じじぃの「科学・芸術_803_大図鑑・枯渇危機にある元素」

Thulium - The RAREST AMONG THE RARE Earth Metals!

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=DyStjcP-ppw

『ビッグヒストリー大図鑑:宇宙と人類 138億年の物語』

デイヴィッド・クリスチャン/監修、ビッグヒストリー・インスティテュート/協力、オフィス宮崎/日本語版編集 河出書房新社 2017年発行

枯渇の危機にある元素 より

地球を構成する化学元素の埋蔵量には限界がある。これまでに特定されている118種類の元素のうち、44種類ほどが枯渇の危機にさらされていると見なされている。テクノロジーに利用するための需要が供給を上回ると予測されているからである。

現在の需要の大きさが枯渇の危機を招いている天然資源は石炭や石油に限らない。最新のテクノロジーに不可欠の、磁性、発光性、電気化学的特性をもつ希土類元素(レア・アース)を含む諸元素もまた、供給の危機に迎えている。その理由はさまざまだ。量的に有限で回復できないものもあれば(たとえばヘリウム)、採掘が困難なものもある(たとえば希土類元素)。希土類元素はしばしば、広く分散し、また他の鉱物に混じって存在するため、採掘の費用がかかり、精錬時に多量の有毒廃棄物を排出する可能性がある。さらに、経済的に採算のとれる鉱床がある国々は、それらの資源を、ライバルである他国に輸出するようになり国内の医療・軍備への利用のために確保したいと考える。石油の場合と同様に、そうした国々は価格を操作し、入手可能性を制限することで市場シェアを守ることができる強い立場にある。希土類元素は、古いあるいは使われなくなったコンピューターや電話機などの電子機器から取り出して再利用することが可能であるが、鉱石から新たに精錬するほうが安価である。希土類元素がなければテクノロジーは立ち行かないであろうが、それが高額であり供給量が少ないことから、製造業者は新たなイノベーションをめざすことになる。
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リチウム

リチウムはリチウムイオン電池に使用されている。リチウムイオン電池は、今日、個人用の電子機器や電気自動車に使用されている。他のテクノロジーに比べて、(同じ容積内に)蓄積できるエネルギー量が多いためである。

ハフニウム

ハフニウムは融点が非常に高い。原子力発電所原子力潜水艦の原子炉の制御棒製造に使用されるのは、そのためである。また、マイクロチップの絶縁体に用いられ、コンピュータの電子回路に存在している。

ネオジム

ネオジムは、携帯電話、電気自動車のエンジン、風力タービンに動力を与える磁石に使用されている。ネオジムがなければ、磁石は自力の90%を失い、体積が最大で100%増加し、グリーンエネルギーの効率が低下することになる。

インジウム

インジウムスマートフォンのタッチスクリーンのガラスの製造に使用されている。インジウム亜鉛鉱床から採れるが、非常に少量しか存在しないため、採鉱は実際的ではない。亜鉛の需要が減少すれば、インジウムの入手に影響が出るだろう。

リン

リンは肥料の重要な成分である。それはまた、マッチなのど日用品にも用いられている。その供給の持続可能性を高めるために、ヨーロッパ諸国はリンの再利用を開始した。

ヘリウム

ヘリウムは、宇宙において2番目に多く存在する元素であるが、地球上で人類が抽出できる量は減少しつつある。MRI(核磁気共鳴画像)装置など、ヘリウムの用途は幅広い。