じじぃの「科学・芸術_369_映画『ビューティフル・マインド』」

ビューティフル・マインド(字幕版) 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0ivVt722swM

数学者ジョン・ナッシュ夫妻の訃報 2015年05月26日 ニューズウィーク日本版
ジョン・ナッシュ氏と言えば、著名な数学者であると同時に、ゲーム理論に関して大きな功績を残したことで有名です。特に彼の証明した「ナッシュ均衡」というのは「ゲーム参加者の相互が非協力的」である場合、例えば「囚人のジレンマ」のようなケースで、個々のプレーヤーが自分の選択によって利得を最大化することの限界を数学的に証明したものとして、よく知られています。
出身はウェストバージニア州。学士と修士カーネギー工科大学(現在のカーネギーメロン大学)、博士号はプリンストンで、西海岸のシンクタンクであるランド研究所、MITの教員を経てプリンストンの教員となっています。
その生涯は映画『ビューティフル・マインド』(ロン・ハワード監督、ラッセル・クロウ主演)並びに、その原作で描かれており、統合失調症による闘病生活、そしてアリシア夫人との夫婦関係といったエピソードも含めて世界的にも広く知られることとなりました。
ですが数奇な運命を辿ったこの夫婦が、最後は高速道路での事故、しかも即死に近いかたちで一緒に亡くなった、それもノルウェーアーベル賞を授賞された帰途だったというのは、ある種幸福なエンディングだったという考え方もできるかもしれません。ナッシュ氏は86歳、MIT時代の教え子であったアリシア夫人は82歳でした。
http://www.newsweekjapan.jp/reizei/2015/05/post-743.php
『最新脳科学で読み解く 脳のしくみ』 サンドラ・アーモット+サム・ワン/著、三橋智子/訳 東洋経済新報社 2009年発行
映画でみる総合失調症――『ビューティフル・マインド より
ビューティフル・マインド』は実在の数学者ジョン・ナッシュの人生を映画化したもので、総合失調症に侵されていくナッシュの体験が克明に描かれている。
映画のナッシュは(いくらか脚色されているけど)幻覚に襲われ、無関係な出来事に因果関係があると考えるようになる。さらに周囲の人たちの言動について猜疑心がつのり、そうした妄想をきっぱり振り払えないために、同僚、家族、恋人としだいに疎遠になっていく。
これらは総合失調症の典型的な兆候だ。この障害は、病気、けが、遺伝的要因などによって脳に変化が生じることで起きる。10代後半から20代前半に発病することが多く、女性よりも男性がなりやすい。
100人に1人は、一生のどこかの時点で総合失調症の症状を経験している。映画のなかのナッシュを襲う幻覚は視覚的なものだけど、現実のナッシュは、似たような幻覚を音として聴いている。
この映画の大部分は科学的に正確。でも、ひとつ重大なまちがいがある。それは献身的な女性の愛によってナッシュの病が治ってしまうこと。総合失調症はそんなロマンチックじゃない――脳の物理的障害だからね。
もちろん、ある程度の回復は期待できる。症状と症状の合間は正常な患者もいるし、6人に1人は症状が消えてしまう。こうした「寛解」の理由は、いまのところわかっていないけどね。
この映画のまちがいから思い出すのは、「総合失調症は母親の愛情不足が原因」という古い神話。この説は裏付けがないし、証拠によって否定されている一方で、総合失調症患者の母親や他の家族にいわれない罪悪感をもたらしている。