じじぃの「科学・芸術_700_再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」

[ScienceNews2014]より身近な再生医療へ iPS細胞ストックプロジェクト(2015年4月8日配信) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=y5Bx1tsVMCw

再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト 京都大学iPS細胞研究所 CiRA(サイラ)
再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトでは、HLA(Human Leukocyte Antigen : ヒト白血球型抗原)型を、 免疫拒絶反応が起きにくい組み合わせ(ホモ接合体と言います。)で持つ健康なボランティアの方に細胞を提供していただき、医療用のiPS細胞を作製します。 予め安全性の確認を行い品質の保証されたiPS細胞を保存し、必要に応じて国内外の医療機関や研究機関に迅速に提供できるようにすることを目的としています。
患者さん自身の細胞を使う「自家移植」と比べると格段に時間も費用も抑えられると考えられています。 CiRA基盤技術研究部門の郄須教授らのグループと研究支援組織の医療応用推進室が協力し、 CiRA内に設置された細胞調製施設(FiT:Facility for iPS Cell Therapy)にて細胞を作製・保存します。
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/stock.html
『日経テクノロジー展望2019 世界をつなぐ100の技術』 日経BP社/編 日経BP社 2018年発行
iPS細胞ストックプロジェクト 汎用性の高い細胞を備蓄 より
iPS細胞による再生医療の実現に向けて解決すべき主な課題は、細胞作製から移植までにかかる膨大な手間とコスト、他人のiPS細胞を用いる場合の拒絶反応、そして移植された細胞が癌化する可能性だ。
前者に関しては、汎用性の高い健常者(他家)のiPS細胞をあらかじめ作成して備蓄する「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」を京都大学が2013年から進めている。
血液型のように、細胞にもヒト白血球型抗原(HLA)と呼ばれる型があり、他人由来の細胞でも型が合っていれば拒絶反応が起きにくい。HLAの型は数万通りとされるが、中には両親から同じ型のHLAを受け継いだ人(HLAホモ)がいて、AA、BB、CCのような型になる。例えばAAの人であれば、その細胞をABやACの人に移植しても、拒絶反応を最小限に抑えられる。例えば、日本人で最も出現頻度が高いHLA型であれば、日本人の約17パーセントをカバーできる。
そこで京大では日本赤十字社、さい帯血バンクなどの協力を仰ぎ、出現頻度が高いHLAホモと分かった人には、ドナーとして協力を要請している。今回開始されるパーキンソン病や重症心不全に対する治験や臨床研究も、この再生医療用iPS細胞ストックからのiPS細胞を利用する。
一方、癌化の可能性に関しては、iPS細胞を作製する際の初期化因子(遺伝子)の組み合わせを工夫したり、iPS細胞に分化誘導をかける前に、分化抵抗性がある(造腫瘍性のない)細胞か否かを簡便に選定したりする方法を用いることで癌化リスクを限りなくゼロに近づける努力が続けられている。