Civilization Spreads from the Fertile Crescent 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=usKzKbUJDHU
肥沃三日月地帯(Fertile Crescent)
イラストでわかる『銃・病原菌・鉄』 2016-01-22 orangestarの雑記
『人の移動や技術の伝播は水平方向は早いが、縦方向には遅い』んですね。
水平方向の移動、つまり東西に移動する場合には、気候の変化、昼夜の時間の変化はあまりありませんが、南北に移動する際にはその気候の変化、昼夜の変化に対応しなければなりません。人間の淘汰によって身体が厚さ寒さに耐えられるように変化するのを待つか、服、が発明されるのを待つんですね。
http://orangestar.hatenadiary.jp/entry/2016/01/22/073000
『銃・病原菌・鉄 (上) 』 ジャレド・ダイアモンド/著、倉骨彰/訳 草思社 2000年発行
大地の広がる方向と住民の運命 より
西南アジア(肥沃三日月地帯)を起源とする食料生産がどのように広がっていったかを考察してみよう。食料生産は肥沃三日月地帯から東西の周辺地域にむかって波状的に急速に広がっていき、それからまもない紀元前8000年になるかならない頃に、早くも西ユーラシアの遠方や北アフリカで見られるようになっている。図は、食料生産がどのように拡大していったかを示すために遺伝学者のダニエル・ゾーハリーと植物学者のマリア・ホフがまとめた地図をもとに作成したものだが、この図を見ると、食料生産が肥沃三日月地帯から波状的に広がっていったのがわかる。食料生産は紀元前6500年頃にギリシャ、キプロス、そしてインド亜大陸にまで広がっている。そして、その直後の紀元前6000年頃にはエジプトに、紀元前5400年頃には中央ヨーロッパに、紀元前5200年頃には南スペインに、そして紀元前3500年頃には英国にまで到達している。
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肥沃三日月地帯の作物は、どうしてそんなに速い速度で伝播していったのだろうか。これには、この章のはじめの部分で指摘した、ユーラシア大陸が東西の方向に横長であることが影響している。東西方向に経度が異なっても緯度を同じくするような場所では、日の長さ(日照時間)の変化や、季節の移り変わりのタイミングに大差がない。風土病や、気温や降雨量の変化、そして分布植物の種類や生態系も、日照時間や季節の移り変わりほどではないにしても、よく似たパターンを示す傾向にある。たとえば、ポルトガル、イラン北部、そして日本は、東西にそれぞれ4000マイル(約6400キロ)離れているが、ほぼ同緯度に位置しているので、南北に1000マイル(約1600キロ)離れた場所同士よりも気候的に似たところが多い。生態系のひとつである熱帯雨林は、どの大陸でも緯度が南北10度以内の範囲にしか存在しない。カリフォルニアのチャバラルやヨーロッパのマッキーのような地中海性の灌木林も、緯度が南北30〜40度のあいだのところしか分布していない。
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肥沃三日月地帯の農業が西はアイルランドから東はインダス渓谷にわたる温帯地域に急速に伝播できたのは、ユーラシア大陸が東西方向に経度的な広がりを持つ陸地だったからである。肥沃三日月地帯の農作物が、東アジアで独自に起こった農業にさらなるいろどりを添えた理由も同じである。肥沃三日月地帯から遠く離れた地域で独自に栽培された作物が肥沃三日月地帯にむかって伝播したのも、これらの地域がすべて同じ緯度地域に伝播したからである。現代は農作物の種子が船や飛行機で運ばれる時代である。そのためわれわれは、外国原産の植物を口にすることを当然のように思っている。たとえばアメリカ人は、ファストフード・レストランに行って、中国で家畜化された鶏の肉、アンデス地方原産のジャガイモ、メキシコ産のトウモロコシをインド原産の黒胡椒で味つけしたものを、エチオピア原産のコーヒーを流し込む。そしてこれと同じことを、ローマ人もまた2000年前にしていた。彼らも外国産の農産物を主材料とする食事をとっていたのである。ローマ人が口にしていたものでイタリア原産だったのは、エンバクとケシだけである。彼らの主食の大部分は肥沃三日月地帯の起源作物であった。コーカサス地方原産のマルメロ、中央アジアで栽培されたキビやクミン、インド原産のキュウリ、ゴマ、柑橘類、中国原産の鶏の肉、米、アンズ、モモ、アワなどをローマ人はおもに食していた。リンゴは西ユーラシア原産であるが、中国で生まれた接ぎ木の技術が西に伝播してからローマで栽培されるようになったものである。
ユーラシア大陸には、世界でもっとも幅の広い同緯度地帯があるので、農作物がもっとも劇的に伝播したと思われる。しかし、農作物の東西方向への広がりが速かった例はほかにもある。たとえば、最初に中国南部で栽培化されたり家畜化されたあと、熱帯の東南アジアやフィリピン、インドネシア、ニューギニアなどで新たな品種が栽培化・家畜化されるようになった亜熱帯性作物や家畜類は、肥沃三日月地帯の作物に比肩する速度で東方に広がっている。その結果、バナナ、タロイモ、ヤムイモといった農作物や、鶏、豚、犬といった家畜類は、1600年たたないうちに中国南部から5000マイル(約8000キロ)以上離れたポリネシアの島々にまで伝わった。