じじぃの「科学・芸術_665_イスラーム美術・ラスター彩容器」

Islamic Art 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=kYr-L-HTzjo
イスラーム美術 ラスター彩皿

イスラームの陶芸 Wikiwand
陶芸は、偶像崇拝につながるものをきびしく制限するイスラームの美術においては、全ての時代・地域を通じて最も有力な芸術分野のひとつであった。
ラスター彩(金属光沢) はイスラームの陶芸に特有の技法の1つであり、ヨーロッパでは14世紀になるまで取り入れられなかった。恐らく9世紀のイラクで発明されたこのファイアンスでは、1度目は酸化焼成(900-1000℃)、2度目はより低温で還元焼成(600-700℃)の2度焼きを行う。酸化物(銀もしくは銅)は還元されて釉内部で薄膜を形成し、これにより金属光沢でモチーフを描き出すことが可能となり、そのため「ラスター彩」(英: luster 光沢)と呼ばれている。

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イスラーム美術 (岩波 世界の美術)』 ジョナサン・ブルーム、シーラ・ブレア/著、桝屋友子/訳 岩波書店 2001年発行
皿、壺、水差し より
中国の陶工は豪華な作品に美的効果を与えるのに器形と施釉で十分だと考えていたが、イスラーム地域の陶工は、他の材質を扱う職人と同じように、色彩、触感、文様を含む多重の装飾を好んだ。手の込んだ表面装飾へのこうした志向は、イスラーム美術のもっとも特徴的かつ不変の特性である。この場合、陶工は焼成されたときに藍色の図柄が現われるように釉薬のなかに酸化したコバルトをにじませて絵を描いた。他の作例では、不透明釉が緑色を呈するように酸化銅でにじませ、「雪の中のインク」のような効果を与えている。この皿の見込み(容器の内側)では4枚の葉が「持ち主に祝福あれ、……のムハンマドの作品(原文の最後の言葉である……の部分は解読できない)」と読める中央の3行の文字の塊を囲んでいる。職人あるいは工房の名前にに加えて、持ち主への祈願を述べた決まり文句は、この作品が市場で売られるために作られたことを示している。特別に注文されたものであれば、祝福を受ける個人が名指しされるはずである。この皿に何らかの食物が盛りつけられることが念頭におかれていたとすると、この装飾は食物が食べられてしまわないと見えない訳である。この種の容器は白地に藍色の意匠が施されたもっとも早い作例で、この組み合わせは後の時代にひじょうに流行し、中国、イスラーム地域、ヨーロッパで何度も出現した。
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ラスター彩装飾の効果は、磨かれた金属器、とくに金器、銀器の装飾効果になぞらえることが多かった。イスラームは装身具や容器に貴金属を使用することを嫌ったため、食事をする人はラスター彩容器を使用することで道徳問題を気にせずに金色や銀色の器で食事を楽しむことができたと、しばしば指摘される。この世で金銀をため込んだ人はあの世で苦しい罰を受け、正しい人はあの世で金の皿と金のカップで飲食をするようになると、コーランは警告している。伝承によれば、預言者ムハンマドは、金器・銀器の使用を禁じて、「銀器を使って飲む人はお腹のなかで地獄の炎が燃え盛ることになろう」と言ったという。しかしながら、この金器・銀器の禁止は、絹の禁止と同じようにめったに守られず、多くの文献がカリフ(神の使徒の代理)やその他の人物が使用した金器・銀器を叙述している。