じじぃの「歴史・思想_79_チャイナスタンダード・インド洋・潜水艦ドミノ」

Navy alert to Chinese nuclear submarine threat in Indian Ocean

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Vr7kCGRWD2E

China's submarine noose around India

『チャイナスタンダード 世界を席巻する中国式』

朝日新聞国際報道部/編 朝日新聞出版 2019年発行

海洋進出

原子力潜水艦の父 より

中船重工は中国の潜水艦戦略を供給面から支えている。近年は国外への輸出に力を入れ、パキスタンとタイが購入したのも同社製だ。軍事メディアによると、エジプトなど中東諸国やキューバなど中南米の国々も購入に関心を示す。
中国にとってインド洋は、欧州や中東などとつながる海上の大動脈で、習が掲げるシルクロード経済圏構想「一帯一路」でも採集用地域の1つとされている。中国海軍は、このシーレーンの安全確保を念頭に潜水艦を展開しているとみられる。アジアの経済や安全保障などの面で中国と主導権を争うインドを牽制する狙いがあるのも間違いない。
中国とインドは経済交流を深めつつあり、ロシアやブラジルなど新興5ヵ国で作るBRICSの加盟国でもある。一方で、国境紛争が繰り返されているほか、中国が「チベットの分離独立を狙っている」として批判するチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の亡命政府がインド国内で活動しており、中印関係は常に緊張をはらんできた。
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高度経済成長を背景に国民の支持を受けるインドのナレンドラ・モディ政権は、米国や日本、東南アジア諸国との関係強化を進め、南アジアでの中国の進出を牽制している。こうした状況の中であえて中国海軍は、潜水艦や艦船のインド洋への展開を進めていく構えだ。
シーレーン上の各国への潜水艦の輸出は、中国海軍自身にもメリットがあるとみられている。中国の潜水案は静音性能などの面でまだ開発途上とされるが、北京の軍事筋は、中国製の潜水艦が各国に普及することで「従来は自国でしか得られなかった故障や不具合などのデータが広範に得られるようになる。潜水艦の能力向上に欠かせない貴重な情報となる」と指摘する。
中国海軍は今世紀に入って、南シナ海など近海の海上優勢を確保する「近海防御」戦略にシフトしつつある。空母と並んで潜水艦を重視し、急ピッチで建造を進めており、米国防省の年次報告書によると、現在の63隻から2020年までに69~78に増強されるとみられている。13年ごろからは、ソマリア沖の海賊対策などの名目でインド洋に派遣してきた。
潜水艦を輸出することで、輸入国は中国製潜水艦が停泊できる港湾を建設するほか、補修や補給の専用設備を整備し、魚雷や機雷などを現地生産する可能性もある。いずれも中国の規格に合わせるため、中国海軍の潜水艦が修理や兵器調達のために利用できる拠点が増えていくことになる。

インドを揺さぶる より

「まるで潜水艦ドミノだ」。周辺各国が相次いで中国製の潜水艦を購入する動きに、インド海軍の幹部は警戒感を隠さない。インドはベンガル湾に面したビシャカパトナム近郊に原子力潜水艦の基地を建設中だ。中国が海南島に持つ原潜の基地がモデルとされ、人工衛星からの監視を避けるため、海上に浮上せずに出入りできる地下トンネル構造を持つ。
インド軍によると、中国海軍は13年からインド洋で潜水艦を展開し始め、年2回それぞれ約3ヵ月間運行しているという。さらに周辺国まで中国から潜水艦を購入したことで、原潜基地の目の前を中国製の潜水艦が潜航する事態が現実になりつつある。