じじぃの「科学・芸術_390_フロイト『夢解釈』」

サイエンスZERO No.455 心の中が丸見えに!脳内イメージ研究最前線 2014年2月9日 動画 Dailymotion
http://www.dailymotion.com/video/x4osz2p
[ScienceNews2013]夢を可視化する 脳情報デコーディングの試み 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ar1Itso5piA
脳活動を解析して再現させた画像

夢解釈 〈初版〉上 (中公クラシックス) フロイト著、金関猛訳 Amazon
睡眠中に見た夢は何を表すか。人はなにゆえ夢を見るのか。潜在意識を神経病理学から解析検証し、人間の想念=意味を問い直す。

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『フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する』 ミチオ・カク/著、 斉藤隆央/訳 NHK出版 2015年発行
夢のなかに より
夢が運命を決することもある。
古代、最も有名な夢といえば、西暦312年のローマ皇帝コンスタンティヌスが人生最大規模の戦いに臨んでいたときに見たものかもしれない。自軍の倍の軍勢と対峙したコンスタンティヌスは、翌日の戦いで自分は死ぬだろうと覚悟した。ところがその晩、夢に天使が現れ、十字架の印を携えて「汝、この印にて勝利すべし」と運命的な言葉を発したのである。コンスタンティヌスはすぐさま自軍の盾を十字架の印で飾るように命じた。
歴史によれば、翌日、彼は勝利を収め、ローマ帝国の支配を確かなものとした。そして、比較的マイナーだったこのキリスト教という宗教への血債を償うことを誓った。キリスト教はそれまで数世紀にわたり代々ローマ皇帝に迫害され、信者はたびたび円形闘技場でライオンの餌にされていたのだ。コンスタンティヌスが署名した法律によって、のちに世界屈指の大帝国で公式の宗教となる道がつけられたのである。
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夢は久しく予言と結びつけられてきたが、近年では、科学的な発見のきっかけになることも知られている。神経伝達物質シナプスを通る情報の移動を助けるというのは神経科学の基礎であり、薬理学者のオットー・レーヴィがその考えを思いついたのは夢のなかでのことだった。同様に、1865年、アウグスト・ケクレはベンゼンの夢を見た。夢のなかで、炭素原子が結合して鎖を作り、その鎖がやがて巻きついてついには環となり、まるでヘビが自分の尻尾をくわえているようになったという。この夢がベンゼンの分子構造の解明につながったのだ。ケクレは「夢から学ぼう!」と話を結んでいる。
夢はまた、われわれの本心や本音を覗く窓とも考えられてきた。ルネサンス期の偉大な作家にして随筆家のミシェル・ド・モンテーニュはかつて、「確かに夢はわれわれの意思を忠実に解釈するものだとは思うが、その夢を分類するのは必要なわざがある」と書いている。さらにそのあと、ジークムント・フロイトは、夢の根源を説明する理論を提唱している。代表作『夢解釈』(金関猛訳、中央公論社)でフロイトは、夢とは意識下の欲望の表れであり、この欲望は目覚めているときにはたいてい抑圧されているが、夜になると暴れだすのだと主張した。夢は行きすぎた想像がでたらめに生み出した単なる作り事ではなく、実は胸の奥深くにある秘密や自分自身についての真実を暴くものなのかもしれないわけだ。「夢は無意識への王道である」とフロイトは書いた。以来、人々は、気がかりな夢のひとつひとつに隠された意味をフロイト理論で明かそうとする大部の事典をいくつも作ってきた。
ハリウッドは、われわれが抱きつづけている夢への関心をうまく利用している。数々の映画が好んで使うのは、ヒーローが恐ろしい夢を見て冷や汗まみれではっと目覚めるシーンだ。大ヒット映画『インセプション』では、レオナルド・ディカプリオが、思いもよらぬ場所――他人の夢――から秘密を盗むこそ泥を演じている。
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しかし、夢はいつでもわれわれを悩まし、惑わしてきたというのに、科学者が夢の謎のベールをめくりだしたのはこの10年ほどにすぎない。実は、科学ではいまや、以前は不可能と考えられていたことができる。MRI装置で夢のおおまかな写真やビデオが撮れるのだ。いつの日か、前の晩に見た夢のビデオを見て、自分の意識化の心を知ることができるようになるかもしれない。しかるべき訓練をすれば、自分の夢の内容を意識的にコントロールできるようになるのではないか。そしてディカプリオが演じた主人公のように、先進技術によって他人の夢に入ることさえ可能になるかもしれない。