じじぃの「科学・芸術_828_VR空間・多義図形」

Optical illusion: old or young woman? Solution!

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=7f1G6Nx5VDw

young woman or old woman ?

『トコトンやさしいVRの本』

廣瀬通孝/監修、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター/編 日刊工業社 2019年発行

目から脳までの視覚の情報ルート 人間の発達した視覚器

私達はどのようにして世界を「見る」ことができるのでしょうか。「見る」とはいったいどのようなことでしょうか。生物が生存するためには地球環境に適応し、エネルギーとなる食物を摂取しなければなりません。そのためには、外界を知る必要があります。下等生物は視覚器(眼)よりも嗅覚器(鼻)や触覚器が発達しており、高等生物になるにつれ視覚器が発達し、嗅覚器が退化したとされています。
外界からの光刺激は網膜で神経インパルスに変換され視神経を通り、外側漆状体から上下の視放線を通り大脳後方の後頭葉にある視覚野に伝達されます。そこから神経インパルスは大きく2つの経路に分かれ、伝わっていきます。
1つは、生活を送る上で自分が今どこに居るかを認識するための経路です。自分が置かれている立場のことを「自己定位」といいますが、そのための神経インパルスは頭の上の方(頭頂葉)へ向かう背側視覚路を通り頭頂連合野というところに辿り着きます。この頭頂連合野で「どこに居るか」が認知されます。もう1つは、見えているものが「何か(What)」を知るための経路(腹側視覚路)です。視界にあるものが何かを知るためには、過去の記憶と照合する必要があります。このため、記憶の中枢である海馬の近くの側頭葉へ神経インパルスが走り「見ているもの」が「何か」ということが記憶と照合されながら認知されることになります。

視覚と記憶の関係で面白い現象として多義図形があります。

1つの図に対して2通りの見え方ができる図形のことです。観察者は、図形か、あるいは何に似ているか過去の2通りの記憶のいずれかに認知されるため、図形が2通りに見えてしまう現象です。
私達が世界を認知する上で、視覚はその約80%の役割を占めるといわれています。そのためVRの場合、視覚刺激だけでも現実世界と異なる世界を認知することができるわけです。