じじぃの「科学・芸術_755_大図鑑・太古のDNA・ミトコンドリア」

Richard III - Removing a Tooth for DNA Analysis

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=h7hceYDkDZA

歯根からDNAを抽出

『ビッグヒストリー大図鑑:宇宙と人類 138億年の物語』

デイヴィッド・クリスチャン/監修、ビッグヒストリー・インスティテュート/協力、オフィス宮崎/日本語版編集 河出書房新社 2017年発行

太古のDNA より

ここ10年で太古のDNA(細胞に含まれる遺伝子情報)の分析技術が進歩し、人類の進化に関する理解が大いに深まるとともに、いくつかの驚くべき事実が発見された。

DNA(デオキシリボ核酸)は非常に長い分子で、1つが複数の小さなユニットで構成されている。DNAはあらゆる生物の細胞に存在し、この小さなユニットの順序が暗号化された命令(遺伝子)のセットになり、これによってその個体の性質が決まる。
これまでに採取された最古のDNAは、スペインのシマ・デ・ロス・ウエソスで発見された40万年前のネアンデルタール人のもので、その分析から、ホモ・サピエンスは76万年~56万年前に古代のほかのモミニン(ヒト族)種から分かれたと推測される。このサンプルやその他のサンプルからわかるのは、ユーラシアが常に人種のるつぼだったということと、太古の種族同士および太古の種族とホモ・サピエンスとの間には、化石や考古学的証拠から私たちが以前考えていたよりも多くの交流や交配があったということだ。
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ミトコンドリアDNA

私たちは母親からミトコンドリアDNA(mtDNA)を受け継いでいる。このDNAは、細胞核のなかではなく別の細胞構造(ミトコンドリア)のなかにある。mtDNAは母系のもののみ受け継ぐため、数千人規模の被験者から採取したサンプルを調べることで、現在生きている私たち全員に共通する女性の祖先を示す遺伝的な「系統樹」を構成することができる。この「ミトコンドリアのイブ」には多くの同世代人がいたが、いずれも私たちのmtDNAには痕跡を残していない。このイブが生きていたのは今から20万年~10万年前で、アフリカ系か、あるいはユーラシアに最初に移住したホモ・サピエンスのひとりだったと思われる。

DNAの抽出

考古学者は歯、骨、およびミイラ化した組織からDNAを抽出する。いちばん簡単に元の状態で取り出せるのがミトコンドリアDNA(mtDNA)である。細胞1個につき最大1000個のミトコンドリアがあり、そのそれぞれに、ひも状の短いmtDNAから5~10個含まれている。各細胞に1つだけある核に含まれるもっと長いDNAの紐は、時間の経過とともに、また土壌の温度変化に伴って、分解していくことが多い。

細胞核DNAを抽出しやすい場所は、歯のセメント質(歯根の表面を覆っている鉱化した層)からである。これは、硬い鉱物組織が細胞を閉じ込めて保存する働きをするためである。