Mother Goose-King Arthur-アーサー王 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=hTJk9XQr7VE
アーサー王
忘れられた巨人 カズオ イシグロ (著) 2015年 Amazon
これまで、「日の名残り」や「私を離さないで」など読んできて本作を読みました。読み始めてすぐに感じたのは、「これは本当にイシグロの作品なのか?!」ということでした。それほど、一見しただけでは、本作はイシグロらしくないのです。
第一にイシグロ特有の一人称の語りではなく、全知の語りで物語が展開されていくからです。加えて、アーサー王をはじめとする5世紀(6世紀)を舞台に、当時のブリテン人とサクソン人という人種間の争い。記憶を取り戻すのか、それとも忘れたままでいたほうがいいのか。などなどファンタジーの要素が満載の作品になっています。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
『ウェールズのまっかなホント』 ジョン・ウィンターソン・リチャーズ/著、桜内 篤子/訳 マクミランランゲージハウス 2000年発行
英語に訳せないウェールズ語の詩 より
ウェールズの文化で合唱以外に目立ったものといえば詩であろう。他のウェールズのものの多くがそうであるように、詩もまとまりに欠ける。ウェールズ語で書かれた詩と英語で書かれた詩があることもその理由のひとつだ。
ウェールズ語の詩にはケルトの吟遊詩人たちにさかのぼる古い歴史があり、それはウェールズ人の生活の大事な一部を占めていた。イングランドの学者たちはたちてい無視するが、ウェールズ語の詩がヨーロッパ文化に及ぼした影響には大きなものがある。中世のロマンスの原型となったアーサー王伝説をつくりあげたのもウェールズ人であり、そのアーサー王もウェールズ人であった可能性が強い。
ウェールズ語の詩は、豊富な語彙と、韻よりリズムに重きを置くことで知られる。しかし、ウェールズ人が自慢するように英語に翻訳するのは不可能に近い。英語では表現しきれない言葉が多すぎるのだ。
英語で書かれたウェールズ人の詩は、最大の特徴であるウェールズ語を使っていない点んで物足りないが、伝統は生かしている。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
愛の命令に従おうとしない者は、大きな過ちを犯す 『ランスロまたは荷車の騎士』(1175年〜1181年)クレティアン・ド・トロワ より
ホメロスとウェルギリウスにはじまる叙事詩の伝統は、中世を通して、南フランスのトルバドゥールやそのほかの地中海沿岸の国々の吟遊詩人たちが書いたり歌ったりした武勲詩として生きつづけた。中世の叙事詩は、勇敢なおこないや古代における戦い、すなわちムーア人などのイスラム教徒との戦争を題材にしている。しかし、12世紀になると、こうした騎士やその冒険の物語はちがった性格を帯びはじめ、軍功に代わって騎士道的愛が重要なテーマとなり、英雄的行為よりも気品あるおこないに重点が置かれるようになった。
・
クレティアンはアーサー王伝説をフランスの人々に紹介しただけでなく、騎士道物語という概念を一新した。『ランスロまたは荷車の騎士』では、それまであまり知られていなかった登場人物ランスロット(フランス語ではランスロ)に光をあてている。ランスロットの探求は本質的にロマンチックであり、王妃ギネヴィアの名誉を守ることによってみずからの高潔を示す。
メレアガンの悪の手からギネヴィアを救い出す使命を負ったランスロットは、数々の冒険に乗り出す。ランスロットは当然ながらメレアガンと対決することになり、最後には勝利するが、そこにはギネヴィアへの求愛もからんでくる。けれども、すべてが思いどおりになるわけではない。誤解や嘘が重なり、ギネヴィアの態度も二転三転する。ランスロットは罪人用のふつうの二輪馬車に乗せられるという不名誉を味わい、一時は牢屋にまで入れられる。だが最後にはランスロットとその愛が勝利し、ギネヴィアの名誉とランスロットの高潔は守られる。
クレティアンの叙事詩への革新的なアプローチは、この時代の空気と一致していた。古い武勲詩はまだ人気を保っていたものの、ヨーロッパじゅうの詩人が新しいスタイルを採用し、アーサー王伝説をテーマとした詩を書いた。詩人たちはこぞって、ランスロットとギネヴィアや騎士トリスタンとその恋人イゾルデのような恋人たちの詩を書き、また聖杯伝説を題材にする詩人もいた。しかし、叙事詩は13世紀に衰退しはじめて、アーサー王伝説は散文で語られることが多くなり、トマス・マロリーの『アーサー王の死』でそれが頂点に達する。