じじぃの「科学・芸術_933_ウェールズ・先史時代の遺跡」

Pentre Ifan Europe Pentre Ifan Cromlech, Neolithic chambered dolmen Newport

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=s4JNnsldrvY

Pentre Ifan Dolmen

ウェールズを知るための60章 吉賀憲夫(編著) 発行:明石書店

英国を構成する4つの「国」の1つウェールズ。最も早くイングランドに併合されたが独自性を保ち続け、英語と全く異なるウェールズ語を話せる若者も少なくない。アーサー王伝説のルーツを持ち、海苔を食すなど日本との意外な共通点もあるウェールズを生き生きと紹介する。
Ⅱ 歴史
第9章 先史時代のウェールズ――様々な古代の遺跡と遺物
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784750348650

ウェールズを知るための60章』

吉賀憲夫/編著 赤石書店 2019年発行

先史時代のウェールズ――様々な古代の遺跡と遺物 より

ウェールズにある遺跡、異物の数は途方もなく多い。例えば、城は現在では単なる土塁になってしまっているものなどを含めれば、数え上げることすら困難であろう。カーリアンのローマ人の遺跡や、「築城主」エドワード1世が遺した数々の城など、記されるべきものはいくつもあるだろうが、ここでは先史時代のもの、さらには比較的有名なものに限定しておきたい。
まず、カステル・ディナスを挙げておこう。これはブレコン・ビーコンズ国立公園内にある、ブリテン島で最も高い場所に位置する城跡である。元は鉄器時代(紀元前600~紀元50年頃)の要素としての土塁であったが、そこにノルマン人が城を築いたのである(1070~1075年)。この城は1233年にウェールズ最後の大公サウェリン・アプ・イオルウェルス(大サウェリン)が略奪したり、またその後にイングランド王ヘンリ3世が再度要塞化したりと、様々な歴史を辿ったが、15世紀に破壊されてしまった。現在は消滅し土にまみれた壁となっているが、鉄器時代の溝や塁壁の名乗りは留めている。
先史時代の遺跡ということになると、ペントレ・イヴァンを忘れてはならないであろう。これは元々ペンプルックシャーの村の名であるが、そこにはウェールズ最大の新石器時代(紀元前7000~紀元前1700年頃)のドルメンであり、それも同じ名前で呼ばれている。当然、上記のカステル・ディナスよりも古いものである。石の文化を誇るケルト人の末裔であるウェールズ人の土地にこのような巨石建造物が遺されていることには何の不思議もないが、このドルメンは堂々たるもので、見る者を驚嘆させる。これは紀元前3500年頃のものとされるものであり、主に7つの石からできている。冠史石は長さ5メートル、幅2.4メートル、厚さ0.9メートルという巨大なもので、それが高さ2.5メートルの丸石3つに支えられている。2本の石が入口のように建っており、残りの1本は入口を塞ぐように立っている。ペントレ・イヴァンはあらゆるドメインの特徴を有すものと指摘する学者もいる。入念に作られたドメインは、作った者の身分や技術を示すのみならず、すでに重要であった場所にさらに重要性を加える目的があったのではないかとの推測もなされている。
ところで、ペントレ・イヴァン近辺のいくつかの丘は、プレセリーの丘と総称されている。この丘の大半はペンブルックシャー海岸国立公園に含まれており、公園内では唯一の高台である。この地域には新石器時代鉄器時代ドメイン、立石、塚、住居跡など古代の遺跡が点在し、あたかも「古代遺跡の集積地」の様相を呈している。あまりに数が多く逐一挙げてゆくことはできないが、「ウェールズらしさ」のようなものを感じさせる事柄をひとつ記しておきたい。それは名前に「アーサー」を含むものがいくつかあることだ。