じじぃの「科学・芸術_402_無形の資産」

資産

為末大・侍オフィシャルサイト Life Shift
・人生70年時代には人生を3ステージ制(学校期間、就労期間、引退期間)でよかったが、100年時代には成り立たない可能性が高い。その場合、5ステージ制(年齢にこだわらず学び直したり、転職したりする)などで、人生で何度か切り替えを経験する必要がある。
・人生の資産を、有形資産(お金など)、無形資産(技能など)、変化資産(多様な人脈など)でわけ、それらを適時に配分し直していくことが重要。特に無形資産をいかにして築くか。
・変化が激しいので、スキルが陳腐化するのが早い。同じスキルで2,30年生きるのは難しい。適度に自分の状況を客観視し、学び直したり、より自分にあった状況を作り直すべき。
http://tamesue.jp/blog/archives/think/life-shift
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』 リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット/著, 池村千秋/訳 東洋経済新報社 2016年発行
見えない「資産」――お金に換算できないもの より
あなたはおそらく、友人関係や知識や健康を「資産」と考えたことはないだろう。「資産」というのは、ほとんどの人が日常生活で使う言葉ではない。しかし、これらの要素を資産と位置づける発想は、100年ライフを生きるうえで欠かせないものだ。資産とは、ある程度の期間にわたり恩恵を生み出せるもののこと。言い換えれば、資産はある程度の期間存続するものである。そこで、長い先生を生きる人にとっては、資産管理が大きな課題になる。
資産はしばらく存続する可能性がある半面、たいていなんらかの形で価値が下落していく。使用したり、放置したりすれば、価値が減少するのだ。したがって、資産には、慎重なメンテナンスと投資をする必要がある。このように考えれば、友人関係や知識や健康を資産の一種と位置づけるべき理由が理解できるだろう。友情や知識は一夜では消滅はしないが、十分な投資を怠り、友だちと連絡を取らず、知識をリフレッシュしなければ、いずれは価値が下がり、ついには消失してしまう。
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学ぶことは人生の重要な要素であり、その価値は所得の源になることだけではない。南アフリカの黒人指導者であるネルソン・マンデラは、「教育は世界を変える最も強力な武器」だと喝破した。ここでマンデラの念頭にあったのは、GDPや所得のことではない。マンデラに従えば、学習の対象として選ぶべきは、自分が情熱を燃やせて、興味をもてるものごとであるのが賢明だ。しかし、大半の人にとって、所得の問題は無視できない。100年ライフでは、所得を確保することの重要性がいっそう大きくなる。情熱と関心をもつことができ、しかも十分な所得が得られそうな分野を見つけることは可能なのか?
抽象論のレベルでは、この問いに答えることは難しくない。目を向けるべきなのは、経済的な価値を生み出せて(言い換えれば、有益なものとしての需要があり)、しかも希少性があるスキルや知識だ。大学院教育を受ける人が増える背景には、希少性への期待がある。また、ライバルより優位に立つために、スキルや知識は摸倣困難まものでなくてはならない。そしてもう1つ、機械によって代替されにくい必要もある。テクノロジーの進歩により、この最後の条件を満たすことがとりわけ難しくなりつつある。どのスキルや知識が機械に代替されにくいかという点は、学習と教育に関する選択をするうえで最も難しい要素だ。
いま最も注目を集めているのは、機械学習人工知能の進歩だ。これらの分野で大きな進歩が実現したときにも価値を失わないのは、どのようなスキルや知識なのか? そうしたスキルや知識は、どのように身につければいいのか? 一般論としては、テクノロジーがさらに進歩した時代に、教育と学習と研修がキャリアを後押しする方法は3つある。1つは、新しいアイデアと創造性をはぐくむのを助けること。もう1つは、人間ならではのスキルと共感能力を発揮できるようにすること。最後の1つは、思考の柔軟性と敏捷性など、あらゆる分野で通用する重要な汎用スキルをはぐくむことだ。