Demonstrating Quantum Supremacy
Big Bang simulation
量子超越をめざして より
マルチネス率いるグーグルは、スーパーコンピュータを超える計算能力をもつ量子コンピュータを実現し、近々、量子超越を実証すると言っている。量子超越とは、量子コンピュータが従来型のコンピュータ(古典コンピュータ)よりも高速であることを指す。すなわち、量子性によって計算が加速されるという物理現象を実験的に実証しようという人類史上初の試みが進行中なのだ。
2011年にプレスキルがソルベー会議において「量子コンピュータによるエンタングルメントフロンティア」という題目で講演した時に、Quantum Supremacy(量子超越)という言葉がはじめて登場した。
現代の物理学は様々な種類の極限的な世界を探求している。例えば、素粒子や超弦理論に代表されるような高エネルギーの極限的な世界があり、物性物理学では、超伝導やトポロジカル秩序など量子ゆらぎが支配する極限的な低温世界を探求している。そして、最近観測された重力波やブラックホールは宇宙そのものを実験装置として使うほどの大きなスケール・大質量の極限的な世界がターゲットとなっている。
そのような現代物理学の中で、量子情報科学とは、情報や計算の複雑さという尺度で極限的に複雑な世界のフロンティアを探求する物理とあると言える。そして、量子デバイスの進展によって、我々はこのような極限的に複雑な世界へと足を踏み入れつつある。
2019年現在すでに実現されつつある50~100量子ビット程度の量子コンピュータがあったときに何ができるだろうか? 古典コンピュータでは到達できないであろう極限的に複雑な世界、すなわち量子超越に到達することができるであろうか? それを科学的に検証することができるだろうか?
宇宙をハッキングする より
大規模な量子コンピュータの登場はもうしばらく待たないといけないかもしれないが、量子コンピュータを実現するための取り組みはすでに多くの知見を物理学にもたらしている。量子コンピュータをデコヒ―レンスから守るために見出された量子誤り訂正符号は、量子物質系の新奇な性質であるトポロジカル秩序や、高エネルギー物理学における重力理論と量子力学の対応(Ads/CFT対応)を研究するためのツールとして盛んに利用されている。量子情報処理のリソースである量子相関を定量化する理論は、物質系だけではなくブラックホールなど様々な物理における性質を定量化するために利用されている。これらは、実用に迫られて量子系を必死で理解しようとした結果生まれた理論的枠組みが物理に新たな視点を提供しフロンティアを切り開いているというところが非常に興味深い。
最近では、量子アニーリングマシンやNISQマシンなど人工的に作られたプログラマブルな計算機の挙動そのものが研究対象になることが増えた。少なくとも人類が手にしたどのような物理系よりも圧倒的に複雑でかつ制御性が高く、そして再現性がある。こういった計算する機械そのものが自然科学である物理学における実験の対象になりつつあるのは非常に興味深い現象だと思う。これまで物理学の多くは、自然な現象につぶさに耳をすませ、実験をし、対象物を説明するための理論を構築してきた。人工的に作り出した、原子や材料なども当然その対象になるふが、計算をする機械そのものが物理学の対象になりつつあることは、物理学においても大きな転換点であるように思う。また、このように人工的に作り出されたプログラミング可能な計算する機械が磁性体の相転移現象やトポロジカルな現象を物理現象として直接シミュレーションできる、実験の対象となっていることも興味深い。今後、このような人工的な計算する機械が、これまでつぶさに自然を観測するだけでは気づかなかった新たな物理に我々を導いてくれるであろう。
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おバカな、じじぃの日記。
図書館から、藤井啓祐著『驚異の量子コンピュータ』という本を借りてきた。
本のページをパラパラめくったときから、歯か立たないと分かっていた。
借りられれば、何でも借りていい、というもんじゃない。
「このように人工的に作り出されたプログラミング可能な計算する機械が磁性体の相転移現象やトポロジカルな現象を物理現象として直接シミュレーションできる、実験の対象となっていることも興味深い」
相転移・・・気相から液相へ、液相から固相へ、あるいはその逆の相変化のことで物質の三態と呼ばれる。
この相転移は何となく物質だけでなく、宇宙の成り立ちにも関係しているように思われる。
相転移は特異点のことである。または、トリガーとも言う? (^^;;