じじぃの「科学・芸術_611_地球誕生・マグマオーシャン」

地学基礎112A 地球の歴史1 地球誕生 原始地球誕生 動画 YouTube
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原始地球

『三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち』 藤岡換太郎/著 ブルーバックス 2017年発行
3つの石から見た地球の進化 より
いまから46億年前、宇宙空間のある一隅、現在の太陽系のあたりで、1つの超新星が最後のときを迎えて大爆発を起こしました。爆発で飛び散った物質はところどころで塊をつくり、最も多く集まった場所で太陽が産声をあげました。太陽では2個の水素原子がヘリウムをつくる核融合反応が起こり、みずから光る輝きはじめました。やがて、太陽に近いところから密度の大きい順に、ダスト(宇宙塵)やガスが周辺の物質を集めて次々と塊をつくり、やがてそれらは8つの惑星となっていきました。太陽に比較的、近いところでは、原子番号14番の元素であるケイ素が多く集まりました。
さらにこの場所に、周辺にある重たい隕石や隕鉄のような物質、微惑星が衝突・合体して集積していき、やがて「原始地球」に成長しました。それは現在の地球より小さく、火星ほどの大きさであったと考えられています。
原始地球のもつ重力が大きくなると、周辺の隕石や隕鉄などをさらに引き寄せ、それらは次々に原始地球に衝突します。「隕石の重爆撃期」と呼ばれる、もし人間がこの頃に存在していたら地獄としかいいようのない時代です。米国アリゾナ州にあるバリンジャーの隕石孔(クレーター)は金関衝突の衝撃のすざましさをいまも伝えています(大きさは直径約1.5km、深さ約170m)。
重爆撃によってもたらされた巨大な衝突のエネルギーは、熱エネルギーに変換されて、原始地球の温度はどんどん上がっていきます。しだいに原始地球の表面はどろどろに溶けはじめ、液体のマグマとなります。表面温度が1600℃になると、すべてが溶けてできた「マグマオーシャン」、つまりマグマの海に地球表面は覆われます。
このときに、液体のマグマのうち最も重い隕鉄(てつ)は、中心部に沈んでいって、核をつくりました。さらに、密度の大きい物質から順に深く沈殿していき、核の周囲はのちのマントルとなる橄欖(かんらん)岩に取り囲まれていくのですが、ここに大きな謎があるのです。
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不混和の関係にある橄欖岩と鉄がマグマオーシャンの中で溶けあって、マントルのようなどろどろの液体を形成するためには、少なくとも2000℃を超える温度が必要でしょう。鉄の融点は1538℃、橄欖岩の融点は約1890℃だからです(フォルストライトの1気圧での融点)。マグマオーシャンのときの地球の表面温度は2000℃にまで達していたと考えられますので、その点はぎりぎりクリア、という感じでしょうか。
しかし、ここで引っかかってくるのが、2つめの謎です。さきほど述べたように、太陽や地球などの材料をつくった母天体の超新星爆発の時期と、その後に地球が形成された時期は、地球で発見されている隕石から年代を推定すると、どちらも約46億年前です。つまり、星の材料が宇宙にばらまかれてから星ができあがるまでが、宇宙的なタイムスケールでみれば、ほとんど一瞬で起きているわけです。もし地球の誕生がそうした一瞬のできごとだったとすると、橄欖岩が地球でつくられて、それからマントルをつくるには、マントルが地球体積の85%以上も占めていることを考えると、少し時間が足りない可能性もあります。
それよりも、材料がすべてそろった第1世代の終わりにすでに橄欖岩ができていたと考えるほうが自然なのではないでしょうか。そして超新星爆発のときに、鉄と溶けあった状態で宇宙空間に投げ出されたのです。超新星の温度は5500万℃ともいわれ、すべてのものを溶かすのに十分すぎます。宇宙空間の温度はおよそマイナス270℃ですから、どろどろの液体はすぐに冷えて、固体の塊になるでしょう。それらが集まって少しずつ大きな塊になり、それぞれが衝突を繰り返して、だんだん大きな隕石になっていきます。
このようなシナリオで橄欖岩ができたと考えてよいのではないか、むしろこのほうが自然なのではないか、というのが私の仮説です。つまり、橄欖岩は現在の地球ができるより前からあって、地球をつくった隕石が橄欖岩そのものだったというわけです。
46億年より古い隕石が出てこないのは、超新星爆発のときにすべてが溶け、隕石の年代がリセットされてしまったためではないかとも考えられます。そして、宇宙からやってきたきたこの緑の石から、玄武岩花崗岩が生まれてきたのです。いかがでしょうか。