じじぃの「科学・芸術_627_有人火星探査(R計画)・ヴァシミール」

VASIMR: Plasma rocket propulsion (100x faster) Secrets of the Space Probes 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=jj5YwINlkTo
 VASIMR (ヴァシミール)


2024年に人類を火星へ、米スペースXが発表 2017.10.04 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
米スペースX社の創設者イーロン・マスク氏が2060年代までに100万人を火星に移住させる大胆な計画を発表したのはちょうど1年前だった。
その計画の変更点について、9月29日に、オーストラリアのアデレードで開催された国際宇宙会議(IAC)においてマスク氏が説明した。最終的な目標に大きな変更はないものの、42基のエンジンを備えたBFRロケット構想に修正が加えられる予定だという。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/b/100300118/
ホールスラスタ ウィキペディアWikipedia) より
ホールスラスタ (Hall thruster) とは、イオンに対しては外部陰極が作る軸方向の電場勾配が主に働く一方、電子に対してはホール効果による閉じ込め効果が利く程度の磁場をかけて推進剤の電離を促進する電気推進機。「ホール」はホール効果を発見した19世紀の科学者、エドウィン・ホールに由来。
ホールスラスタはリニア型とシース型の2タイプに大きく分けられる。リニア型は旧ソ連が実際に多くの人工衛星に搭載した。
イオンエンジンがChild-Langmuir則により推力密度を著しく制限されるのに対して、ホールスラスタには制限がなく、大電力化が容易である。近年では日本でもさかんに研究が進められているが、いまだ日本の衛星への採用例はない。
比推力可変型プラズマ推進機 ウィキペディアWikipedia) より
比推力可変型プラズマ推進機(VAriable Specific Impulse Magneto-plasma Rocket - VASIMR)とは、宇宙空間用電気推進の一種である。本来は核融合研究のひとつとして開発された。1977年にフランクリン・チャン=ディアスにより基本的なコンセプトが固められ、惑星間航行用のエンジンとして研究が続けられている。
英語の略称であるVASIMRは「ヴァシミール」と発音する。

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『宇宙はどこまで行けるか-ロケットエンジンの実力と未来』 小泉宏之/著 中公新書 2018年発行
有人深宇宙探査をするには より
私たちの有人火星探査「R計画」に必要な物資は、人、食料、酸素、水、母船、火星着陸船、そして、宇宙航空用エンジンだ。ここで母船とは、宇宙機としての基本性能を備えた装置であり、人の居住区と物質搭載スペースを含む。宇宙航空用エンジンは、宇宙に出てから使うエンジンで着陸や打ち上げに使うものとは別とし、エンジン本体、タンク、そして推進剤を含む。そして、母船、着陸船、宇宙航空用エンジンを合わせたすべてを宇宙船と呼ぼう。これらの量を見積もる際に大事なのは、必要な加速量と時間である。加速量によってエンジンの推進剤量が決まり、時間によって食料等の量が決まり、居住区の広さにもかかわるだろう。地球から火星に向かう航路は、前章で解説した無人探査機と同じだ。
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さて、あなたはイオンエンジンとホールスラスタのどちらを選ぶだろうか。設計しやすく、力が調整しやすく、そして高い排気速度となればイオンエンジンがおすすめだ。一方、コンパクトに大きい推力がほしい、排気速度は低めでも推力がほしいとなればホールスラスタを選ぶのが得策だ。だから、大推力を目指すならホールスラスタに軍配が上がる。実際に100キロワットというかなり大きいホールスラスタの研究もされている。これが実現すれば、イオンエンジンだと20台必要なるところを1つで足りる。さらに、大型化・大電力化すると性能もどんどん良くなるので、電力があれば、いいとこだらけのエンジンなのだ。
ホールスラスタは大型化に適した電気推進だが、さらに”超”大型化を目指すと限界が見えてくる。それはプラズマとの接触だ。第4章にてプラズマというのは、とても熱いガスのようなものだと話した。どれくらいの熱さかと言えば、普通の電気推進で10万から20万度くらいだ。さらに加速されたプラズマになると数百万〜1000万度に相当する。このような温度に耐えられる物質はない。プラズマ中にイオンが壁面に衝突すると、タングステンだろうとカーボンだろうと、壁面の原子はイオンによって吹き飛ばされてしまう。つまり、プラズマ中のイオンは壁面を削るのだ。
どの電気推進も、イオンが壁を削らないように工夫をこらしてはいるがゼロにはできない。これが超大電力になると、その分プラズマも濃くなるので、イオンによる摩耗が無視できなくなってくる。どちらのエンジンにも中和器がついているが、この中和器が損傷するとイオンが外に出て行かなくなって推進力はゼロになってしまうから大変だ。
対策としては、超大電力の電気推進を実現するためには、プラズマが何とも触れない構造、つまり非接触を考案しなくてはいけないのだ。マイクロ波放電式のイオンエンジンは、非接触でプラズマを作っていたが、これから紹介する電気推進は、プラズマの生成も加速も非接触のエンジンだ。
いくつかの候補があるが代表的なエンジンは、「VASIMR(ヴァシミール)」であろう(図.画像参照)。SF小説『火星の人』に出てきた宇宙船{ヘルメス」のエンジンはこれを想定している。筆者は小説の中で「VASIMR」という単語を見つけて思わずニヤッとしてしまった。