じじぃの「科学・芸術_251_小説『不思議の国のアリス』」

ウォルト・ディズニー(Walt Disney) - ふしぎの国のアリス(Alice In Wonderland) Part1 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Bkr2GOhANYM
ALICE THROUGH THE LOOKING GLASS | Through The Mirror | Official Disney UK 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Gkq79ttPVZ8
第95回欽ちゃんの仮装大賞 視聴者投票1位 3位 2018年 17番 不思議に国のアリス 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=UWpKnPzkXR4
不思議の国のアリス

鏡の国のアリス

『フューチャー・オブ・マインド 心の未来を科学する』 ミチオ・カク/著、 斉藤隆央/訳 NHK出版 2015年発行
光速を超える? より
アインシュタインは、ある意味で、町の警官のように、光速を超えてはいけないと言っている。光速は宇宙の究極の速度だというのだ。じっさい、天の川銀河を横断するには、レーザー光線にのって行っても10万年はかかる。旅人には一瞬の出来事だが、故郷の惑星では10万年の時が進んでいる。さらに、銀河と銀河のあいだを渡るには、数百万年から数十億年を要する。
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1935年、アインシュタインとその助手ネイサン・ローゼンが、ふたつのブラックホール解は結合双生児のように背中合わせにつながるもので、片方のブラックホールに落ちれば、理論上はもう片方から出てこられる、という可能性を示した(ふたつの漏斗の先をつなぎ合わせたものを考えよう。片方の漏斗に入った水は、もう片方から出てくる)。アインシュタインーローゼン橋とも呼ばれるこの「ワームホール」は、宇宙と宇宙のあいだに玄関や門がある可能性を持ち込んだ。アインシュタイン自身は、人がブラックホールを通り抜けられる可能性を、その過程で押しつぶされてしまうという理由で退けた。ところが、その後いくつかの進展があり、ワームホールを抜けて超光速旅行ができる可能性が出てきた。
まず、1963年に数学者のロイ・カーが、回転するブラックホールは、それまで考えられていたようにつぶれて1点になるのではなく、回転するリングになることを発見した。回転があまりにも速いので遠心力が強く働き、ブラックホールがつぶれるのを防ぐのだ。もしリングに落ちてなかを通り抜ければ、別の宇宙に行ける可能性がある。重力は大きいが、無限大ではない。これは、アリスの鏡に似ている。その鏡に手を突っ込めば、別の世界へ火っていけるのだ。鏡の枠が、ブラックホールそのものを形成しているリングにあたる。カーの発見以降、アインシュタインの方程式に対するほかの多数の解で、理論上、人がすぐに押しつぶされずに宇宙から宇宙へ抜けられることが示されている。これまで宇宙に見つかっているブラックホールはどれも高速で回転しているので(時速160万キロメートルと測定されたものもある)、こうした宇宙の門はどこにでもあるのだろう。

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『世界文学大図鑑』 ジェイムズ・キャントンほか/著、沼野充義/監修 三省堂 2017年発行
きみょーよ、とってもきみょーよ! 『不思議の国のアリス』(1865年)ルイス・キャロル より
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、移動向けの物語が最盛期を迎えた。イギリスの作家トマス・ヒューズの『トム・ブラウンの学校時代』(1857年)が学園小説という形式を生み出し、アメリカの作家ルイーザ・メイ・オルコットの『若草物語』(1868年〜69年)のような成長物語も登場した。そのほか、スイスのヨハンナ・シュピリによる『アルプスの少女ハイジ』(1880年〜81年)やスコットランドのJ・M・バリーによる『ピーターパン』(1911年)などの古典的名作がこの時期に生み出された。
不思議の国のアリス』は、全盛期の作品のなかで最も後世に影響を与えた作品である。英語で書かれた初の児童文学の傑作とされており、その現実離れした内容から、当時主流であった写実主義文学からの脱皮が印象づけられることとなった。1862年7月のある日、若い数学者チャールズ・ドジソンが、男友達と3人の幼い姉妹とともにオックスフォードに近いテムズ湖畔へボート遊びにでかけた。そしてアリスという名の少女(ボートに乗っていた少女の名もアリス・リデルという)の物語を語り聞かせたのだった。こうして『不思議の国のアリス』が生み出され、その後ルイス・キャロルというペンネームで出版された。
物語のなかで、7歳のアリスはウサギの穴に落ち、気づくと非現実的な世界に迷い込んでいる。その世界では、不思議な生き物が奇妙なふるまいをし、変な出来事がつぎつぎ起こり、ことばの法則も通常とは異なっている。それこそがこの物語の特徴であり、主題でもある。
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この作品ほど感受性が豊かで、機知に富み、生き生きとしたファンタジーとなると、隠された意味についての数々の疑問も呼び起こす。たとえば、作中ではよく食べ物が不安をもたらすが、キャロル自身が摂食障害に苦しんでいたのではないかとも考えられる。キャロルはオックスフォードで教えていた数学は古典的な分野であり、当時は抽象的な数学論が登場しはじめていたので、作中に奇妙な論理が出てくるのは新しい数学に対するあてつかや批判だという可能性もある。
たとえそのように個人的な含意があったとしても、アリスの冒険の普遍性が損なわれることはない。それは、この作品の基調にある子供の傷つきやすさというテーマは、キャロルの時代だけでなく現代にも通じるものだからである。
キャロルは1871年に、アリスが登場するよく似た第2の物語を発表する。『鏡の国のアリス』だ。この物語にも、印象的なキャラクター(セイウチや大工、トウイードルダムとトウイードルデイなど)が登場し、ナンセンスな詩や、あべこべな論理を楽しむ軽妙な格言が盛り込まれている。