じじぃの「科学・芸術_224_コスタリカ憲法・平和主義」

コスタリカの奇跡 〜積極的平和国家のつくり方〜』予告編 動画 YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=pnxGYapjZME
コスタリカ

コスタリカ平和憲法 知恵蔵の解説
中米コスタリカで1949年に制定された憲法。第12条に「常設的機関としての軍隊は禁止する」とうたい、常備軍を廃止した。
自衛のための戦争は認めており、国家防衛のために軍隊を再編できると明記している。国家の安全は集団安全保障の米州相互援助条約(リオ条約)に頼る。同国は48年に政争から内戦が起き約2000人が死んだ。勝利したフィゲレス大統領は軍隊の廃止を決意し、「兵士の数だけ教師を」を合言葉に軍事予算をそっくり教育予算に変え教育国家に転換した。
中米紛争が起きた80年代には当時のモンヘ大統領が積極的・永世・非武装中立を宣言した。その路線を引き継いだアリアス大統領は87年、中米地域の内戦を終わらせた功績でノーベル平和賞を受賞した。

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コスタリカを知るための60章【第2版】』 国本伊代/編著 赤石書店 2016年発行
コスタリカ憲法の平和主義 (一部抜粋しています)
1949年に制定されたコスタリカ共和国憲法の第12条は、「常設機関としての軍隊は禁止される。公共の秩序の監視と維持のため、必要な警察力を持つものとする。大陸間協定もしくは国家防衛のためにのみ、軍事力を組織することができる」と定められている。第12条には続けて、「いずれの場合も各軍は文民権力に従属し、個別的であると集団的であるとを問わず、合議も声明もすることができない」とある。同第147条には、再軍備への手続きも定められている。つまり、憲法の条文を読む限りにおいては、軍隊は持てるし、戦争もできるばかりか、他国の戦争に参加することもできるように見える。ちなみに、「大陸協定」とは実質的には米州機構OAS)などを指す。
日本国憲法第9条と比較してみると、同じ「平和主義」でも随分趣が異なることに気づくだろう。そこには、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定められている。日本の憲法は、軍隊の保持と、個別的・集団的であるを問わず、交戦権を明確に否認している。
ところが、その法解釈は真逆といっていい。日本の場合、条文上では否定されていると読める個別的自衛権を認め、常備軍保有し、2014年7月の閣議決定と翌15年に成立したいわゆる安保法制によって、集団的自衛権行使も「憲法上認められる」というのが日本政府の解釈となった。ところがコスタリカの場合、常備軍保持はもちろんのこと、有事の際の再軍備(個別的自衛)も「できない」というのが、政府、公安省、法学者ばかりか、一般市民にもコンセンサスとして共有されている解釈である。日本の国会議員団がコスタリカを訪問した際、有事における再軍備の可能性について問われたコスタリカ政府当局者は、「憲法改定が必要になる」と明確に答えている。米州の集団的自衛権を相互行使できるリオ条約加入に際しても、海外派兵の拒否を宣言して、その行使をみずから封印している。日本とコスタリカはともに「平和憲法」という側面において類似性を強調する言説もあるが、むしろ、「似て非なるもの」といったほうがより正確だろう。
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そもそも憲法戦争放棄を定めたのは、1791年にフランスが、憲法で征服戦争を否定したのが歴史上はじめてである。それ以来、1920年国際連盟が設立され、29年にはいわゆる不戦条約が結ばれるなど、戦争の違法化が進み、ブラジル憲法などには、深慮悪戦争や国際紛争を解決する手段としての戦争の放棄が盛り込まれた。
第二次世界大戦終結後の1945年に、国連が成立した。国連憲章は加盟国に、国際紛争の平和的解決義務と、国連の設立目的に反する武力による威嚇または武力の行使を慎むよう命じた。コスタリカ憲法の前後に成立した各国の憲法をみると、フランス第4共和国憲法前文やドイツのボン基本法大韓民国憲法侵略戦争を、イタリア、フィリピン、ミャンマービルマ)、ブラジルなどの憲法国際紛争解決手段としての戦争を放棄している。軍事クーデターの後に憲法を制定したブラジルを除いて、戦争放棄憲法に明記した国は、大戦中、外国軍隊による自国領土の占領経験を共有している。
コスタリカの現行憲法は、1949年11月に公布されて以来現在に至るまで、約100回の部分改正が行われている。
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コスタリカ憲法の非武装平和主義思想は普遍的である。その一貫性が、時代のニーズに合わせた改正という柔軟性と両立してきた。そこにコスタリカ憲法の平和主義の大きな特色がある。