Baya weaver (Ploceus philippinus) inspects a nest
Ploceus philippinus
鈴木まもる 草刈り薪割り日記 : 春。ニコルさんのこと。
2020年04月06日
柳田邦男先生から、新刊「人生の1冊の絵本」(岩波書店)が送られてきました。
●キムネコウヨウジャクの巣作り
http://blog.livedoor.jp/nestlabo4848/archives/54486280.html
『人生の1冊の絵本』
柳田邦男/著 岩波新書 2020年発行
いのちを育む鳥の巣讃歌 より
世界中の様々な鳥の巣を収集し、各地で鳥の巣展を開いたり、鳥の巣も絵本を制作している鈴木まもるさんは、今や、鳥の巣の収集と研究にかけては、世界的にも右に出る人がいないと言ってよいほどの存在になっている。
鈴木さんの鳥の巣探索の旅は、南太平洋の島々やアフリカなどにどんどん広がって、想像もつかなかったような不思議な形をした巣や、どうやってこんな精密な工芸作品のような巣を作れるのかと驚嘆させられるものを発見している。2015年秋、東京都世田谷区、下北沢の商店街にある民間のギャラリーで鳥の巣展を開いていたので、久々に見たくなって出掛けた。
たまたま鈴木さんが会場に出ていたので、じっくりと話を聞くことができた。鳥の巣は言うまでもなく母鳥が卵を産み、卵を温めて、ひな鳥を孵化させるための仮の宿だ。ひな鳥が巣立った後は、母鳥にとっても、もはや不必要となり捨て置かれる。鈴木さんが収集しているのは、そうした使い古された巣だ。”使用中”の巣ではない。環境保護に十分に配慮しているのだ。
ギャラリーのスペースはあまり広くないので、出品点数は多くはなかったが、それでも形の不思議な巣や造形美と言ってよいような巣などを、厳選して出品していたので思わず感動の声をあげつつ鑑賞した。
「進化する鳥の巣展ですね」
私が言うと、鈴木さんは嬉しそうに笑った。
展示された鳥の巣のなかで、私がいちばん凄いと感じたのは、東南アジアにいるキムネコウヨウジャクという名の小鳥の巣だ。鈴木さんによる数々の絵本のなかの1冊『ふしぎな鳥の巣』のなかに紹介されている。上下の長さが40センチくらいで、中央が妊婦のお腹のように大きく膨らんでいて、木の枝にぶら下がっている。膨らんだお腹の下は、やや細く長い筒状になっている(画像参照)。
その巣は何で作られているのか、よく見ると細い繊維のようなもので織り上げられている。そして筒状の部分の最下部は、少しもじゃもじゃとなっている。そこが小鳥の出入口なのだという。
内部は、妊婦のお腹のように出っ張っているところが、メスが卵を産み、抱きかかえて温め、孵化させる場になっているのだ。森のなかには、ヘビ、ネズミ、オオトカゲやサルなど、おいしくて栄養たっぷりの卵を狙う外敵がたくさんいる。鳥たちは大事な子孫を守るために、生き残る方法を方法を考えなければならない。キムネコウヨウジャクは、その方法として、外部からはなかが絶対見えないばかりか、出入口がわかりにくい巣を創造したのだ。
私がキムネコウヨウジャクの巣に驚嘆したのは、その形状だけではなかった。その絶妙な構造の巣を、巧妙に作り上げていく技術の見事さに舌を巻いたのだ。その工程は、鈴木さんの説明によると、次のような手順になっているという。
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キムネコウヨウジャクという1種類の小鳥の巣について見ただけでも、このように驚くべきいのちの営みを知ることができるのだから、鈴木さんがなぜ鳥の巣を追い求めて世界中を飛び回っているのがわかろうというものだ。