された号の『ネイチャー』誌には、ジョン・マドックス編集長の社説と、イギリスの著名な地質学者アンソニー・ハラムによる「ニュース・アンド・ビューズ」での解説も掲載された。社説のなかでマドックスはプレプリントを配布して刊行前に情報をリリースすることに伴う問題について取り上げた。対照的にハラムは、ラウプとセプコスキーの結果が依存している地質年代尺度に焦点を当てた。何かほかの時間尺度が使われていたら(実際に当時は、若干異なる時間尺度がいくつか存在していた)、周期性は消滅する可能性を示唆している。しかしラウプとセプコスキーのがすでに示し、ストーサーズと私も確認しているように、いかなる地質年代尺度を利用しても2600万年の周期は存在している。時間尺度を変更すればわずかなランダム変化が生じるが、大量絶滅の時期はこうしたランダム変動に左右されないほど安定していた。
まさに最初から、これは報道機関にとって非常に興味深いテーマになることを私たちは認識していた。新聞やニュース雑誌で直ちに取り上げられただけでなく、『ディスカバー』誌のデニス・オーヴァーバイからは特集記事を組みたいと言うアプローチだあった。彼は私たちにインタビューしたあと、記事のなかで銀河振動仮説の基本について順を追って説明した。その一方、ネメシス仮説についても分析し、遠方の伴星に安定性を認めることには問題がある点を指摘している。そのあと、同じ年のうちに、天体衝突と大量絶滅にかんするストーリーは『タイム』誌の表紙を飾るまでになった。

私と教え子のブルース・ハガティは、仮説には名前が必要だと考え、シヴァ仮説と呼ぶことにした。破壊と再生をつかさどるヒンドゥー教の神にちんだ命名である。