じじぃの「科学・芸術_361_世界初・クオーツ腕時計」

The Best Quartz Watches On The Market 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=wqAzArCsisQ
世界初のクオーツ腕時計 「クオーツアストロン
(serai.jp HPより)

そして世界初のクオーツ腕時計は生まれた!伝統と革新を重ねるセイコーの腕時計づくり 2016年08月24日 サライ.jp
昭和40年代初頭、既に日本の機械式腕時計の技術は世界最高水準にありましたが、昭和44年(1969)、満を持してセイコーから世界初のクオーツ腕時計「クオーツアストロン」が発売されました。
クオーツ腕時計は、水晶に電気を流すとクオーツ(水晶)が等間隔で振動する性質を利用し、1秒という時間を刻む時計です。それまでの一般的な機械式腕時計は“日”差数十秒でしたが、「クオーツアストロン」は“月”差±5秒まで、一気に精度を高めることに成功しました。
https://serai.jp/hobby/82603
『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』 織田一朗/著 ブルーバックス 2017年発行
電子技術で誕生したクオーツ、デジタル時計 より
クオーツ時計の心臓部となる水晶(クオーツクリスタル)は、金属音叉とは桁違いに高い振動(1秒間に数千〜数百万回)を得られるのが特徴です。
1880年に、トルマリンという貴石(今日では「電気石」と呼ばれる)に圧力を掛けると、石の両面に電気が発生する「圧電効果」を発見したのは、フランス人のジャックとピエールのキュリー兄弟でした。翌年には物理学者のリップマンが、電圧を加えると「電気石」にひずみが生じることを発見史、「逆圧電効果」と名付けました。その後、ドイツ人のギーベやシャイベらが約30種の結晶体を研究し、水晶が「逆圧電効果」に顕著に反応することと、安定性が高いことを発見しました。
1922年に米国のキャディが水晶を特定のサイズに切り取ることで、決められた振動数を発振する振動子の試作に成功すると、無線通信用など発振器への応用が盛んに試みられるようになりました。
これを時計に応用しようと考えたのは、米国ベル研究所のウォーレン・マリソンです。マリソンは大変な勉強家だったようで、「35年間でノート2000ページと100以上の技術論文を書き、研究室で2000件以上の開発に携わり、70件の特許を取得した」(全米時計収集者境界会報に1989年掲載の私信)と書いています。その中には、「周波数精度の決定」「周波数の高精密基準」「クオーツ時計における現代の発展」などの論文も含まれ、1927年には水晶時計の試作品もつくりました。
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そして、1947年にトランジスターが発明されると、状況は大きく変わりました。大量の真空管トランジスターに置き換えることで、水晶時計は大型ロッカー並に小さくなり、真空管の球切れがなくなったことで常時運転が可能になり、研究所や天文台などで、「時間標準器」として使われるようになったのです。
日本でも、1950年代末から、精工舎が放送局の時報用装置として、製造・販売を始めていますが、ここでまた、日本人が重要な発見をします。
精工舎が初めて製造した商業用水晶時計は、中部日本放送CBC)に、1959年に納入しました。振動子は高精度を出せる4.8メガヘルツのATカット(日本人が関わっている)ですが、分周回路には特性を十分に把握している真空管を採用したため、摂氏60度を保つ恒温槽に入れました。サイズは高さ2メートルX奥行0.5メートルと、和だんすほどの大きさになり、精度は日差0.08秒以内という高精度でした。
ところが、納品から数ヵ月後に、CBCから「時間が経つと、精度が良くなる」との報告が入ったのです。CBCの担当者が記録していた綿密なデータなどを調べてみると、納入時よりも週を追って、精度が高まっています。データを工場に持ち帰って詳しく分析してみると、水晶に通電を続けていると、振動数が安定する「経時変化」の特性があることが判明したのです。
これらの経験を踏まえ、精工舎水晶振動子製造過程で、振動子にあらかじめ電気を通電し、振動を安定させる「エージング」という作業を加えるようになりました。1960年には、高さ20センチメートルX幅25センチメートルX奥行50センチメートル、重さは16キログラムというコンパクトさでありながら、日差0.8秒という高精度の水晶時計を完成し、放送局以外にも研究所、鉄道会社、船舶などでも標準時計として使われるようになります。
世界初の家庭用水晶時計も精工舎でつくられ、1968年に発売されました。
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その後も、水晶振動子の製造方法の革新、部品のユニット化など、クオーツ時計はさまざまな改良が加えられたことで、機械式時計の100倍の精度を実現しながら、機械式時計を下回る価格と購入後の使いやすさで人気を集め、発売から10年も経たないうちにクオーツ時代を実現できたのです。