じじぃの「科学・芸術_833_相対性理論・ブラックホールの特異点」

Black Hole - Finding Singularity

動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=An6eUapQmx4

Structure of a black hole

ブラックホール

宇宙ワクワク大図鑑
ブラックホールはからっぽ?
ブラックホールの中心には特異点と呼ばれるとてもとても重い点があり、その周りには何もありません。
ブラックホールとされる黒い球は、光が脱出できなくなる境目であり、シュバルツシルト半径と呼ばれています。そのシュバルツシルト半径に入ったものは特異点に全て吸いこまれてしまうため、真っ黒でからっぽの空間ができてしまうのです。
その中心の特異点が重くなればなるほどシュバルツシルト半径は大きくなります。
https://www.kids.isas.jaxa.jp/zukan/space/blackhole.html

『「超」入門 相対性理論 アインシュタインは何を考えたのか』

福江純/著 ブルーバックス 2019年発行

ブラックホールなんか怖くない 謎の天体の秘密 より

ブラックホールアインシュタインの一般相対論を用いることによって、はじめて正しく記述することができる。
一般相対論では質量のまわりでは空間が曲がっていると考える。天体の質量を固定して半径を小さくしていくと、狭い領域に質量が集中するので、空間の曲がりもどんどん大きくなるだろう。光は空間の曲がりに沿って進むのだが、空間の曲がりがあまり大きくなると、光さえも空間の歪みの中から逃れることができなくなる(脱出速度のたとえで言えば、脱出速度が光速になる)。一般相対論が描くブラックホールとは、このように時空の曲率が大きくなって、光でさえも脱出できなくなった天体なのだ。
もっとも単純なブラックホールは、球対称のブラックホールで、「シュバルツシルト・ブラックホール」と呼ばれている(図.画像参照)。シュバルツシルト・ブラックホールの半径は、先に述べたシュバルツシルト半径であり、ここはまた「事象の地平面」とも呼ばれる。事象の地平面は、それより内側に一歩でも踏み込むと、二度とこの世に戻ってこれないという一方通行の境界面で、その内側からは光さえ出てこれない。その彼方のできごと(事象)が見えなくなる境界(地平面)という意味で、事象の地平面と呼ばれている。
この事象の地平面が、いわばブラックホールの”表面”だが、固体地球の表面や太陽の表面とは異なり、事象の地平面のところにはっきりとした境界があるわけではなく、またそこで空間の性質が急激に変わるわけでもない。たとえば、河を滝に向かって流されている状況を思い浮かべてみて欲しい。水の中に沈んで流されている人にとっては、どの場所でも周囲は水(空間)であって、どこからが滝(事象の地平面)だという標識があるわけではない。後戻りできなくなっているのに気づきた時すでに遅く、滝壺(特異点)にまっさかさまに落ち込むのみある。

ブラックホールの内部に入ると、その中心では時空の曲率が無限大になっており、そこは「特異点」と呼ばれている。

特異点では古典的な一般相対論は破綻するため、量子重力あるいは新しい物理学を考えなければならない。この特異点は優秀な研究者の頭痛の種だが、幸い三途の川(事象の地平面)の彼方にあるために、この世に悪さはしないようだ。
では、特異点と事象の地平面の間には何があるのか? 実は何もない。いや正確に言えば、時間と空間(真空)と多少のエネルギーはあるだろうが、構造としては何もないと言うべきだろう。つまり、シュバルツシルト・ブラックホールは、地球や太陽などよりはるかに単純な、おそらくは宇宙の中でもっとも単純な天体なのである。
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最後に、天体は静かで不変なもの、というのが太古以来の支配的な考え方であった。悠久不変の天空を乱すものは、惑わす星と呼ばれたり、ほうき星や客星と呼ばれたりして凶兆とされた。ところがブラックホールによって、この考え方もまた、あっけなく打ち砕かれた。ブラックホールのまわりでは、しばしば非常に激しい現象が起こっているのである。その意味では、死んだ星であるはずのブラックホールは、あたかも死の世界から蘇った魔物のごとく乱暴狼藉の限りを尽くしている、とも言えるのだ。

荒ぶる神として再臨するブラックホール時空の性質を調べることによって、これからも現代の最先端の宇宙像のひとつである、活動する宇宙の姿を知る手がかりが得られていくに違いない。そこには、アインシュタインが予想だにしなかった世界が広がっているかもしれないのだ。