The Evolution Of Humans 2045 , Meet The New Super Humans 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=PYfzfxOSc3A
human 2.0
『世界を変えた14の密約』 ジャック・ペレッティ/著、関美和/訳 文藝春秋 2018年発行
終わりなき”買い替え(=アップグレード)” より
19世紀も金持ちは貧乏人より長生きで、食生活と社会環境の違いがその原因だった。いまその差が開いているのは、金持に生物学的なアップグレードの機会が開かれてきたからだ。
「脳とコンピュータのインターフェイス」、いわゆるBCIは、もともと四肢障害者を助ける目的で開発された埋め込み型のデバイスだが、いまは健常者の能力を増強するための装具として使われるようになった。機械でも生身の人間でもなく。そのふたつがシームレスに結合し、永遠にアップグレードされ続ける「最強の」人類がそれだ。21世紀の四肢の整形手術とも言える。「最強の自分」になるために、記憶をアップグレードし脳をインターネットに直接つなげることで記憶容量は無限に広がる。金持ちは永遠になにも忘れず、思考速度も速くなる。ヒューマンサイボーグ対昔ながらの普通の人たち。人類2.0対1.0。
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この目的は、究極の身体を作り、採取したデータを使って「最強の自分」になることだ。超金持ちのクライアントは完璧な人間になろうとしているわけではなく、生きたいように生きるための健康を手に入れようとしているのだと、人間のアップグレードについての世界的な権威であるサビーネ・ドナイ博士は言う。データがあれば「生活習慣によってさらに弱まる様な、DNAの鎖の中の弱い部分」を見つけることができる。その弱い部分を狙い撃ちすることが、ソリューションになる。
しかし、本物のビジネスチャンスは金持ちのクライアントではなく、数百万という一般の人たちだ。このサービスの廉価版を立ち上げれば、イギリスとヨーロッパで展開できる。ヴィアヴィはクリスパーと呼ばれる最新のDNA編集技術を使う。世界初の本格的なプレーヤーになる。ドラッグストアとブレードランナーの掛け合わせだ。
クリスパーはすでに白内障や嚢胞性繊維症を引き起こす遺伝子を特定している。人間が口にする動物の遺伝子疾患を取り除くために、この技術は使われている。北京に本社のあるBGI・深圳は、iPhoneの値段以下で人のDNAを解析できると言う。グーグルのディープマインドは知性の遺伝的根拠を最初に解明しようと争っている。
ハーバードの遺伝学者のジョージ・チャーチは、伝染病に対抗するバクテリアを作り出すような遺伝子コードを生成するツールを開発している。人間のDNAを変えて、強力なロボット四股に頼らなくていいような、生物学的に優れた新種の人類が作られる可能性を否定しない。まさにそれが人類2.0だ。
わたしはドナイ博士に、クリスパーを恐れた方がいいのか、未来の世界がいま早いスピードで幕を開けようとしているのかを聞いてみた。「怖がる必要はありません。20年前、人工授精で赤ちゃんを作るという考えを、みんな怖がっていましたよね。遺伝子選択やスーパーベイビーを恐れる人もいましたが、実際には、数百万というカップルが到底無理だと諦めていた赤ちゃんを奇跡的に授かることができたんです」
ドナイ博士の言うように、すべての人がアップグレードされるのか、それとも2種類の人類が生まれるのか? 人類1.0と、それより速く、賢く、強く、裕福な、アップグレードされた人類ができるのだろうか?
歴史学者のユヴァル・ハラリは後者だと考えている。わたしたちはロンドンで会った。ハラリは、いまの私たちの知る人類は100年後にはもういなくなっているだろう、と強い調子で厚く語ってくれた。「アップグレードされた人類だけが重要になる」。つまり、生物学的な格差が生まれるということだ。オクスフォード大学の生物技術者のアンダース・サンドバーグは、アップグレードされた人間と、アップグレードされない下層民の2種類に人類という種が分かれる。つまり「種形成」が起こると言う。はじめに収入格差から生まれた医療格差とDNA編集の有無が、1世代後には生物学的に後戻りできない階級格差になるだろう。今の遺伝子と同じで、アップグレードは次の世代に受け継がれる。