1001 GRAMS Trailer | Festival 2014 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=FVIAtIHcehM
このシリコン球は何個の原子からできているのだろう?
今年はキログラムに注目だ!
1kgの定義、原器から「原子の数」へ 2015.07.22 ナショナルジオグラフィック日本版サイト
●アボガドロ定数の精度向上、2018年に再定義
フランスのセーブルにある国際度量衡局(BIPM)には、直径・高さともに約39mmの円柱状の金属塊が厳重に保管されている。100年以上にわたり全世界の質量の基準になっている「国際キログラム原器」だ。
2011年、国際度量衡総会の55人の代表は、基礎物理定数に基づいてキログラムを再定義することに満場一致で合意した。改定の目標は2018年だ。現在研究が進められているアボガドロ定数に基づく再定義が、キログラム原器にとって代わるかもしれない。
アボガドロ定数とは、ある物質1モル(モルは物質量の単位)に含まれる原子や分子の数のことで、質量数12の炭素12グラムに含まれる炭素原子の数として定義される 。その値は約6.02×10の23乗であることが分かっている。
それに適している物質がシリコン。研究チームはシリコン(ケイ素) 結晶を作製し、質量1キログラムのシリコン球になるよう研磨してそこに含まれる原子の数を数えた。ガムボールマシンにぎっしり詰まった球体のガムを数えるように、シリコン球の大きさを測定し、そこに原子がいくつ入るか計算したのだ。
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/072100020/
『新しい1キログラムの測り方 科学が進めば単位が変わる』 臼田孝/著 ブルーバックス 2018年発行
原器から原子へ より
国際原器による校正は、大変手間の掛かる作業です。国際キログラム原器が保管されている部屋の扉には3つの異なる錠が掛かっています。開けるためにはまず、それぞれの錠を開ける鍵を持つ3人が立ち会う必要があります。その3人とは国際度量衡局の局長、フランス国立中央文書館の館長、そして国際度量衡委員会の委員長です。「はじめに」で紹介した、年に1回の検査のときもこの3人が集まるのです。
金庫の中の原器はさらにガラスの容器で守られています。このガラスの容器を開けて原器を使うのは、前述の通り30〜40年に1回のことなのです。このとき原器は定められた方法で洗浄され、測定室に移され、いよいよ測定装置の天秤に載せられます。担当者の緊張は極限に達するでしょう。
国際度量衡局においての原器の取り扱いは、このように大変手間が掛かりますが、各国の原器もその点は同じです。2014年に公開された、ノルウェーの国家計量標準機関(NMI)に勤める女性が主人公のノルウェー映画、「1001 Grams」(邦題:1001グラム ハカリしれない愛のこと)では、主人公が自国のキログラム原器をパリに携行し、国際度量衡局で校正してもらうことからドラマは始まります。そして空港の税関で、原器を入れた容器を前に、中身を検(あらた)めようとする係官と押し問答になるシーンが出てきます。何しろ質量が変わってしまうので、原器に触られまいと必死な主人公と係官のやりとりがゆーもたすに描かれます。映画はフィクションですが、このシーンはあながち誇張ではありません。今日もどこかで原器を携えた研究者が、空港の税関で立ち往生しているかもしれないのです。
新しいキログラムへの道 より
シリコン球体表面は、酸化膜などからなる厚さ数ナノメートルの表面層に覆われていることがわかっています。いわば薄皮を被っているのです。シリコン原子を数えてプランク定数を決定するのは、表面を分析して、薄皮の材質と厚さを評価し、その分を除かなければいけません。そこで、産総研では表面にX線を照射し、生じる光電子のエネルギーを測定することで、試料表面の構成元素と状態を分析する装置(X線光電子分光装置)と、試料に照射した光の反射偏向状態から試料表面上の薄膜の熱さを測定する装置(分光エリプソメトリー)によって球体の表面を分析しました。通常、このような分析では微小な試料を分析するのが普通ですが、必要な測定精度を得るためには球体全面について分析する必要があります。そこでシリコン球体の回転機構を備え、球体の全表面を分析できるシステムが開発されました。球体表面層の組織を決定し、さらに球体表面層の厚さを0.1ナノメートルの精度で測定します。シリコン球体の質量と体積の測定値をこの表面層分析結果で補正し、シリコン本体の質量と体積を決定しました。
同様の分析はプロジェクト参加各国でも行われ、それぞれの結果を比較することで、妥当性を検証しつつ進められました。ただし、表面分析などはシリコンの微小片でも評価できますが、球体としてのシリコン球の体積を測定し、十分小さい不確かさでアボガドロ定数まで評価できたのは、日本とドイツだけでした。
こうして、19世紀に原器を作製したときのように国際的な協力のもと、18世紀のフランス革命下の測量のように遥かな道のりを経て、日本とドイツからアボガドロ定数が報告されたのです。