じじぃの「歴史・思想_174_地球に住めなくなる日・ジャンクフード化」

Junk Food

How to Moderate Your Children’s Consumption of Junk Food

August 24, 2013 Kindercare Pediatrics
We should start with a definition of junk food. Junk food is best defined as food which is calorie dense (containing high number of calories per serving) and nutrient-poor (containing trivial or no nutrients in addition to the calories). If our children fill up on calorie-dense, nutrient-poor foods on a regular basis, they risk eating insufficient nutrients (because they’ve filled up on junk) and therefore becoming malnourished.
https://kindercarepediatrics.ca/general-advice/how-to-moderate-your-childrens-consumption-of-junk-food/

『地球に住めなくなる日』

デイビッド・ウォレス・ウェルズ/著、藤井留美/訳 NHK出版 2020年発行

第2部 気候変動によるさまざまな影響

飢餓が世界を襲う より

10年前には、温暖化による熱が植物の成長を妨げるいっぽう、大気中の二酸化炭素が肥料の役目を果たすと言われていた。ただしこの効果が大きいのは雑草で、穀類はそのかぎりではない。それに二酸化炭素濃度が上昇すると、植物の葉は厚くなる。それでも問題はなさそうだが、実は葉が厚みを増すと二酸化炭素の吸収が落ちるのだ。その結果、今世紀末には、毎年63億9000万トンの二酸化炭素が大気中に残ることになる。
気候変動は、主要作物に別の戦いも強いる。害虫が活発になって2~4パーセントは収穫量が落ちるし、カビや病気、洪水の危険も増大するからだ。モロコシのように丈夫な作物でさえ、最近は収穫量が落ちている。暑さに強い品種の開発もなかなか成果がでない。小麦栽培に適した地帯は、10年ごとに約260キロメートルずつ極地方向に移動している。だからといって、すでに町があり、高速道路が走り、オフィス街や工業団地があるところを、いきなり農地にするわけにいかない。カナダやロシアの北方の辺境地は、たとえ温暖化で栽培適温になったとしても、土質が追いつかない。やせ土が肥沃になるには何世紀もかかるのだ。それに、そもそも土自体がなくなりつつある。信じられないかもしれないが、毎年750億トンが消滅しているのだ。アメリカでは、自然の補充作用の10倍の速さで表土喪失が進んでいる。中国とインドはそれぞれ30倍、40倍だ。
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この数十年で食料生産は大幅に増えたとはいえ、いまの世界はけっして飢えと無縁ではない。8億人が栄養不足で、そのうち1億人は気候変動が原因だ。「隠れ飢饉」、つまり不充分な食事で微量栄養素が不足している人となると、10億人をゆうに超える。2017年春には、ソマリア南スーダン、ナイジェリア、イエメンの4ヵ国で同時飢饉が発生する異常事態となり、年内の死者は2000万人になると国連が警告を発した。1年間に10億人を養うのもおぼつかないのに、この地域の人口は21世紀中に40億人になる。
人口増加と食料不測の問題は、次のボーローグがたくさん現れて解決してくれる――そんな希望を持つ人もいるだろう。たしかに画期的な新技術も登場しつつある。中国は農業戦略の完全カスタマイズで生産性を引きあげ、温室効果ガスを出す肥料を減らそうとしている。イギリスでは土を使わない農業をめざす企業が、2018年に初の「収穫」を報告した。アメリカでは、農地を使わず屋内で育てる垂直農法や、新たなタンパク質源としての「培養肉」に期待が集まる。ただし、どれもまだ駆けだしの技術であり、費用も高く、必要としている人には届かない。10年前には、遺伝子組み換え作物が第2の緑の革命になると誰もが夢をふくらませた。ところがこの技術は、農薬を製造販売する企業が、その農薬への耐性を高めるのにもっぱら活用している。また社会の抵抗感も強まるばかりで、自然食品スーパーのホールフーズ・マーケットは、自社ブランドの炭酸水を「遺伝子組み換えでないスパークリングウォーター」と銘打って販売している。
駆けだしの技術で恩恵を受けられるにしても、それがどの程度なのかはっきりしない。数理生物学者イラクリ・ローラツェは15年前から、二酸化炭素が人間の栄養状態に与える影響を研究している。植物を大きくすることは可能だが、そうすると栄養分が減るというのだ。それは植物生理学者も予想外の指摘だった。ローラツェはニュースメディア(ポリティコ)の「栄養大崩壊」という記事で、次のように語っている。「二酸化炭素濃度が上昇すると。木や草の葉はたくさんの糖を生成します。生物圏に存在する炭水化物がかつてないほど多くなり、それだけほかの栄養分が乏しくなるのです」

栽培植物の成分、たとえばタンパク質、カルシウム、鉄、ビタミンCの含有率が、1950年にくらべて3分の1まで落ちていることが2004年の調査で明らかになった。あらゆる食べ物がジャンクフード化している。ミツバチがつくる花粉団子でさえ、タンパク質は以前の3分の1だ。

大気中の二酸化炭素濃度が高くなると、事態はさらに悪化する。2050年には発展途上諸国の1億5000万人がタンパク質欠乏に陥るという予測もある。貧しい人びとは肉ではなく作物が主なタンパク源だからだ。妊婦の健康に不可欠な亜鉛は1億3800万人が不足し、食事で摂取する鉄になると14億人で不足し、貧血が大量発生するという。2018年、朱春宇を中心とする研究チームは18品種の米でタンパク質含有量を分析した。米は世界で20億人以上の生命を支える作物だ。その結果、大気中の二酸化炭素増加による栄養劣化が全品種で確認された。タンパク質をはじめ、鉄、亜鉛ビタミンB1、B2、B5、B9まで、ビタミンE以外はすべて減っていたのだ。研究チームは、米の栄養成分だけで考えても、二酸化炭素の排出は6億人の健康を損ねる恐れがあると指摘している。
人類は作物で巨大帝国を築いてきた。そしていま、気候変動が新たな帝国を建設中だ。それは貧者を踏みつける飢餓の帝国である。