じじぃの「科学・地球_214_5000日後の世界・楽観主義・プロトピア」

Kevin Kelly: What life might be like after 100 years?

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=nNDSoauQWFw

protopia

Curiosity with Gusto
Kevin Kelly describes twelve inevitable forces in his most recent book “The Inevitable“. The sketch above summarizes the main insights of the first chapter on “Becoming”.
Kelly is convinced that neither utopia nor the dark opposite dystopia are our destination; “Protopia” - a world with incremental improvements is a world we have already arrived.
https://www.harling.de/blog/tag/protopia

5000日後の世界 すべてがAIと接続された「ミラーワールド」が訪れる

ケヴィン・ケリー(著)
『WIRED』誌創刊編集長として長年ハイテク業界を取材していたケヴィン・ケリー氏に言わせれば、今ほど新しいことを始めるチャンスにあふれている時代はない。
はじめに
第1章 百万人が協働する未来
第2章 進化するデジタル経済の現在地
第3章 すべての産業はテクノロジーで生まれ変わる
第4章 アジアの世紀とテック地政学
第5章 テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる
第6章 イノベーションと成功のジレンマ

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『5000日後の世界』

ケヴィン・ケリー/著、大野和基/インタビュー、服部桂/訳 NHK出版 2021年発行

第5章 テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる より

学び方を学ぶスキルが必要だ

われわれは誰もが少しずつ違った形で学んでいます。勉強を繰り返す間に十分な睡眠を必要とする人、手を動かした方がいい人、聞いて学ぶ方がいい人、実際に行動した方がよく学べる人もいます。学ぶまでに同じことを5回繰り返す人も、4回で済む人もいるでしょう。しかし、まずは自分の学び方のすたいるを迅速に最適化する訓練をして、どうすれば最速で深く学べるかを意識し、理解しなければなりません。
「どうやって学ぶかを学ぶ」というのは究極のスキルで、大学を卒業して就職するまでに誰も教えてはくれません。例えば、これからどういうプログラミング言語を学ぼうか考えたとき、現在主流のものは5年後には聞こえるかもしれません。あなたが本当に就きたい仕事は、いまはまだ存在しないかもしれない。
こうした変化しやすい世界では、一生の間に何度も物事のやり方を変えなくてはならなくなるでしょう。以前にやったことをいったん忘れて、新たに何度も学び直さなければならなくなるのです。自分にとって1番得意な方法で、適応して学ぶ能力を持つことが最も重要なスキルになる理由は、そこにあります。
現在のところこうしたことを学べる学校やカリキュラムはないし、そのスキルは未知のものです。とはいえ、学校での勉強は無駄だと言っているのではなくて、まったくその逆です。より多くの人が「学び方を学ぶ」スキルを身につけるためには、多額の投資をして努力を重ねなくてはならず、多くの人が関わらなくてはなりません。
学び方を学ぶには、まずは個別分野を学ぶ必要があり、そこで新しい知識を獲得するためお読み書きを身につけるのです。ある分野を手がけるうちに、微積分や統計のような関連手法を学ばねばならなくなり、自然と学べる場合もあるでしょう。
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成功した多くの人々のほとんどが、紆余曲折した道を歩んでいます。そうした人は、生まれてそのまま進路がわかっていて、すぐさま突き進んだと考えられがちですが、一直線に進んでいる人などいません。回り道をして関係のない経験をすることで、以前には誰も考えなかったようなもの同士を結び付けることができ、その結果とても価値のあるものを創り出しているのです。まるで興味のないことにも触れてみる経験が、時間が経って非常に強力な結びつきを生むことにつながるのです。
とはいえ私自身も、まだとてもその境地には達しておらず、模索しながら勉強中としか言えません。しかしそれを追求し続けたことで、自分のキャリアとは違うところで発見をしたと思っています。自分のキャリアにとって必ずしもプラスにならないものでも、興味深いプロジェクトだったら進んで加わったのです。そこでデザイン思考的なアプローチを余儀なくされて、学び続けるようになりました。本なんて書いたこともなかったのに、本を書く契約も受けました。動画など撮ったこともないのに、動画のシリーズを作りました。触ったこともないポッドキャスト(「Podcast」は、「iPod」と「broadcast」が組み合わさった造語。音声や動画などのデータをネット上に公開する手段のひとつ)も始めました。まったく新しいプロジェクトに挑んできたので、いつも新しいことを学ぶはめになったのです。

「プロトピア」を思考せよ

私は非常に楽観主義者で、自分が創刊に携わった雑誌『WIRED』も世界が何と言おうが楽観主義を貫いており、それはほとんど信仰や信念に近いものです。それは実際、コップに水が半分入っているのを見て、「半分も入っている」と考えるか「半分しか入っていない」と考えるかの違いでしょう。
「まだ半分も入っている」と考える発想によって、われわれは未来をより良くすることができます。まず初めに自分が生きていたい未来を想像することができれば、より簡単にそれを実現していくことができると思うのです。未来が今日よりも良くなると考えることは可能性の話に過ぎませんが、まずその姿を想像してかかった方が、ずっと楽に実現できるということです。ある種の能動的な想像力とでも言いましょうか。
とはいえ、その未来はいわゆる「ユートビア」を指しているのではありません。私は「プロトピア(protopia)」という言葉を使っています。

すべてが完璧な世界を想像しているわけではなく、今日よりほんの少しだけ良い状態を想像しようという話です。

これはプログレス(progress=進歩)からの「プロ」という言葉にトピア(場所)を付けた造語です。