Portrait de la photographe et ecrivaine Christine Spengler
LE BOMBARDEMENT DE PHNOM-PENH
『死ぬまでに観ておきたい 世界の写真 1001』
ポール・ロウ/著、小川浩一、竹村奈央、風早仁美/訳 実業之日本社 2019年発行
廃墟となったプノンペン より
クリスティーヌ・スペングレル
撮影年:1975年
撮影地:プノンペン、カンボジア
フォーマット:35mm
この途方もない、世界の終わりのような写真は、クリスティーヌ・スペングレル(1945~)のフォトジャーナリズムというものを示す見事な一例だ。
写っているのは共産主義勢力のクメール・ルージュが時の政権を打倒してカンボジアの首都プノンペンを軍事制圧され尽くしたときに、非現実的なまでに壊滅され尽くした街の様子である。スペングレルは世界的に認知された一握りの女性戦場カメラマンのひとりで、北アイルランドやベトナム、レバノン、アフガニスタン、イラクなどでの、大規模な紛争の多くを取材した。
彼女が好んだアプローチは、苦しみの原因となる残虐行為そのものではなく、苦しんでいる人々を強調するという手法だった。この目的のために、彼女は可能であれば、いつでも無垢な犠牲者たち、例外もあるが、たいていは女性や子供たちに焦点を当てた。
反乱者たちのリーダー、ポル・ポトは、ここに示されたクメール・ルージュの勝利の後、国家元首となり、「一の同志」を名乗った。彼は農村改革を通じて国は「原始」状態に戻すために、300万人に及ぶプノンペンの住民を農村へ強制移住させた。多くの老人、病人、そして子供たちがこの道のりの途中、道端で死んでいった。生存者たちは農業コミューンの中に置かれて重労働を強いられ、1日に17時間も働かされた。これらの元都市住民たちは多くが赤痢、栄養失調、マラリアといった病気で命を落とし、農村への移住に拒否した者はクメール・ルージュの兵士に連行だれ殺害された。
1979年にベトナム軍がポル・ポト政権を制圧するまでに、独裁者の非人道的な政権のもと、推定200万人のカンボジア人が虐殺、飢え、極度の疲労で死んでいった。