じじぃの「科学・芸術_385_オンディーヌの呪い」

『オンディーヌの呪い』予告編 ◆SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015 短編部門 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=G55HqYxSH6A

「眠ったら、死んでしまう」難病少年レオに生まれた希望 2015年02月24日 ハフポスト
先天性中枢性肺胞低換気症候群、別名「オンディーヌの呪い」にかかっている人はほとんどいない。きわめてまれな遺伝子疾患だ。
その数少ない不運に見舞われレオは誕生した。医師らは最悪の事態を予測した。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/02/24/our-curse_n_6741210.html
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』 リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット/著, 池村千秋/訳 東洋経済新報社 2016年発行
序章 100年ライフ より
どのように人生を組み立てるかというのは、本書の主たるテーマの1つだ。20世紀には、人生を3つのステージにわける考え方が定着した。教育のステージ、仕事のステージ、そして引退のステージである。しかし、寿命が延びても引退年齢が変わらなければ、大きな問題が生じる。ほとんどの人は、長い引退生活を送るために十分な資金を確保できないのだ。この問題を解決しようと思えば、働く年数を長くするか、少ない老後資金で妥協するかのどちらかだ。いずれの選択肢も魅力的とは言い難い。これでは、長寿が厄災に思えたとしても無理はない。
フランスにこんな寓話がある。妖精のオンディーヌは、いびきをかいて眠りこけている夫のパレモンが不貞をはたらいたことに気づいた。怒り狂ったオンディーヌは、夫に呪いをかけた。起きている間は生きていられるが、眠ればその瞬間に死ぬ。パレモンはこれ以降、目が閉じることを恐れて、一瞬の休みもなしに働き続ける羽目になったという。
既存の3ステージの人生のモデルのまま、寿命が長くなれば、私たちを待っているのは「オンディーヌの呪い」だろう。永遠に働き続ける運命を背負わされたパレモンと同じように、私たちはそれこそ永遠に働き続けなくてはならなくなる。どんなに疲れ切っていても、立ち止まれば生きていけないのだから、人生は「不快で残酷で短い」という、17世紀の政治思想家トーマス・ホップスの言葉は有名だ。これよりひどい人生は1つしかない。不快で残酷で長い人生である。それは厄災以外の何者でもない。休む間もなく、働き続け、退屈な日々を過ごし、エネルギーを消耗し、機会を生かせzy、そして最後には貧困と後悔の老後が待っているのだ。
しかし、長寿を厄災にしない方法はある。多くの人がいまよい長い年数働くようになることは間違いないが、呪われたように仕事に追いまくられ、疲弊させられる未来は避けられる。3ステージの人生の縛りから自由になり、もっと柔軟に、もっと自分らしい生き方を選ぶ道もある。仕事を長時間中断したり、転身を重ねたりしながら、障害を通じてさまざまなキャリアを経験する――そんなマルチステージの人生を実践すればいい。「オンディーヌの呪い」を避け、長寿を恩恵にする方法はこれしかないと、本書では考える。ただし、このように人生を組み立て直すのは簡単ではない。私たち一人ひとりも大きく変わる必要があるし、企業など雇用主や、社会と国家も大きく変わる必要がある。