じじぃの「科学・芸術_625_真空の力・カシミール効果」


 真空のゆらぎ

無から有 2016.07.22 ★applestar 天文の部屋★
●真空のゆらぎ⇒空間も時間も物質も力もない…。
そんな状態を “真空”といいますが、無とは違い真空とは何もない状態ではなく、相殺されて「ゼロ」になるのであって瞬間的にはとてつもないエネルギーがある。
「真空のゆらぎ」または量子論の考え方なので「量子的ゆらぎ」という。
http://ryo-remi-nori.jugem.jp/?eid=32
『異端の数ゼロ』 チャールズ・サイフェ/著、林大/訳 早川書房 2003年発行
量子的ゼロ・無限のエネルギー より
ハイゼンベルグ不確定性原理は、人間がおこなう測定に当てはまるばかりではない。熱力学の法則と同じく、自然そのものにも当てはまる。不確定性のおかげで宇宙は無限大のエネルギーで湧き立っている。極端に小さな体積の空間、たとえば、実に小さな箱を想像してみればいい。箱の内部で何が起こっているかを分析する場合、いくつか仮定をおくことができる。たとえば、なかにある粒子の位置はある程度正確にわかっている。何しろ、箱の外にはないのは間違いない。ある体積に限られていることもわかっている。粒子の位置についていくらか情報があるから、ハイゼンベルグ不確定性原理にしたがえば、粒子の速度――エネルギー――についていくらか不確定性があるにちがいない。箱を小さくしていけば、粒子のエネルギーはますますわからなくなっていく。
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素粒子は絶えず生まれたり消えたりしている。『不思議の国のアリス』のチェシャーキャットのように。真空はけっして本当に何もないのではない。それどころか、仮想粒子で湧き返っている。空間のあらゆる点で、無限個の仮想粒子が現れては消えている。これがゼロ点エネルギー、量子論の公式に出てくる無限大だ。厳密に解釈すると、ゼロ点エネルギーは限りがない。量子力学の方程式よると、すべての炭鉱、油田、核兵器に蓄えられている以上のエネルギーがお宅のトースターの内部の空間におさまっているのだ。
方程式に無限大が現われると、物理学者は普通、何かがおかしいと考える。無限大は物理的に意味がない。ゼロ点エネルギーも同じだ。たいていの物理学者は完全に無視する。ゼロ点エネルギーが無限大だと知っていても、ゼロであるかのように振る舞う。便利な虚構であり、普通はそれで問題ない。しかし、問題になることもある。1948年、2人のオランダの物理学者、ケンドリック・B・G・カシミールとディック・ポルダーが、ゼロ点エネルギーをいつも無視できるわけではないことに、はじめて気づいた。2人の科学者は、原子どうしの間に働く力を研究していて、測定器が予測と合わないのに気づいた。説明を探し求めるうちに、カシミールは、それが無の力の影響であることに思い当った。
カシミールが気づいた力の秘密は波の性質にある。古代ギリシャピタゴラスは、つまびいた弦を行き来する波の特異な振る舞い――許される音と禁じられた音があること――に気づいた。ピタゴラスが弦をつまびくと、弦は澄んだ音、基音と呼ばれる音を響かせた。弦の真ん中に指を置いて、またつまびくと、別のきれいな澄んだ音、今度は基音より1オクターブ上の音が出た。3分の1のところでつまびくと、また別のきれいな音が出た。ところが、どんな音も出るわけではないことに気づいた。弦にでたらめに指を置くと、澄んだ音が出ることはめったになかった。一部の音だけが弦で奏でられ、おおかたの音とは排除されている。
物質の波は弦の波とそれほど違わない。ある長さのギターの弦が、可能な音をすべて奏でられるわけではない――弦の上に現れるのを”禁じられている”音がある――ように、箱のなかに現れるのを禁じられている素粒子波がある。たとえば、2枚の金属板を近づけると、内部にあらゆる種類の粒子をおさめられるわけではない。箱の大きさに合った波しか許されない(図.画像参照)。
カシミールは、素粒子がいたるところでパッと生まれては消えているのだから、禁じられた素粒子波が真空中のゼロ点エネルギーに影響するだろうと気づいた。2枚の金属板を近づけると、その間に現れることが許されない粒子があるとすれば、内より外のほうが素粒子が多い。減ることのない素粒子の群れが金属板の外側を押し、内側にはそれと釣り合う圧力がないので、金属板は、まったくの真空のなかでもぴったりくっついてしまう。これが真空の力、無が生み出す力だ。カシミール効果である。