じじぃの「科学・芸術_610_ラジウム温泉」

有馬温泉(有馬温泉駅,金の湯,有馬温泉の源泉)の観光旅行動画 Famous Japanese hotspring Arima Onsen in Kobe, Japan travel  動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=FWSzJcDP3xY
有馬温泉

『三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち』 藤岡換太郎/著 ブルーバックス 2017年発行
大陸をつくる白い石 より
これまでの話で、重要な役者として登場した安山岩について、少し紹介しておきましょう。南米のアンデス山脈に多く産出される「アンデサイト」という石があります。実はこれが安山岩です。「安山岩」という名前は、「アンデス山脈」からとったアンデサイトの和名なのです。最初は東京大学の小藤文次郎によって「富士岩」と命名されましたが、のちに地質調査所が安山岩と改名しました。安山岩玄武岩質マグマから結晶分化してできる火成岩です。デイサイトや流紋岩よりも早く分化します。また、マントルの部分溶融によってもできます。
日本には安山岩が多く産出します。会津磐梯山をつくる石がそうですし、箱根や根府川で採れる「小松石」や「根府川石」という名もそうです。香川県などでみられる、叩くとカンカンと音がする非常に稠密な「讃岐岩」(別名かんかん石)も安山岩です。
安山岩の特徴として重要なことは、島弧がおもにこの石でできているということです。そのため、大陸地殻の組成は安山岩の組成とよく似ています。米国の女性岩石学者ロベルタ・ラドニクが1995年に大陸の平均化学組成を調べて、そのことがわかりました。
この安山岩による最初の地殻が溶融して花崗岩からなる大陸地殻ができたわけですが、そのプロセスはまだわからないことがあります。現在、これについて研究しているのが、海洋研究開発機構JAMSTEC)の田村芳彦たちが取り組んでいる「TAIRIKUプロジェクト」です。彼らのターゲットは小笠原諸島に突如、出現した西之島新島も含まれています。この島は安山岩でできていることから、将来、これが花崗岩に変わっていくのかどうか注視することで、大陸地殻が形成される過程をつきとめようとしているのです。
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プレートの沈み込みや衝突によってできた花崗岩質マグマは、非常に量が多いため、冷却されるまでに非常に時間がかかります。玄武岩質マグマの冷却過程はハワイのマカオプヒ溶岩池の天然の実験室で観察されましたが、花崗岩の場合はそうした理由で実験ができないので、大きな岩体の中の鉱物を手がかりにして探っていきます。一つ一つの鉱物の年代と温度を確定していき、成長の様子をさまざまな手法を駆使して推定していくのです。
すると、鉱物によっては数百万年も年代に差があることがわかりました。これは花崗岩質マグマがどこかに定着し(定置といいます)、完全に固まって、かちんかちんの石になるまでに数百万年もの時間がかかったことを意味します。
大量の花崗岩質マグマは、冷却にともなって周辺に大量の熱を放出します。そのため、地下水が温められて、私が大好きな温泉ができます。神戸市の北にある有名な有馬温泉は、六甲山の花崗岩からの熱によって温められたものです。ここには成分の違いによって、「金泉」「銀泉」があります。
花崗岩質マグマが冷却するにつれて、結晶が分離していきます。すると、残った溶液には長い長い時間のあいだにさまざまな元素が溶け込み、濃集していきます。通常ではみられないような特異な元素も入っています。その中に、ラジウムなどの温泉特有の成分も混じっているのです。京都の東山三十六峰は、古生代(約5億4200万〜約2億5100万年前)の地層に1億年前の花崗岩が貫入してできた山です。そのような古い花崗岩に濃集したラジウムが地下水に溶け出し、北白川で温泉として出てきているのです。これだけ古いともう花崗岩の熱はかなり冷めているはずですが、それでも地下水を沸かしているようです。