じじぃの「歴史・思想_394_地球に住めなくなる前に・結び・アルマ望遠鏡」

史上初 ブラックホール撮影に成功 画像を公開(19/04/11)

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=cWo1nC1CTu0

ブラックホール捉えた世界の望遠鏡 (2019.4.11)

宇宙の謎は?中性子星合体「重力波」初観測

2017年10月17日 日テレNEWS24
今年のノーベル物理学賞に選ばれたアメリカの重力波観測施設「LIGO」などの研究チームが、中性子星という非常に重い天体同士が合体した際に生じる時空のゆがみ、「重力波」を初めて観測したと発表した。
LIGO・ライツェ所長「何千人もの天文学者と多くの観測所と協力し、発見できた」 研究チームは今年8月、アメリカとヨーロッパの観測施設で、非常に重く高密度な天体である中性子星同士の合体で生じた「重力波」の観測に成功した。
これを受けて、日本の国立天文台などが重力波がやってきた方角を望遠鏡で観測したところ、中性子星の合体で生じた光や電磁波を捉えることに成功した。
こうした観測データなどを分析することで、金やプラチナなどの鉄より重い金属元素が宇宙でどのように生まれたかなどがわかるとみられている。
http://www.news24.jp/articles/2017/10/17/10375242.html

『私たちが、地球に住めなくなる前に 宇宙物理学者から見た人類の未来』

マーティン・リース/著、塩原通緒/訳 作品社 2019年発行

結び より

科学の営み

科学が進歩を積み重ねるには、新しいテクノロジーと新しい装置が必要だ。ただしもちろん、それを理論や洞察と共生させることが前提である。装置といっても種類といっても種類はさまざまで、「卓上」サイズのものもあれば、粒子加速器のように巨大なものもある。ジュネーブCERNにある直径9キロメートルの大型ハドロン衝突型加速器LHC)はその最高峰で、今のところ世界で最も精巧な科学装置でもある。これが2009年に完成したときは、熱狂的な大騒ぎが起こって広く世間の関心を呼んだものだが、同時に疑問も持ち上がった。原子核以下の物理などという一般人にはわけのわからない科学になぜそんなにも莫大な資金が投入されるのかという疑問は、たしかに理解できるものである。しかしながら、この科学の一分野には特別な点がある。多くの国から参加している素粒子物理の専門家たちが、1個の巨大な装置を建設して運用しようというヨーロッパ主導の共同事業に自ら進んで身を投じ、20年近くもの長きにわたって、持てるもののほとんどを提供してきたことである。イギリスを含めた参加国が負担する年間総額は、各国の科学予算の合計の約2パーセントにしかならない。これほど挑戦的で基礎的な分野への割り当てとすれば、決して不釣り合いに多いとは思われない。自然の最も基本的な謎のいくつかを探ろう――そしてテクノロジーを限界まで高めよう――とする。この単一プロジェクトでの世界的な共同作業は、間違いなく私たちの文明が誇れるものである。

同様に、天文学の装置も今では多国籍コンソーシアムによって運営されており、そのうちのいくつかは真に世界規模のプロジェクトになっている。たとえばチリのアルマ望遠鏡(正式名称はアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)には、ヨーロッパ、アメリカ、日本からの参加がある。

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世界に豊かさが広まり、余暇が増えていく中で――さらにITのもたらす接続もあいまって――これからは何百万という高い教育を受けたアマチュアや「市民科学者」が、世界のどこにいても、かつてなく自由に自分の興味を追求できるようになるだろう。こうした傾向に後押しされて、第一線の研究者たちが伝統的な大学の研究室や公的な研究所の外で最先端の仕事を進めることも可能になるだろう。そうした道が増えてくれば、研究機関としての大学の牙城はしだいに崩れ、20世紀より前には一般的だった「独立科学者」の重要性が復活してくる。そしてうまくいけば、真に独創的なアイデァがますます花開けるようになるかもしれない。

社会における科学

テクノロジーの進歩にともなって、世界は徐々に、ほとんどの人が前の世代より安全に、長く、満足して生きられるところになってきた。この好ましい流れは今後も続くだろう。だが一方で、環境の悪化や、止めようのない気候変動や、先進テクノロジーの意図せぬ弊害が、これらの進歩にはついてまわる。今よりさらに人口が増え、エネルギーや資源の需要が高まって、テクノロジーでできることが多くなった世界では、いつ私たちの社会に深刻なつまずきが生じてもおかしくない。ことによると結果は大惨事となるだろう。
世の中はいまだに2種類の脅威があることを認めようとしない。それは私たちが集合的に生物圏に与えている損害と、今の相互接続された世界が個人や少数集団の引き起こす事故やテロにかつてなく弱くなっていることから生じる脅威だ。しかも今世紀には新しい特徴として、大惨事が全世界に波及するという可能性がある。ジャレド・ダイアモンドは著書の『文明崩壊』において、5つの異なる社会が崩壊や大惨事に遭遇した経験を詳述し、それと対照して現代のいくつかの社会の今後を展望している。しかし、それらは地球規模の出来事ではなかった。たとえば黒死病(ペスト)はオーストラリア大陸に到達していない。ところが今日のネットワーク化した世界では、経済崩壊やパンデミック、世界的な食料供給破綻などの結果から逃れられるところはどこにもないだろう。地球規模の脅威はほかにもある。たとえば核攻撃の応酬によるすさまじい火力が、いつまでも続く「核の冬」を引き起こしたら――。最悪の場合、銃らう位の作物は何年も育たなくなる(あるいは小惑星の衝突や巨大火山の噴火でも、同じことが起こりうる)。
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各国間の富の格差や幸福度の格差は、狭まる兆しをほとんど見せていない。だが、この格差がいつまでも解消されなければ、とめどない暴発のリスクが増大するだろう。不利を被っている人々が自分たちの窮状の不当さに気がつくからだ。いまや移動は容易になっている。外国移住への欲求がいよいよ高まれば、それを制御するには、より強硬な手段が必要になるだろう。しかし、伝統的な方法での直接的な資金移動を別にすれば、インターネット、およびそのあとを継ぐものにより、各種のサービスはもっと簡単に、世界のどこにでも提供されるようになるはずだ。教育や医療の充実ももっと広く行き渡るだろう。貧しい国の生活の質と雇用機会を向上させるために莫大な投資をするのは、裕福な国にとっても有益なことなのだ――それが不平不満を最小限に減らし、世界を「レベルアップ」することになるからである。