じじぃの「死者の告発・10万円の中古車だけど見てみますか?完全殺人」


在校生のみなさんへ。10万円一律給付の件について
2020.04.22 学校法人 宮田学園
4/20日本国総務省は、「一律給付10万円」の概要を公表しました。
http://miyatagakuen.ac.jp/news/miyata/3958/

『完全殺人』

西村京太郎/著 祥伝社文庫 2015年発行

死者の告発 より

エス――?」
「そうです。Sです」
田島刑事は、机の上に、太い指で、Sの字を書いて見せた。
「奥さんの死体が発見された時、河原の土の上に、Sの字が残されていたのです。右手の指に、泥がこびりついていたので、奥さんが、息を引き取る間際に、書き残したものと、思われるのです」
田島刑事は、1枚の写真を取り出して、山野に見せた。土の上に刻みつけられたSの文字が、浮き出たように、写っていた。
山野は、黙って、長い間、その写真を眺めていた。美和子が最後に残した言葉である。最後に、
(美和子は、一体、何がいいたかったのか?)
    ・
4日前の東日新聞。見つかった。周章(あわ)てて拡げてみた。読者欄があることだけは、前から知っていたが、身を入れて、読んだことはなかった。何か、ごちゃごちゃと、書いてあるなと思っていただけである。
最者が「尋ね人」となっていて、戦時中、どこそこに住んでいたxxさんをご存知の方は、お便り下さいなどと書いてある。次が「売り物」の欄で、1年間使用した16インチTVを格安でお譲りしますといった記事が、並んでいた。
最後が「買い物」の欄だった。そこに、美和子の名前が載っていた。
  中古車。なるべく年式の新しいものを希望します。予算は10万円まで。ご連絡下さい。
    新宿区四谷xx町、平和荘内  山野美和子
              電話 3268
山野は、長い間、その記事を眺めていた。美和子が、東日新聞に投書したことは知らなかった。投書のことは、ひとことも聞いていなかった。
    ・
山野は、美和子と、一緒に、運転を習っていた時のことを思い出した。家に戻ってから、運転のことを、いろいろと話し合った。彼女が若いので、独身の娘だと思っている教官がいるとか、車庫入れが難しいとかいうことだった。
美和子が、一度だけ、運転の練習を、止めたいと、いったことがあった。あれは、何の時だったろうか? 確か、運転技術で、難しいことがあって、いらいらしていた時のことだった。確か、あれは……
(あっ)
と思った。昔を思い出しているうちに、いきなり、「S」の文字が、頭に飛び込んできたからである。
教習課程の中に、S字型コースというのがある。S字にくねった道路を、前進、後進させる技術である。美和子は、その運転が、なかなか上手にいかなくて、くさっていた時があった。
山野は、周章てて、教習所の入り口に掛っている案内板を見た。月曜日が、休みと出ている。美和子が殺されたのは、月曜日だった筈である。犯人が、教習所の教官だったとしたら、あの日、自由に行動できた筈ではないか。

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どうでもいい、じじぃの日記。
お金が無いことと、新型コロナウイルスが恐いのとで家に閉じこもっています。
こんなじじぃにも一律10万円の「特別定額給付金」申請書が届きました。
さっそく手続きをしました。
こんな役立たずのくそじじぃにありがたいことです。