じじぃの「科学・芸術_420_微生物石油(藻)」

ジェイ・エピセンター氏 「日本が産油国になれる!夢のオーランチオキトリウム 驚異の可能性」 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=vVfju9mu5Xc
Energy 101 | Algae-to-Fuels 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=IxyvVkeW7Nk
微生物石油 (藻)

「夢の扉+ 〜NEXT DOOR〜」 2011年5月29日 TBS より
【ドリームメーカー】筑波大学大学院教授 渡邉信 【ナレーター】坂口憲二
池や沼に繁殖する藻(も)など藻類は水の中で暮らし、およそ4万種が知られている。
「石油」を作る藻
その中に石油とほぼ同じ成分を作る藻がある。
藻類学者 渡邉信。
地道に藻を研究した学者がエネルギー革命の主役だ。石油を作る藻を探し求め、世界中の池や沼、洞窟まで調査した。そして去年、奇跡に藻を発見。それは世界でもっとも効率よく石油を作る藻だ。
渡邉教授、「まさしく、日本は産油国になる」
日本を産油国に世界初の夢の実験が始まった。そんな渡邉が今目標にするのは、
渡邉教授、「なるべく早く産業化して、世界人類を幸せにしたい」
つくば市にある筑波大学の中で取材スタッフと渡邉教授がある研究室に向かう映像が出てきた。
筑波学園都市の筑波大学で極秘の研究が行われている。我々は場所を明かさない約束で部屋に入ることを許された。この研究室に何があるのか。
渡邉教授、(冷凍保存された藻を取り出して)「はい。これです。これが『オーランチオキトリウム』というものです。液体窒素マイナス190度くらいで生きたまま凍らせています。日本の運命を左右していく大切な生き物です」
冷凍保存されたその生物はワカメやコンブと同じ藻の仲間。ただこの藻は人類にとって貴重な油を作る。その名前はオーランチオキトリウム。
藻がフラスコの中で油を作る様子の映像が出てきた。
この藻は光合成を行わず、水中の有機物を食べて油を作り、細胞内に貯め込む。特殊な染料を使うと、藻の内部が赤く光って見える。これが油だ。この油を集めれば燃える。つまり燃料として使える。
渡邉教授、(フラスコを揺りながら)「もう『油』が浮いている感じですね。何がすごいかと言うとオイル生産効率が従来の藻類と比べると10倍以上。これが非常に優れています」
これまでもっとも油を作る藻として知られていたのはボトリオコッカス。渡邉が発見したオーランチオキトリウムはその10倍以上の生産能力を持つ。この油、成分は石油とほぼ同じ。
それゆえ「石油」を生み出す藻。そして世界の注目の的に。
バイオ燃料のトウモロコシと比較。1haの土地を使って採れる油はトウモロコシはドラム缶1本。この藻は実に5万本。まさに大量生産が可能となる。
沖縄の海でマングローブが点在する景色が映像に出てきた。
その奇跡の藻は渡邉が沖縄のある場所で見つけた。エネルギー革命とは一見無縁に思えるこの場所。オーランチオキトリウムはマングローブの根っこでひっそりと暮らしていた。渡邉はそれを持ち帰り、次世代の燃料になることをつきとめた。
渡邉教授、(水中からの水をすくって)「上の方の細かい粒子は目に見えるもんじゃないから。これは小さいから目に見えない。大きさが15ミクロン(0.015ミリ)くらい」
肉眼で見えない藻をどうやって探すのか。
渡邉教授、(貝のようなものを持って)「こういうところに藻は付いていますよ。僕はね。ここに何千種類以上の藻は必ずいると思います」
藻は確認されているだけでも4万種。まだまだ未発見のものが多いという。
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新聞の記事 「生産能力10倍 『石油』つくる藻類、日本で有望株発見」という活字が映像に出てきた。
新聞がこのスクープを報じたのは去年の12月。藻からエネルギー革命を起こす男。渡邉に風が吹き始めた。
オーストラリア・アデレート大学は藻の研究で知られる。その権威デビット教授はこのニュースに驚いた。
デビット教授、「渡邉教授は非常に重要な藻を発見しました。これはすばらしい発見です。日本は産油国になれる可能性が十分ありますよ」
渡邉教授、「まさしく、日本は産油国になる」
たとえば、琵琶湖の3分の1、2万haでこの藻を培養すれば日本は石油は輸入する必要がないと渡邉は言う。用地は十分にある。全国で使われていない田畑、耕作放棄地。もしこれが油田になれば。
渡邉教授、「20万haで藻を生育しれば20億トンの石油生産が可能になる。世界の石油需要が50億トンですから、その40パーセントが日本で生産可能になるんです」
渡邉が力強く、笑顔で研究できたのは妻の途子さんが支えてくれたからだ。大学時代に出会い、結ばれた2人。途子さんの目に渡邉はどう映っているのだろうか。
途子さん、「オタクです。それだけは言えます。バックの中にいつもポリ瓶ですよ。トランクの中、リュックの中、いつもどこかに出かけるという時にはポリ瓶ですからね。やはり藻が好きな人間ですよね」
デートの時でも新婚旅行でも、渡邉はこのポリ瓶と藻を採集するスポイトを持ってきた。大学卒業後研究員となった渡邉。その頃の収入はスズメの涙。生活費は途子さんがまかなった。
日本を産油国にしたい。熱い思いを秘めた渡邉。次なる挑戦は奇跡の藻オーランチオキトリウムでエンジンを動かす。
バイオ燃料の混合濃度
エタノール 3%
脂肪酸メチルエステル 5%
日本では自動車などの燃料に混ぜているバイオ燃料の割合は3%が上限と定められている。
渡邉教授、「本当に今使っている割合(3%)で、藻の『石油』を入れたら動くのかという初めての実験なんです。これをやらなくちゃいけない」
最終目標は藻がつく油100%。そのための大事な一歩だ。研究室でプロジェクトがスタート。油を作るために最新のバイオ装置から、この中で15ミクロンの小さな藻が有機物を食べながら油を作っている。1ヵ月半後、石油とほぼ同じ成分を持つ油が出来た。
渡邉教授が油が入ったビーカーを持ち上げて、
渡邉教授、「やっと採れましたね。1.5Lあります」
取材スタッフ、「動きますか?」
渡邉教授、「当然、動きますよ。動かなかったらトラクターが故障しているんです」
ラクターの助手席に妻の途子さんを乗せて、満足そうにほほえみながら、トラクターを運転している渡邉教授の姿があった。

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『超ヤバい話 ―地球・人間・エネルギーの危機と未来』 長沼毅/著 さくら舎 2017年発行
大エネルギー論 より
日本の話に戻ります。日本はかつて発電量の3分の1は原発でした。いま原発の割合が減ったので、減った分を火力で補っています。火力で補うとどれだけわれわれはお金を余計に払うんでしょうか。そこで火力の燃料輸入費ですが、震災前2010年度は、3.6兆円火力用にお金を払っています。石油・石炭・天然ガス、これで3.6兆円でした。震災後の2012年は7兆円です。ほぼ倍増です。簡単に言えばこの差分を原子力で賄っていたのです。
原子力は3兆円もかからないよと、経済優先主義の人は絶対この話をします。「われわれは原発を使わないがために、倍近くも余計にカネを払っているんだ」と。これが経済屋さんの根拠です。みなさんもこの根拠は知っておいてください。原発をやめたせいで、いままでに比べて石油・石炭・天然ガスを輸入するお金が倍増しているのです。これをわれわれは容認できるのか・できないのかということです。
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プーチン北野幸伯著『日本自立のためのプーチン最強講義』)が言うのは、「日本は自立せねばならない。自立の根本は食料で、とりあえず日本人はコメを食っていればいい。日本の自給率でいちばんヤバイのはエネルギーだ」と。日本のエネルギー自給率はたったの4パーセント、96パーセントは輸入に頼っている。この状態では、いずれアメリカとか中国、ヨーロッパ、ロシアの言いなりにならざるを得ません。「そうならないためには」とプーチンが説くのです。この本は半分フィクションで、このフィクションの中でプーチンが説くのはこれです。
日本の周りの海底にはメタンハイドレートがあるでしょうと。海底をほじくればメタンがあるでしょう。それから微生物石油オーランチオキトリウムとかミドリムシとか榎本藻という微生物を使えば、ガンガンに油をつくるでしょう。微生物を使った産業は日本のお家芸だから、是非やれと。
メタンハイドレートに関しては、違った観点で言うと、メタンは化石燃料なので、これを燃やして出て来るCO2はカウントされます。だから京都議定書のほうには役に立ちません。ただ、安いメタンガスが手に入るということはあります。それから微生物石油、これは非化石燃料なので、これを燃やして出るCO2はカウントされません。
オーランチオキトリウムはどうでしょうね。たとえば日本の田んぼで使っていない休耕田でオーランチオキトリウムを培養しまくれば、日本は油を輸出できるようになるという話もあります。このあいだ民放の某番組で台本にそう書いてあって、そう言わされました。それからミドリムシ、これは何回も私はいろんなバラエティ番組で言っていますが、これも油をつくります。これがつくった油、あるいは榎本藻という藻でつくった油が、一部飛行機のジェット燃料の一部になっています。
だから、つくっている会社としては、「私たちのつくった油で飛行機が飛んでいます」と言うわけです。でも、実際にはごく一部です。それがだんだん増えていって、オール100パーセントのミドリムシ油で飛行機が飛ぶ時代が来るかもしれないけれど、それが近未来かどうかはわからないです。まあ、長い未来にはあるかもしれない、ということです。
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微生物石油、これは面白いですよ。これはいろいろな遊び方がある。たとえばミドリムシとか榎本藻というのは光合成しますから、太陽の光がなければダメですが、オーランチオキトリウム、これは太陽光線が要りません。これはしばしばマスメディアで「石油をつくる藻」と言われていますが、藻ではありません。光は要りません。暗黒でも育ちます。それどころか、なんと残飯とか家庭排水でも増えます。残飯とか家庭排水を食いながら石油をつくるのですから、これは面白い。光は要りません。
ただ、このへんはまだ研究開発途上なので、これからワサワサといろいろな情報が出てくると思われます。