じじぃの「人の生きざま_760_レイナー・ワイス(物理学者・重力波)」

【日本ニュース】ノーベル物理学賞重力波」初観測 米の研究者3人に(2017/10/03) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ws4nVyTsjoI
gravitational waves

重力波からの電波を観測 (kajima.co.jp HPより)

アインシュタインも喜ぶ」物理学賞のレイナー・ワイス氏 トランプ大統領へ皮肉も 2017.10.4 09:13 産経ニュース
ブラックホールからの重力波を捉え、今年のノーベル物理学賞に決まったレイナー・ワイス氏(85)が3日、米マサチューセッツ工科大で記者会見し「信じられない。(重力波を予言した)アインシュタインが生きていたらきっと喜んでくれただろう」と語った。
日本の重力波望遠鏡「かぐら」について「とても先進的な技術を使っている。協力して観測したい」と期待を示した。
ワイス氏は、わずかな空間の伸び縮みを、光の干渉を使って検出する望遠鏡「LIGO(ライゴ)」を考案。研究の話となると大きな身ぶりを交え、早口でまくし立てた。「これからも望遠鏡の改善に取り組みたい。ノーベル賞(の騒ぎ)が妨げにならなければいいが」と会場を笑わせた。
http://www.sankei.com/world/news/171004/wor1710040022-n1.html
アインシュタインの望遠鏡―最新天文学で見る』 エヴァリン ゲイツ/著、野中香方子/翻訳 早川書房 2009年発行
重力波 より
アインシュタイン一般相対性理論は、静的な理論ではなく、宇宙を動的に描くものである。恒星、惑星、銀河といった天体は、時空を移動し、時空はそれに応じて移り変わる。また、水中に波を作れるように、時空に波を作ることもできる。重力波は、曲がったり隆起したりしながら光速で時空を伝わり、通過する何ものにも影響されることなく宇宙を進んでいく。時空そのものが、内包する物質の動きに揺さぶれている。
重力波の振幅は一般にきわめて小さく、発信源から遠くへ進むにつれて波の力は衰える。人間にとってはありがたいことで、そうでなければ、地球は遠方の発信源(たとえば、互いの周りをぐるぐる回っている2つのブラックホールなど)から重力波 によって揺さぶられ、大型のモーターボートの波を受ける小さないかだのように上下にあおられ続けるだろう。しかし、微弱であっても、重力波はいくらか検出できると考えられている。
宇宙はインフレーションのほかにも、さまざまな発信源からの重力波に満ちている。急速に移動する巨大な天体は、周囲の空間をかき混ぜ、波動を外部へと送り出す。衝突するブラックホールもまた、時空をかき回すのが得意で、重力波を直接発見するための最善の方策となるのかもしれない。また、互いの周囲をらせんを描いて回る2つの中性子星も有望な発信源となる。そのような連星システムが、重力波の存在を示す最初の間接的証拠をもたらした。
1993年、ジョセフ・テイラーとラッセル・ハルスはノーベル物理学賞を受賞した。互いの軌道がしっかり組み合わさった2つの中性子星の発見という1974年の功績によるものだ。その中性子星のひとつは「パルサー」である。パルサーは高速で回転しながら灯台の光のように規則正しい光のパルスを発している。この特別な中性子星から出されるパルス(ラジオ波として放射される)の間隔はきわめて規則的で、事実上、非常に高精度の時計となっている。パルサーがその伴星のまわりを回る時、この規則正しいパルサー時計の時の刻みは、ドップラー偏移を起こす。パルサーがもうひとつの中性子星のまわりを軌道に沿って動くにしたがって、検出されるパルスは一定のパターンで変化する――パルスの間隔は、次第に狭くなり(パルサーが地球へ向かってきている時)、その後、広がってゆき(パルサーが遠ざかっている時)、その後ふたたび狭くなっていく、この周期を調べれば、その連星システムの公転周期を非常に精密に計ることができる。
PSR1913+16という名で知られる、テイラーとハルスが発見したこの連星パルサーは、相対性理論をテストする理想的な環境を提供する。各中性子星の質量はそれぞれ太陽の約1.5倍で、それが直径およそ20キロメートルの球体におさまっている。2つの距離は、地球から月までの距離の2、3倍で、互いのまわりを8時間で1周する。アインシュタインによれば、これらの中性子星の動きは重力波を生み出すはずであり、その重力波は連星システムからエネルギーを運び去る。そうやって、システムのエネルギーが重力波として放射されると、軌道エネルギーは減少し、中性子星は徐々に互いに向かって近づいてゆき、より短い軌道をより早く回るようになる。PSR1913+16の軌道を4年にわたって注意深く観測した結果、その減衰(公転周期の減少)がたしかに確認され、発表にいたった。そのデータは一般相対性理論による予測とみごとに一致し、重力波の存在を確かに裏づける証拠となった。このシステムの現在の測定結果は、0.5パーセント以内の誤差でアインシュタインの理論と一致する。
次にすべき仕事は、重力波を直接探知することで、そのための調査がすでに始まっている。レーザー干渉計重力波検出器(LIGOを始めとする高感度の重力波検出器が、時空を監視するために建設され、特徴的な信号を持つ重力波の通過を捉えようとしている。LIGOの全体はL字型で、それぞれ全長4キロにおよぶ2本のアームが直角になるように配置されている。各アームの先端にはおもりが吊るされ、そのおもりの間を行き来するレーザー光線によってアームの距離が計測される。一方のアームから出たレーザーの光は、もう一方のアームからの光と結合して、ある干渉パターン――明るい点と暗い点からなる模様――を作る。仮に、各アームの距離がきっかり同じままなら、レーザー光線はもう一方と同調し続け、干渉パターンは変化しないだろう。もし距離が変化すれば、光源は同調しなくなり、干渉パターンは変わるはずだ。
重力波が地球とLIGOの検出器を通過する時、重力波は空間をある方向へ引き伸ばすと同時に、それに対して垂直になる方向へ圧縮するので、アームの距離はわずかに変化する。その結果として生じるレーザー光線の干渉パターンの変化は、重力波がたった今通過したことを知らせるだろう。
この技術によりLIGOは長さ4キロの各アームの変化を10-17センチのレベルで検出できる――その大きさは水素原子よりもはるかに小さい。このような精密なレベルで行うには、実験装置を真空に密閉し、大気分子の動きの影響を受けないようにしなければならない。また、検出器は2ヵ所以上に設置する必要がある。地震、通過するトラック、そのほかの不要な騒音が、通過する重力波の信号のように見えたり、あるいは本物の信号を覆い隠してしまったりするだろうが、そのような影響はすべて、地球上の特定の場所で起きるものだ。